【完結】望まれなかった代役婚ですが、投資で村を救っていたら旦那様に溺愛されました。

ivy

文字の大きさ
17 / 89
第一章 兄の代役?望まれぬ結婚は誰も得しないのですが

16・邪魔者は去るのみです

しおりを挟む
 両親から逃げるように庭に出たライネルは、花壇の側で見つめ合うアシュレイとアルヴェリオを見つけて、思わず草の陰に隠れた。

(あれ?どうして隠れちゃったんだろう)

 自然に花の話でもしながら近づけばよかったのに、まるで立ち聞きしているみたいに見えるじゃないか。そうは思ったが、今更出て行くのも不自然だ。

 仕方なくライネルは、彼らが場所を移動するまでと覚悟を決め、木の根元にうずくまった。

「僕のために盛大な結婚式をしてくれますよね?」

「……ああ、そうだな」

 その言葉にライネルの心臓は、ドクンと大きく波打つ

「じゃあやっぱり早くライネルを追い出さなきゃ」

「いや、ライネルの事は私に任せてくれ」

「いえ、そこまでアルヴェリオ様の手を煩わせるわけにはいきません」

 アシュレイは何かを企んでいるのか一歩も引かない。

(そっか、やっぱりアルヴェリオ様はアシュレイと婚姻を結び直すことにしたんだな)

 悲しくなんかない。二人を会わせれば、きっとこんな風にうまくいくって分かってた。

(アシュレイがアルヴェリオ様の良さに気づいたってことだもんね。喜ばしいことだよ。うん。でもこのままだと僕はアシュレイにとんでもない所に売られてしまいそうだ) 

 そう考えたライネルは自分で出て行こうと決めた。

 とにかく一度、男爵邸に戻り、荷物をまとめなくては。
 ライネルは急いで邸を出て、辻馬車乗り場に走った。


「おや!この前の坊っちゃんじゃないか。今日はどこへ行くんだい?」

 先日、初めてアルヴェリオの家に行く時、同じ馬車に乗り合わせたおばさんが今日も馬車を待っていた。

「男爵邸に帰るんです」

「あぁ嫁入りって言ってたね。今日は里帰りだったのかい?それにしても貴族様なのに、わざわざ辻馬車で移動するなんて変わってるね」

「うちは庶民派なんです」

 冗談とも本気ともつかのようなライネルの言葉に、おばさんはわははと笑った。

「でもこの前見た時よりずっと肌つやも良くなったし、髪も服もきれいにしてもらってる。安心したよ」

 見ず知らずの人が自分を心配してくれていたんだと知り、ライネルは心がふわりと暖かくなるのを感じた。

「はい、僕には過ぎた人でした。とても優しくてとても立派な人です」

「そうかい。そりゃあいい縁をもらったね。幸せになるんだよ。」

 ライネルが過去形で話していることに気づかなかったのか、おばさんはうんうんうなずいて、反対方向の馬車に乗って行ってしまった。

「幸せに……なれるのかなあ……いつかは」

 ライネルの声は誰にも届かず、枯葉と一緒に地面に落ちて崩れた。




 その後、一人で男爵邸に戻って来たライネルは、自分の部屋に戻ると鞄に荷物を詰め込んだ。……と言っても身一つでここへ来たのだ。来た時と同じ小さなカバン1つで屋敷を出て行く。

 その時、玄関で執事のレオポルドと出くわした。

「おや?ライネル様、いつのまにかお戻りに?旦那様は?」

「まだ侯爵邸です。あの、僕……今日でこちらをおいとますることになりました。今までありがとうございました」

 突然のライネルの別れの言葉に、レオポルドはびっくりして、片唾を飲んだ。
 けれど、そもそもライネルのことを気に入っていなかった彼にとって、これは大きなチャンスだ。

「そうでしたかこちらこそありがとうございます。どうぞお元気で」

「はいありがとうございます。そうだ。レオポルドさん男爵家の西の領地ってご存知ですか?」

「もちろん存じ上げておりますが、もしかしてそちらにいかれる予定ですか?」

「はい、人も少ないと聞いたので静かに過ごせるかと思いまして」

 どこに行こうかと考えたとき、一番最初に思いついたのはアルヴェリオが話してくれた寂れたた西の村だった。そこなら、侯爵家の手も届かないだろう。

「さすがに少し遠いですよ。よければ馬車を呼びましょうか?」

「あぁ……いえ、あまりお金もないので」

 それを聞いて、レオポルドはライネルが少し気の毒になった。

「辻馬車で良いのなら、私が手配して差し上げます。最後の餞別だと思っていただければ」

「本当にいいんですか?助かります。ありがとうございます!」

 まっすぐな目で自分に頭を下げるライネルを見て、レオポルトの胸は、チクリと痛む。だが、この家にとって、ライネルは邪魔者だ。レオポルドは急ぎ馬車を手配し、それにライネルを乗せた。

