狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

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8章 魔道国

第409話 寛げるかどうかは別

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「実家に泊まらなくていいのですか?」

「ケイ。本気で言っておるのかの?あそこに泊まって寛げると思うのかの?」

向かいに座っているナレアさんが半眼で告げてくる。
今俺達は王都にある宿屋で夕食をとっていた。
窓の外をみれば、少し離れた位置に勇壮なお城が聳え立っているのが見える。

「まぁ、心安らぐ感じではなさそうですね。」

「うむ。あそこにいたらルルが仕事を押し付けてきそうじゃしな。とっとと離れるに限るのじゃ。」

あぁ、なるほど。
ナレアさんの場合緊張はしないだろうけど、そういう面倒が舞い込んでくるのか。

「ルーシエルさんはもう少し話がしたそうでしたけど。」

「ふん......あやつは仕事を押し付けたいだけじゃ。若しくは妾を揶揄いたいだけじゃ。」

「あー、ナレアさん結構色々言われていましたね。」

「あやつの性格の悪さ、一体誰に似たのやら。」

ナレアさんが嘆息しながら言うが......いや、俺は何も言わないし考えない。
あ、ご飯おいしー、リィリさんに教えないとなー。
そんなことを考えながら食事を勧めていると、ナレアさんが何故か半眼になりながらこちらを見てくる。

「と、ところでこれからどうしますか?レギさん達が来るまでも少しかかりますよね?」

「......そうじゃな。相変わらず誤魔化し方が雑じゃが......ルルの話では魔道国内で妙なことは起こっておらぬようじゃし、あの魔物の襲撃は偶々かもしれぬのう。」

「警戒はしておくとのことでしたが......。」

「船が魔物に襲撃されることは頻繁と言うほどではないが、少なくはないのじゃ。それ故、警備艇が巡回しておるわけじゃが......それでもあの規模の襲撃は妾の知る限り一度もない。自然現象と考えるよりは何者かの仕掛けと考えたい所じゃが......。」

「相手が水中の魔物というのが調査しにくい部分ではありますね......。」

「うむ......。」

陸上の魔物であれば群れの規模や移動経路から色々なことが判明する。
それこそクルストさんの言っていた帝国の件がいい例だろう。
辺り一帯の魔物が集結している、しかし何も騒ぎは起こさない。
何か仕出かす前に討伐しておくか......と言う流れだ。
魔物の生態や生息域、群れの規模に行動パターン。
帝国の件では色々なことが判明しているからこそ、異常に気付けて対応を取ることが出来たのだが、今回襲ってきた水中の魔物はそうはいかない。
まず生息域が広すぎるし生態調査もそこまで進んではいない。
危険な水中に潜って調べるわけにもいかないので、群れの規模なんかもはっきりしていないのだ。
普段は二、三匹程度で襲い掛かってくるからと言っても、群れの本体はもっと大きいのもかもしれない。
ナレアさんの知る限りということなので......少なくとも百年以上は俺達が襲われたような群れは無かったのかもしれないが、絶対ではない。
偶々、今回だけ群れの全てで襲い掛かって来たのか......イレギュラーに数を増やした群れだったのか......人為的に集められた群れだったのか......判断が付かない。

「まぁ、檻の仕業にせよそうでないにせよ、調査する必要はあるのじゃ。あの大河は魔道国北部の流通の要じゃ。あのようなことが続けばとてもではないが安全な交易路とは呼べぬ。だからこそルルもあれだけ慌てておったのじゃが。」

「なるほど......。」

確かに水運の早さと輸送量は、この世界でメインの運搬手段である馬車とは比べ物にならない。
それが潰されたとあっては魔道国の受ける被害は相当なものだろう。
ギルドや船員達からの報告も俺達より早くはないだろうし......ナレアさんから話を聞いた時、上層部は相当慌てたに違いない。

「少なくとも、まだ王都に連絡が来るほどの異変は起こっておらぬという事じゃな。」

「これから来るかもしれないってことでもありますよね......?」

「うむ。妾達が遭遇したのが始まりなのか、それとも一端なのか......唯の偶発的なものなのか......頭の痛い話じゃな。」

そう言いながらナレアさんは切り分けた肉を口に入れる。
話し方は投げやりな感じだけど、その所作は相変わらず上品だ。
一応俺も綺麗な食事の仕方をレギさんに教えてもらったりしているのだが......中々難しい。
レギさんには、別に食べ方が汚いわけでもないし気にしなくていいと思うぞ、と言われたが......四人で食事をとっていて、他の三人が上品に食べているのを見ると色々と思う所があったりするわけで......。

