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第2章 創造魔法と救世主
第32節 たまたまと怒りの鉄槌
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「……アカネ、そろそろ離してくれます?」
それから数分アカネはグラフォスの胸にしがみつきながらひたすらに泣いていた。
グラフォスとしてはアカネがしがみついていることは多少しか気にならなかったのだが、それ以上に気になったのは周りの生暖かい目線だった。
トキトとシャルはもちろんのことさっきまで怒っていたはずのドリアまでそんな視線をグラフォスとアカネに向けている。
アカネはグラフォスの言葉を受けてようやく彼の胸から顔を離すと、涙目のままゆっくりと周りを見渡し現在の状況を把握する。
そして理解したと同時に顔を真っ赤にしたアカネはグラフォスから飛びのき、グラフォスと同じように正座をするのだった。
「あ、あのすいません! 私グラフォス君が無事なのがうれしくてつい……!」
「いいのいいの。その気持ちは同じ冒険者である私にもすごくわかるしね」
「目の前でイチャイチャされるのはたまったもんじゃねえけどな」
「トキト!」
気にするなと気を使うシャルに対して、ストレートに本音をぶちまけるトキト。
そしてそんなトキトをとがめるシャルといった森の中で見たような光景にグラフォスは思わず苦笑いを浮かべる。
「この青髪の人がシャルさん、アカネの魔力を回復してくれた方。赤髪の方がトキトさん。僕が死にかけたのを助けてくれた人です」
グラフォスはアカネがこれ以上混乱しないように、トキトとシャルの紹介をする。
「そうだったんだ。この度は助けてくれてありがとうございました」
「別にたまたま通りかかっただけだ。気にするな」
「そうね、たまたま魔力の放流が大きい場所に言ったら助けれただけだからね」
アカネの深いお辞儀に対して、トキトはぶっきらぼうに手を振りながら返答する。
しかしそんなトキトの言葉を引き継ぐようにシャルはトキトの言葉を訂正するように言葉を重ねる。
そんなシャルの言葉をトキトはどこか照れを隠すように頭をガシガシと掻き、聞こえないふりをしていた。
「この子たち預かってもいいかしら。トキトさん、シャルちゃん」
そして四人の会話が終わるタイミングを見計らったかのようにタイミングよくドリアがトキトとシャルの方に体を向けて話しかける。
「別に俺は構わねえけど?」
「私も別にいいわよ」
トキトとシャルはドリアがわざわざ尋ねてきた真意がわからず首をかしげながら返答する。
二人はきっとドリアがまだこの部屋で説教の続きをすると思っているのだろう。
しかしグラフォスはそれが違うと直感していた。
「それじゃ、グラフォス君、アカネちゃん。行こっか」
ドリアはさっきまで怒っていた顔が嘘のように満面の笑みでグラフォスとアカネに向かって両手を向ける。
しかし今度は逆にそれが恐怖を醸し出していた。
アカネはドリアの真意に気づいていないのか、きょとんとした表情で何の疑いもなく彼女が差し出した手を握る。
グラフォスはその手は取らずに諦めたようにゆっくりと立ち上がった。
「あの、ドリアさん。行くってどこに行くんですか?」
「行くところなんて一つしかないでしょ? あなたたちの家に送り届けるのよ。また勝手にどこかに行かないように」
後半のドリアの言葉はほとんどグラフォスに向けて言われているようなものだった。
グラフォスは完全にあきらめたのか大きくため息をつくと、アカネの手を引いて歩き始めたドリアの後ろを重い足取りでついていった。
そんな二人の様子をトキトとシャルは不思議なものを見るような顔で見送っていた。
「この馬鹿が!!」
グラフォスとアカネの脳天にげんこつが降り注ぐ。二人が頭を押さえ痛みでうめいている目の前には、鬼の形相で怒りで顔を真っ赤にしたミンネが仁王立ちで立っていた。
それは家に戻ってすぐのことだった。ドリアは真っ先にミンネのもとに向かったが既にミンネは怒り心頭のご様子だった。
きっと報告されるまでもなくある程度の予想はついていたのであろう。
しかしドリアの報告を聞いたミンネはさらに顔を真っ赤にさせた。まさに怒りのピークである。
「勝算も何もないのに森の中に二人で入って、ユニークモンスターに出くわしただって!? あんたたちはいったいどれだけ私に心配させれば気が済むんだい!」
きっとミンネはいつものように森の入り口でまたグラフォスが土いじりをしている。ひどくても森の中に入ってこそこそと植物採集をしている。
それくらいの認識だったのかもしれない。まさかユニークモンスターにあって死にかけただなんて考えもしなかったのだろう。
しかし真正面から心配をしていたと突き付けられたグラフォスはさすがに反論することはできない。
アカネに関してはさっきから完全にミンネの怒った様子に委縮してしまっていた。
「グラフォス、あんたまさか本当に無計画で森に入ったなんて、ばかなこと言わないだろうね」
