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第32話 とろりとふわりと朝食
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「それじゃあ、朝ごはんを作っていくぞ」
まだ一度も使っていないピカピカのキッチンで、俺はエプロン姿のリルとミルと一緒に調理を始めた。
せっかくの新鮮な卵、そしてパンがあるということで、今日のメニューは半熟とろとろ卵サンドだ。
朝食のメニューとして、めちゃくちゃぴったりだろう。
「まずはこの卵を……」
「わるの?」
「いや、今日はまだ割らない。この中に入れる」
俺の目の前には、沸騰したお湯の入った鍋がある。
そこに次々と卵を投入していった。
せっかくなので、卵はたっぷりと使っていく。
「このままいれちゃうの!?」
「だいじょーぶなんですか!?」
「あー、意外といえば意外なのか?」
俺からすれば、茹で卵なんて全くもってありきたりなものだ。
作り方だって何も特別感は感じない。
でも、そもそも卵自体に親しみがないリルとミルにとって、殻ごとお湯にぶち込むというのは新鮮に映ったようだ。
というか、彼女たちはそもそも卵の殻の中のものを見たことがないかもしれない。
ホットケーキを作った時に使ったけど、調理工程をずっと見ていたわけじゃないし。
「卵っていうのは、こういう風になってる」
俺はお皿に、卵をひとつ割り入れた。
2人、特にリルは、興味深そうに皿の中のものを観察する。
「なんか、めだまみたい」
「こんなふうになってるんですね」
「ここが黄身、それでこっちが白身。殻のまま茹でることで、白身にはしっかり火を通して、黄身は半熟っていう風にできるんだ」
「へぇ~」
「へぇ~」
うん、その反応、何とかの泉か。
というかこんな豆知識じゃ、メロンパン入れはもらえないぞ。
わざわざ割ってしまった卵がもったいないので、もうひとつ追加してオムレツにする。
卵を一日に食べすぎるとコレステロールが~ってのあったけど、知ったこっちゃねえ……!
ていうか、あれはガセだったんだっけ? 知らんけど。
そうこうしているうちに、茹で卵をあげる時間になった。
やり過ぎると半熟要素がなくなってしまうので、このタイミングだけは逃せない。
冷水を張ったボウルに、茹で上がった卵を移す。
そして少し冷やしてから、殻むき作業の開始だ。
ここはリルとミルにも手伝ってもらう。
「こうすると殻に亀裂が入るから……そっからむいていけばいい」
「はい!」
「あ、たまごのから、とっといて」
「そうだったな。じゃあ、むいた殻はこのボウルに入れてってくれ」
卵の殻をむいては、ボウルに入れていく。
リルの大事な実験材料になるわけだ。
殻をむいてすべすべの白身が姿を現すと、リルとミルは面白そうに声を上げた。
まあ、生の状態では半透明の白身がこんな風に固まるのは面白いよな。
「なんか、ぶよぶよしてます」
「中の黄身は半熟だからな。そしたらむいた茹で卵を、今度は潰していくぞ」
「え!? つぶしちゃうんですか!?」
「それはもう、ぐっちゃぐっちゃに」
ボウルの中で、茹で卵をぐいぐい押し潰していく。
マヨネーズがないのが悔やまれるよなぁ。
そのうち、この世界でも作れないか模索してみよう。
でもこれはこれで、卵の味をガツンと楽しめて良いはずだ。
しっかり潰せたら塩などで味を調え、パンを用意する。
中の白くてふわふわの部分だけを残して周りを切り落とし、卵を挟みこめば……
「完成っと」
色の濃いオレンジ色の半熟の黄身が白いパンに映えて鮮やかな、特製半熟とろとろ卵サンドのできあがり。
さっき作ったオムレツ、そしてしぼりたて新鮮な牛乳を合わせて、牧場仕事頑張りました朝食の完成だ。
「おいしそう……!」
「すごくおいしそうです! いいにおいがします!」
にわかにテンションが上がった2人と一緒に、食卓を囲む。
そして声をそろえた。
「「「いただきます!」」」
まずはリルが卵サンドを一口。
そして何とも幸せな表情を浮かべる。
「おいひい……」
「だろ?」
俺も自分の卵サンドにかぶりついた。
うん、最高。
とろとろでコクのある半熟の卵黄なんて、もうこれだけで優勝だ。
口の中に、卵がとろりパンがふわりと至福の感触が広がる。
黄身、白身、パンと合わさって、他に特別な材料は何も使っていなくても、至高の味を生み出している。
「おいしいです! なんというか……おいしいです!」
上手い表現は見つからなかったようだけど、ミルも心の底から美味しいと思ってくれているようだ。
喜んでもらえて何より。
「ぎゅうにゅうも、おいしい」
「美味しいな。やっぱり牛乳はいいよ」
新鮮な牛乳は、濃厚なミルク感がありながらも、くどくなくあっさりしている。
するするっと飲めてしまうような、朝にちょうど良い牛乳だ。
「卵とか牛乳を使った料理は、まだまだたくさんあるからな」
「たのしみ……!」
「わくわくです!」
リルとミルは目をきらきら輝かせながら、卵サンドとオムレツにかぶりつき牛乳をごくごく飲む。
相当、気に入ってくれたみたいだ。
美味しいものを食べて、2人の幸せそうな顔を見てると、朝早くからの仕事の疲れも吹っ飛ぶってもんだ。
