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第2章 創造魔法と救世主

第33節 店番と乱入

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 次の日、グラフォスはいつものようにミンネに言われて、店番をしていた。
 しかし実のところグラフォスは店番に身などはいっていない。

 グラフォスが店番にやる気を示さないのはいつものことなのだが、今日はいつもに増してやる気を感じられなかった。

 というのも、昨日あんなにも激しい一日を過ごしていたにもかかわらず全く眠ることができなかったのだ。

 あの時起こった出来事、出てきた魔物、アカネが使った魔法、そしてグラフォス自身が行使した魔法を本に書いていると、だんだんとその時の緊迫感と知識で本のページが埋まる興奮に襲われ、全く眠れなくなってしまったのだ。
 そして朝まで一睡もすることなく白紙のページと向き合っていた。

 現在の天気は晴れ。実によく晴れた昼下がりで店の中に温かい日差しが差し込む。
 それが余計にグラフォスの眠気に拍車をかけ、グラフォスは肩肘をつきながら手元に本を開きながらも、うつらうつらと舟をこいでいた。

「ちょっといいかしら」

 そんなさぼっているといっても過言ではないグラフォスの耳に聞き覚えのある声が飛び込んでくる。

 何とか重たい瞼をあげそちらに目を向けると、店のカウンターの方に近づいてくる青髪の少女、シャルの姿があった。

「……シャルさん。どうしたんですか?」

「ごめんね、疲れているところに。まあ店にいるのに眠ってるのはどうかと思うわよ?」

「それは僕も思います」

 グラフォスのあくびをしながらの返答に戸惑ったのかシャルは苦笑いしながらカウンターの前に立つ。

「素敵な店ね」

「どうも」

「今日はグラフォス君に話を聞きたくて来たのよ。昨日はちゃんと聞けなかったしね」

「僕にですか?」

 シャルが何を聞きたいのかグラフォスは全く見当がつかなかった。昨日の戦闘についてはシャルとトキトにはきちんと伝えているし、それ以上に必要な情報が何かあっただろうか。

「昨日君が使ってた魔法。あれは何?」

「……見てたんですか」

 シャルの直球的な一言に一瞬グラフォスの思考は停止するが、すぐに冷静になり何とか返答を返す。

「まあ見てたっていうか、感じたっていう感じかな? 今まで検知したことない魔力の流れを感じたからね。それでたどり着いてみれば女の子は倒れてて、男の子が頑張ってるところでしょ? それならあの魔力の流れはグラフォス君がやってたことなのかなって推測したところ」

「そういうことですか。特に何もおかしなことはしてませんよ。普通の魔法しか使ってないです」

 グラフォスは外を歩いている人に聞こえないように、声のボリュームを落としながら話を続ける。ちなみに今この店もとい家はアカネしかいない。
 ミンネは朝からどこかに出かけていた。

 ミンネには普通の魔法を使えるということすら話していない。どうせ知られても何か言われるに決まっている。それならばれない方がまだましというものだ。

「そっかー、秘密なんだ。お姉さんに話してみれば? 楽になるかもよ」

「お姉さんって、そんな歳変わらないでしょう」

 目の前でやけに楽しそうに微笑みながら話しているシャルの雰囲気からは、確かにお姉さんといったような感じはするが、実際の顔立ちは若くとてもグラフォスと歳が離れているとは思えない。

「私は18だけど、グラフォス君はそれより下じゃないの? もしかして意外と童顔で同い年? まさか年上とか?」

「僕は15歳です。やっぱりそんなに離れてないじゃないですか」

「3歳は結構な差だと思うけどなあ? まあいいわ。それでもう一つ話があるんだけど」

「さっきの話だけじゃなかったんですね」

「さっきのは確かに本題だけど、こっちはついでかな。グラフォス君とアカネちゃん、二人は緊急依頼受けるつもりは?」

「ないですよ。死にに行くようなものです」

 口ではそう言っているグラフォスだが、実際のところ依頼は受けないとしても遠くから戦闘を観察できればいいな、何なら端っこくらいからちょっかい出せないかなくらいは考えていた。

 しかし依頼を受けるとなるとそれはまた別だ。自ら死にに行くような真似を、ましてやアカネを巻き込むなんてことはできない。

「へえ。私たちと一緒に行かない? って誘われたらどうする?」

「正気を疑います」

「そうも言ってられないのよ……」

 グラフォスは首をかしげ、シャルが大きくため息をついたと同時に店の外から激しい足音が聞こえてきた。

 その足音はどんどん近づいてきており、そしてそれが店の前で止まったかと思うと店の扉が勢いよく開かれた。

「おい坊主! 冒険に行くぞ!」

 そこには真っ赤な鎧をその体にまとい、刀を腰に差して汗だくながらも満面の笑みで扉を開け放つトキトの姿があった。

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