「よくケイはこの話の流れで全然違う事を考えられるのう。」

「す、すみません。」

呆れた様子のナレアさんだったが......目は笑っているようだ。
いや、ナレアさんの故郷が危険かもしれない時に申し訳ありません。

「まぁ、妾達の考えすぎかもしれぬからのう。クルストの言っておった帝国の方で活動している可能性もあるのじゃ。寧ろそっちの方が可能性は高いじゃろ。」

「そう......ですね。」

帝国の方の魔物のおかしな動き......クルストさんの話では一か所や二カ所だけの話ではないみたいだし、何かあるとしたらあっちの方が本命っぽいよね。

「ファラに魔道国に先行して調査をしてもらうべきでしたでしょうか?」

「今更じゃな。それに皆で一緒に旅をしたかったのじゃろ?本人もそう言われて喜んでおったし......。」

「ファラは真面目ですし......放っておくとレギさん以上に仕事漬けっぽくて。」

「ならば、ここまで楽しみながら一緒に来たことは間違いでは無かろう。」

「......ありがとうございます。」

「まぁ、ファラ程とは言わぬが......魔道国もそれなりに情報収集能力はあるからの。国内の不穏な動きは見逃さぬが......如何せん伝達速度に問題はあるかのう。」

「やはり馬が主ですか?」

自家用車っぽいのが王都では走っていたけど......それよりも鉄道とかの方が便利だしインフラも整えやすいのではないだろうか?
でもまぁ......手押しのトロッコくらいなら教えられるかもしれないけど、列車とかは無理だ。
魔道馬車を動かすくらいの動力しか現時点でないなら、まだ列車みたいな大型のものを動かすのは無理だろう。

「そうじゃのう。魔道馬車は玩具に域を超えておらぬし......魔物の調教はあまり進んでおらぬからのう。檻が魔物を自在に操るようになった際には、その研究成果を開示して欲しい物じゃな。」

「そんな平和的な組織だったらいいのですが......。」

「ほほ、そうじゃな。あの組織の作る魔道具は妾達の先を行っておるが......好ましい組織ではないのう......どちらかと言えば害悪じゃ。」

「カザン君達の治療をしたってところくらいしか良い事ってしていませんしね......。」

「まぁ、妾達が知らないだけで色々と慈善事業をやっておるかもしれぬぞ?」

「慈善事業に力を入れる組織が、構成員に自決させたり口封じしたりはしないと思います。」

「ほほ、国という単位で見れば、どちらの行為もやるじゃろうな。」

まぁ、それは確かにそうかもしれませんが......
俺が不満そうな顔をしたのを見てナレアさんがにんまりと笑う。

「先程も言ったが、あの組織は害悪じゃ。だが、そういったことをやっていないとも限らぬ。いや、寧ろ色々なことをやっておると考える方が自然じゃ。」

「どうしてですか?」

「カザン達の時もそうじゃったが......治療は金になるからの。そして治療には実験が付きものじゃ。無償で貧しい者達に治療を施しておっても不思議ではない。」

「あぁ......そういうことですか。確かカザン君達の時も実験的な物って触れ込みでしたっけ?」

「うむ。他にも孤児院の経営とかやっていそうじゃな。」

「孤児院ですか?」

「まぁ......優秀な人材確保とかじゃな。」

そう言ったナレアさんの表情は少し硬い気がしたけど......もしかしたら他にも口にしたくない理由があるのかもしれない......。
まぁ......洗脳教育とかありそうだよね、自決させるほどの忠誠心とか......。

「すまぬ。余計な事を言ったのじゃ。」

「いえ......そう言った可能性もあるってことを考えられただけでも良かったです。」

気分のいい話ではないけど......何も考えずに檻と対峙して、その時に初めて知らされて動きが止まるよりは絶対に良い。
気遣わしげにこちらを見るナレアさんに大丈夫と伝えて、俺は食事を再開した。

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