まあ、一日は始まったばかりなわけで、これからまた別に村の仕事はあるんだけど。
まだ一度も使っていないピカピカのキッチンで、俺はエプロン姿のリルとミルと一緒に調理を始めた。
せっかくの新鮮な卵、そしてパンがあるということで、今日のメニューは半熟とろとろ卵サンドだ。
朝食のメニューとして、めちゃくちゃぴったりだろう。
「まずはこの卵を……」
「わるの?」
「いや、今日はまだ割らない。この中に入れる」
俺の目の前には、沸騰したお湯の入った鍋がある。
そこに次々と卵を投入していった。
せっかくなので、卵はたっぷりと使っていく。
「このままいれちゃうの!?」
「だいじょーぶなんですか!?」
「あー、意外といえば意外なのか?」
俺からすれば、茹で卵なんて全くもってありきたりなものだ。
作り方だって何も特別感は感じない。
でも、そもそも卵自体に親しみがないリルとミルにとって、殻ごとお湯にぶち込むというのは新鮮に映ったようだ。
というか、彼女たちはそもそも卵の殻の中のものを見たことがないかもしれない。
ホットケーキを作った時に使ったけど、調理工程をずっと見ていたわけじゃないし。
「卵っていうのは、こういう風になってる」
俺はお皿に、卵をひとつ割り入れた。
2人、特にリルは、興味深そうに皿の中のものを観察する。
「なんか、めだまみたい」
「こんなふうになってるんですね」
「ここが黄身、それでこっちが白身。殻のまま茹でることで、白身にはしっかり火を通して、黄身は半熟っていう風にできるんだ」
「へぇ~」
「へぇ~」
うん、その反応、何とかの泉か。
というかこんな豆知識じゃ、メロンパン入れはもらえないぞ。
わざわざ割ってしまった卵がもったいないので、もうひとつ追加してオムレツにする。
卵を一日に食べすぎるとコレステロールが~ってのあったけど、知ったこっちゃねえ……!
ていうか、あれはガセだったんだっけ? 知らんけど。
そうこうしているうちに、茹で卵をあげる時間になった。
やり過ぎると半熟要素がなくなってしまうので、このタイミングだけは逃せない。
冷水を張ったボウルに、茹で上がった卵を移す。
そして少し冷やしてから、殻むき作業の開始だ。
ここはリルとミルにも手伝ってもらう。
「こうすると殻に亀裂が入るから……そっからむいていけばいい」
「はい!」
「あ、たまごのから、とっといて」
「そうだったな。じゃあ、むいた殻はこのボウルに入れてってくれ」
卵の殻をむいては、ボウルに入れていく。
リルの大事な実験材料になるわけだ。
殻をむいてすべすべの白身が姿を現すと、リルとミルは面白そうに声を上げた。
まあ、生の状態では半透明の白身がこんな風に固まるのは面白いよな。
「なんか、ぶよぶよしてます」
「中の黄身は半熟だからな。そしたらむいた茹で卵を、今度は潰していくぞ」
「え!? つぶしちゃうんですか!?」
「それはもう、ぐっちゃぐっちゃに」
ボウルの中で、茹で卵をぐいぐい押し潰していく。
マヨネーズがないのが悔やまれるよなぁ。
そのうち、この世界でも作れないか模索してみよう。
でもこれはこれで、卵の味をガツンと楽しめて良いはずだ。
しっかり潰せたら塩などで味を調え、パンを用意する。
中の白くてふわふわの部分だけを残して周りを切り落とし、卵を挟みこめば……
「完成っと」
色の濃いオレンジ色の半熟の黄身が白いパンに映えて鮮やかな、特製半熟とろとろ卵サンドのできあがり。
さっき作ったオムレツ、そしてしぼりたて新鮮な牛乳を合わせて、牧場仕事頑張りました朝食の完成だ。
「おいしそう……!」
「すごくおいしそうです! いいにおいがします!」
にわかにテンションが上がった2人と一緒に、食卓を囲む。
そして声をそろえた。
「「「いただきます!」」」
まずはリルが卵サンドを一口。
そして何とも幸せな表情を浮かべる。
「おいひい……」
「だろ?」
俺も自分の卵サンドにかぶりついた。
うん、最高。
とろとろでコクのある半熟の卵黄なんて、もうこれだけで優勝だ。
口の中に、卵がとろりパンがふわりと至福の感触が広がる。
黄身、白身、パンと合わさって、他に特別な材料は何も使っていなくても、至高の味を生み出している。
「おいしいです! なんというか……おいしいです!」
上手い表現は見つからなかったようだけど、ミルも心の底から美味しいと思ってくれているようだ。
喜んでもらえて何より。
「ぎゅうにゅうも、おいしい」
「美味しいな。やっぱり牛乳はいいよ」
新鮮な牛乳は、濃厚なミルク感がありながらも、くどくなくあっさりしている。
するするっと飲めてしまうような、朝にちょうど良い牛乳だ。
「卵とか牛乳を使った料理は、まだまだたくさんあるからな」
「たのしみ……!」
「わくわくです!」
リルとミルは目をきらきら輝かせながら、卵サンドとオムレツにかぶりつき牛乳をごくごく飲む。
相当、気に入ってくれたみたいだ。
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まあ、一日は始まったばかりなわけで、これからまた別に村の仕事はあるんだけど。
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