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8章 魔道国

第446話 空間魔法とは

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『空間魔法は色々なことが出来るようで、基本はそんなにないんだよねー。』

そう言って妖猫様は尻尾を使って石を上に投げる。
その石は放物線を描くことなく、空中でピタっと動きを止めた。

『これはさっきも見せた空間の固定。召喚物の封印に使っているのも同じだね。対象の空間を完全に固定しちゃっているから中にある物に触ることも動かすことも出来ないし、固定化された空間は状態も変化しない。』

そう言いながら妖猫様がもう一つ石を固定化された場所を目掛けて投げつける。
しかし投げられた石は固定化された空間に触れると、跳ね返されるでもなく飛んで行く力を無くして垂直にポトリと落ちる。
俺も触れたことがあるから分かるけど、固定化された空間は触れている感覚はないのに前に進むことが出来ない不思議な感覚なんだよね。

『次に行くよー。そのまま固定化された石を見ておいてね。』

俺が真剣な表情をしながら固定化された空間を見ているのを楽し気に見ていた妖猫様が、再び石を拾う。
しかし今度は石を投げずに魔法を発動させた。
すると先程まで空中に固定化されていた石が姿を消した。

『これは空間の歪曲。周りの空間を歪めて、本来あるはずの空間に辿り着けなくしたものだよ。』

これが神域の結界だったり先程の召喚物を見えなくしたりしていた魔法か。

『勿論見えないだけじゃなくって......。』

徐に先程拾った石を、先程まで固定化されていた場所目掛けて投げつける妖猫様。
投げられた石は何に阻まれることも無く、そのまま飛んで行ってしまう。

『こんな風に、普通に通り過ぎてしまうってわけ。固定化と併用して使えば封印は完璧だね。まぁ、空間魔法が使えないと解除できないから他の神域を隠すのには使ってないけどね。』

「なるほど......。」

『まぁ、僕の神域みたいに見晴らしが良いってわけじゃなかったし、仙狐の幻惑魔法もあったからね。』

確かに歪曲で神域を覆ってしまうと、出入りが不可能になる。
神獣様達はそこから動くことないから良いとしても、眷属は神域の外に出ることもあるみたいだから困るよね。
そう言えば、母さんから神域の説明を聞かされた時、それぞれの魔力を使って発動した召喚魔法だからなのか、どの辺に召喚されるか何となく分かるって言っていたけど......妖猫様の魔力を使った召喚物が最初に呼び出されなくて良かったというか......偶然なのだろうけど完璧な順番だと思う。
母さんが最後だったらかなりまずいことになっていたかもしれないよね。

『まぁ、今それはどうでもいいよねー。続きを話そうかー。』

妖猫様が辺りを見渡して......多分石を探しているのだろうけど、手ごろな物が見つからない様だ。
俺は足元に落ちていた石を拾って妖猫様の所へ持って行こうとして......拾ったはずの石が手の中から消えた。

「あれ?」

『あはは、これが三つ目。接続だよ。』

消えた石を探して地面を見ていた俺は、妖猫様の声に顔を上げて視線を向ける。
すると妖猫様のすぐ目の前に、先程まではなかった石が一つ転がっていた。

「それってもしかして......僕が今拾った石ですか?」

『そうだよー。石を手に取ったでしょ?つまり石を移動させた。その石が移動する先の空間と、僕の目の前の空間を繋げたんだ。そこを通過した瞬間ケイ君の手の中からこっちに移動して来たってわけだよ。』

「なるほど......。」

空間転移とはちょっと違う......空間を繋げる、接続......か。

「移動していない物を動かすことは出来ないってことですよね?」

『うん、物を取り寄せているわけじゃない。そういうのは召喚魔法の分野だね。と言っても......。』

妖猫様が目の前にあった石をひょいっと俺の方に投げ渡す。
飛んできた石を受け止めて掌の上に乗せると、目の前の空間からにょろっと黒い何かが出てくる。
俺がびくっと反応すると、妖猫様が少し離れた位置で笑っている。
いや、妖猫様だけではなくナレアさんも笑っていた。
これは......妖猫様の尻尾か。
何の前触れもなく、尻尾だけにょろっと出てきたから滅茶苦茶びっくりした。
妖猫様の尻尾は器用に俺の持っていた石を掴むと、出てきた時と同じようににゅるっと戻っていった。