「……もちろんです。ある程度の算段は立ててできる限り死なないようにしてから、森に入りました」
ミンネはグラフォスのその言葉を受けてしばし無言でいたが、その後アカネの方に線を移す。
「アカネ、あんたはどうしてグラフォスを止めなかった? あんたがいればどうにかなると、本気でそう考えていたのかい?」
「ミンネさん、アカネは僕は止めようと」
「グラフォス、あんたは黙ってな。私はアカネに聞いてるんだ」
「私は……」
アカネは言葉を発しようとするが、それ以上言葉が続かない。しかしミンネはそれ以上問い詰めることなく、アカネの言葉を静かにじっと待っていた。
そしてゆっくりとアカネが口を開く。
「……私自身攻撃力があるわけでもないし、あるのはせいぜい回復ができると思ってます。でも私も何かの役に立てるって……グラフォス君の役に立てる、役に立たなきゃいけない。そうしなければ彼の隣に立つ資格はない、ミンネさんとグラフォス君に助けてもらった意味がないって思ったんです」
ミンネはアカネの言葉を受けてまた静かにその言葉の真意を確かめるようにアカネの目をじっと見つめた。
その間アカネもうつむくことなく、ミンネの目を見つめ返していた。
時間にして体感としては数分、実際には数秒のどこか緊迫した空気が場を支配していた。
そしてミンネはすっと目を閉じ、大きく息を吐き出す。
「わかった。二人が覚悟決まっているんならこれ以上は言わない。でも! 今日のことを許すわけじゃないからね!」
グラフォスはそんなミンネの言葉を意外に思っていた。もっとこってり絞られると思っていた。
グラフォスとアカネの言葉を信じてくれたのか、単純に何度言ってもいうことを聞かないことにあきれてしまったのか、その判断がグラフォスにはつかなかった。
ただ前者であればいいなとグラフォスはそう無意識に思っていた。
「ドリアちゃんも毎回悪いね。ご飯でも食べていくかい?」
「いえいえ、仕事の一環ですから。今日は帰ります。明日から忙しくなりそうですし」
ずっと入り口で立っていて静かに三人の様子を見守っていたドリアは軽く一礼すると店を出て行った。
「あのミン姉……心配かけてすいませんでした」
「ミンネさん、ごめんなさい」
「そういうことはドリアさんと助けてくれたっていう冒険者に言うんだね。私に礼なんて必要ないんだよ。さ、ご飯にするよ」
ミンネは先ほどまでの憤怒の表情が嘘のように優しく二人に微笑みかけると、二階へと向かっていく。
グラフォスとアカネはどこか気まずさを感じながらミンネの後をついていくのだった。
そしてご飯の時間もそのあともミンネが森に行ったことに関して怒ることはなかった。
それから数分アカネはグラフォスの胸にしがみつきながらひたすらに泣いていた。
グラフォスとしてはアカネがしがみついていることは多少しか気にならなかったのだが、それ以上に気になったのは周りの生暖かい目線だった。
トキトとシャルはもちろんのことさっきまで怒っていたはずのドリアまでそんな視線をグラフォスとアカネに向けている。
アカネはグラフォスの言葉を受けてようやく彼の胸から顔を離すと、涙目のままゆっくりと周りを見渡し現在の状況を把握する。
そして理解したと同時に顔を真っ赤にしたアカネはグラフォスから飛びのき、グラフォスと同じように正座をするのだった。
「あ、あのすいません! 私グラフォス君が無事なのがうれしくてつい……!」
「いいのいいの。その気持ちは同じ冒険者である私にもすごくわかるしね」
「目の前でイチャイチャされるのはたまったもんじゃねえけどな」
「トキト!」
気にするなと気を使うシャルに対して、ストレートに本音をぶちまけるトキト。
そしてそんなトキトをとがめるシャルといった森の中で見たような光景にグラフォスは思わず苦笑いを浮かべる。
「この青髪の人がシャルさん、アカネの魔力を回復してくれた方。赤髪の方がトキトさん。僕が死にかけたのを助けてくれた人です」
グラフォスはアカネがこれ以上混乱しないように、トキトとシャルの紹介をする。
「そうだったんだ。この度は助けてくれてありがとうございました」
「別にたまたま通りかかっただけだ。気にするな」
「そうね、たまたま魔力の放流が大きい場所に言ったら助けれただけだからね」
アカネの深いお辞儀に対して、トキトはぶっきらぼうに手を振りながら返答する。
しかしそんなトキトの言葉を引き継ぐようにシャルはトキトの言葉を訂正するように言葉を重ねる。
そんなシャルの言葉をトキトはどこか照れを隠すように頭をガシガシと掻き、聞こえないふりをしていた。
「この子たち預かってもいいかしら。トキトさん、シャルちゃん」
そして四人の会話が終わるタイミングを見計らったかのようにタイミングよくドリアがトキトとシャルの方に体を向けて話しかける。
「別に俺は構わねえけど?」
「私も別にいいわよ」
トキトとシャルはドリアがわざわざ尋ねてきた真意がわからず首をかしげながら返答する。
二人はきっとドリアがまだこの部屋で説教の続きをすると思っているのだろう。
しかしグラフォスはそれが違うと直感していた。
「それじゃ、グラフォス君、アカネちゃん。行こっか」
ドリアはさっきまで怒っていた顔が嘘のように満面の笑みでグラフォスとアカネに向かって両手を向ける。
しかし今度は逆にそれが恐怖を醸し出していた。
アカネはドリアの真意に気づいていないのか、きょとんとした表情で何の疑いもなく彼女が差し出した手を握る。
グラフォスはその手は取らずに諦めたようにゆっくりと立ち上がった。
「あの、ドリアさん。行くってどこに行くんですか?」
「行くところなんて一つしかないでしょ? あなたたちの家に送り届けるのよ。また勝手にどこかに行かないように」
後半のドリアの言葉はほとんどグラフォスに向けて言われているようなものだった。
グラフォスは完全にあきらめたのか大きくため息をつくと、アカネの手を引いて歩き始めたドリアの後ろを重い足取りでついていった。
そんな二人の様子をトキトとシャルは不思議なものを見るような顔で見送っていた。
「この馬鹿が!!」
グラフォスとアカネの脳天にげんこつが降り注ぐ。二人が頭を押さえ痛みでうめいている目の前には、鬼の形相で怒りで顔を真っ赤にしたミンネが仁王立ちで立っていた。
それは家に戻ってすぐのことだった。ドリアは真っ先にミンネのもとに向かったが既にミンネは怒り心頭のご様子だった。
きっと報告されるまでもなくある程度の予想はついていたのであろう。
しかしドリアの報告を聞いたミンネはさらに顔を真っ赤にさせた。まさに怒りのピークである。
「勝算も何もないのに森の中に二人で入って、ユニークモンスターに出くわしただって!? あんたたちはいったいどれだけ私に心配させれば気が済むんだい!」
きっとミンネはいつものように森の入り口でまたグラフォスが土いじりをしている。ひどくても森の中に入ってこそこそと植物採集をしている。
それくらいの認識だったのかもしれない。まさかユニークモンスターにあって死にかけただなんて考えもしなかったのだろう。
しかし真正面から心配をしていたと突き付けられたグラフォスはさすがに反論することはできない。
アカネに関してはさっきから完全にミンネの怒った様子に委縮してしまっていた。
「グラフォス、あんたまさか本当に無計画で森に入ったなんて、ばかなこと言わないだろうね」
「……もちろんです。ある程度の算段は立ててできる限り死なないようにしてから、森に入りました」
ミンネはグラフォスのその言葉を受けてしばし無言でいたが、その後アカネの方に線を移す。
「アカネ、あんたはどうしてグラフォスを止めなかった? あんたがいればどうにかなると、本気でそう考えていたのかい?」
「ミンネさん、アカネは僕は止めようと」
「グラフォス、あんたは黙ってな。私はアカネに聞いてるんだ」
「私は……」
アカネは言葉を発しようとするが、それ以上言葉が続かない。しかしミンネはそれ以上問い詰めることなく、アカネの言葉を静かにじっと待っていた。
そしてゆっくりとアカネが口を開く。
「……私自身攻撃力があるわけでもないし、あるのはせいぜい回復ができると思ってます。でも私も何かの役に立てるって……グラフォス君の役に立てる、役に立たなきゃいけない。そうしなければ彼の隣に立つ資格はない、ミンネさんとグラフォス君に助けてもらった意味がないって思ったんです」
ミンネはアカネの言葉を受けてまた静かにその言葉の真意を確かめるようにアカネの目をじっと見つめた。
その間アカネもうつむくことなく、ミンネの目を見つめ返していた。
時間にして体感としては数分、実際には数秒のどこか緊迫した空気が場を支配していた。
そしてミンネはすっと目を閉じ、大きく息を吐き出す。
「わかった。二人が覚悟決まっているんならこれ以上は言わない。でも! 今日のことを許すわけじゃないからね!」
グラフォスはそんなミンネの言葉を意外に思っていた。もっとこってり絞られると思っていた。
グラフォスとアカネの言葉を信じてくれたのか、単純に何度言ってもいうことを聞かないことにあきれてしまったのか、その判断がグラフォスにはつかなかった。
ただ前者であればいいなとグラフォスはそう無意識に思っていた。
「ドリアちゃんも毎回悪いね。ご飯でも食べていくかい?」
「いえいえ、仕事の一環ですから。今日は帰ります。明日から忙しくなりそうですし」
ずっと入り口で立っていて静かに三人の様子を見守っていたドリアは軽く一礼すると店を出て行った。
「あのミン姉……心配かけてすいませんでした」
「ミンネさん、ごめんなさい」
「そういうことはドリアさんと助けてくれたっていう冒険者に言うんだね。私に礼なんて必要ないんだよ。さ、ご飯にするよ」
ミンネは先ほどまでの憤怒の表情が嘘のように優しく二人に微笑みかけると、二階へと向かっていく。
グラフォスとアカネはどこか気まずさを感じながらミンネの後をついていくのだった。
そしてご飯の時間もそのあともミンネが森に行ったことに関して怒ることはなかった。
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