『空間魔法の場合はこうやって手元に欲しい物を持ってくる感じだねー。』

なるほど......。
手を伸ばす範囲が広がる感じか。

『僕の加護で使えるようになる魔法はこんな感じだね。』

「ありがとうございます。固定、歪曲、接続ですね。」

『うん。この三つを上手く組み合わせて行く感じだね。天狼や応龍みたいに色々な魔法の効果が発揮出来る訳じゃないけど、応用は色々出来ると思うから二人とも頑張って使いこなしてよー。』

「はい!がんばります!」

「うむ。想像以上に難しそうじゃが......やってみるのじゃ。」

俺とナレアさんの返事を聞いて妖猫様が嬉しそうに頷く。

『空間魔法は理解しにくいみたいでねー......相性とは別に、苦手な人は中々使えないんだよね。あぁ、そうそう、接続を使う時は、接続する先の事を把握していないと上手く繋げられないからね。』

「接続先の把握ですか......それは目に見えていない場所でも、把握さえ出来れば接続できるという事ですか?」

『うん。そうだよー。それが出来てようやく役に立つ魔法って感じかなぁ?』

なるほど......空間の把握って言うのがまだよく分からないけど......その辺は練習あるのみだな。

『因みに練習する時は紹介した順番でやるといいよ。接続が一番難しいからね。』

「わかりました、ありがとうございます......ところで妖猫様。」

『ん?なに?』

少し気になったことがあったので妖猫様に聞くことにしてみた。

「先程、空間魔法は直接攻撃は出来ないって言っていましたけど......。」

『うん。攻撃は出来ないねー。接続を使って間接的に攻撃するくらいかな?魔法自体に攻撃能力はないんだー。』

「相手の体の近くに接続して武器を突っ込むとかですか?」

『そうそう。そんな感じだねー。結構強いんだけど、魔法で攻撃って言うのとはちょっと違うでしょ?』

違う......だろうか?
立派な魔法による攻撃って感じがするけどな......まぁ、攻撃魔法って言う感じでいうなら応龍様の天地魔法くらいしかないような気もするけど。
母さんの弱体魔法も直接攻撃をする魔法と言えるかな?

「なるほど......攻撃自体は物理攻撃だから攻撃は出来ないって言ったのですね。」

『そだよー。』

説明の仕事は終わったといった感じで、寝転がりながら相槌を打つ妖猫様。

「その......接続なのですが......例えば体の半分を通過させた時点で接続を切ったら......どうなりますか?」

『その場合は、より多く体がある方にはじき出されるよー。』

「あ、そうなのですね。」

なるほど......はじき出されるのか。

「ケイ......攻撃の事を聞いた後にその話をしたということは......。」

「......。」

『あー、もしかして真っ二つにして攻撃できるじゃん?とか考えてた?』

ま、まぁ......そんな攻撃方法もあるんじゃないかなぁとか考えただけですよ?

「考えることがえぐいのじゃ。やはり戦闘に関して、ケイは恐ろしいのう。」

ナレアさんと妖猫様に引かれてしまった。
いや......空間魔法って言われたらそういうの考えません?
防御不能攻撃みたいな......。

「後は......その......いや、まだ何も言っていないのだからお二人とも引かないでくださいよ。」

「どうせまたえぐい事考えたんじゃろ?」

『体の半分を歪曲させても、千切れたり死んだりはしないからね?』

「えっと......そうではなく......生物を固定した場合って意識とかどうなるのですか?」

『生物を固定した場合、意識も完全に止まるよ。ケイ君がここに出て来てたらそうなってただろうねぇ。』

本当に母さんの神域に召喚されてよかった......。

「......なるほど。」

『あー、身体を半分固定したら動けなくなるとかかな?それは勿論動けなくなると思うよ?』

「なるほど......わかりました。」

半分固定すれば動けなくなって......意識は無くなると。

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