 別れの直前、ライネルがアルヴェリオ宛の手紙をレオポルドに託した。それは今、彼の手の中でくしゃりと丸められゴミと化している。

「悪く思わないでくださいライネル様。どうぞお幸せに」

 レオポルドは、そう言って、手の中のものを庭の隅に捨てた。






しおりを挟む
感想 151

あなたにおすすめの小説

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

姉の聖女召喚に巻き込まれた無能で不要な弟ですが、ほんものの聖女はどうやら僕らしいです。気付いた時には二人の皇子に完全包囲されていました

彩矢
BL
20年ほど昔に書いたお話しです。いろいろと拙いですが、あたたかく見守っていただければ幸いです。 姉の聖女召喚に巻き込まれたサク。無実の罪を着せられ処刑される寸前第4王子、アルドリック殿下に助け出さる。臣籍降下したアルドリック殿下とともに不毛の辺境の地へと旅立つサク。奇跡をおこし、隣国の第2皇子、セドリック殿下から突然プロポーズされる。

私たちの離婚幸福論

桔梗
ファンタジー
ヴェルディア帝国の皇后として、順風満帆な人生を歩んでいたルシェル。 しかし、彼女の平穏な日々は、ノアの突然の記憶喪失によって崩れ去る。 彼はルシェルとの記憶だけを失い、代わりに”愛する女性”としてイザベルを迎え入れたのだった。 信じていた愛が消え、冷たく突き放されるルシェル。 だがそこに、隣国アンダルシア王国の皇太子ゼノンが現れ、驚くべき提案を持ちかける。 それは救済か、あるいは—— 真実を覆う闇の中、ルシェルの新たな運命が幕を開ける。

結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。 実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。 オメガバースでオメガの立場が低い世界 こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです 強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です 主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です 倫理観もちょっと薄いです というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります ※この主人公は受けです

身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される

秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました! 最終17位でした!応援ありがとうございます! あらすじ 魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。 ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。 死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――? 傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。

天啓によると殿下の婚約者ではなくなります

ふゆきまゆ
BL
この国に生きる者は必ず受けなければいけない「天啓の儀」。それはその者が未来で最も大きく人生が動く時を見せる。 フィルニース国の貴族令息、アレンシカ・リリーベルは天啓の儀で未来を見た。きっと殿下との結婚式が映されると信じて。しかし悲しくも映ったのは殿下から婚約破棄される未来だった。腕の中に別の人を抱きながら。自分には冷たい殿下がそんなに愛している人ならば、自分は穏便に身を引いて二人を祝福しましょう。そうして一年後、学園に入学後に出会った友人になった将来の殿下の想い人をそれとなく応援しようと思ったら…。 ●婚約破棄ものですが主人公に悪役令息、転生転移、回帰の要素はありません。 性表現は一切出てきません。

「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。

キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ! あらすじ 「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」 貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。 冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。 彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。 「旦那様は俺に無関心」 そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。 バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!? 「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」 怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。 えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの? 実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった! 「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」 「過保護すぎて冒険になりません!!」 Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。 すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。

俺の好きな人は誰にでも優しい。

u
BL
「好きなタイプは?」と聞かれて世界で一番多く答えられているのは間違いなく「優しい人」だろう。 相手の優しいところに惹かれ、気づいた時には引き返せないところまで恋に落ちている。 でも次第に気付くのだ。誰だってみんな「優しい人」ではなく「"自分だけに"優しい人」が好きなのだと。 ロランは、"誰にでも優しい男"、フィリオンに恋をしてしまい、地獄のような日々に身を焼かれていた。 そんなとある日「この恋、捨てたいな…」と溢したら「それ、捨てようとすんの、やめてくんね?オレ、あんたがアイツを見る視線に興奮すっからさ」と遊び人で有名な男、ヒューゴに言われる。 彼は、自分を好きな人間には興味がなく、別の誰かに恋い焦がれている人間の目が好きな変態らしい。 そんな身勝手な遊び人とちょくちょく話すようになってからというもの、フィリオンの様子はどんどんおかしくなっていく。 恋を捨てたい男と、恋を捨てるなと言う男と、優しさが狂い始めていく男の話。 ※作者の意思ではなくキャラの意思で結末が決まります。ご要望は受け付けられませんのでどちらとくっついても美味しいと思う方のみお読みください。 ※中世ヨーロッパ風学園ものです。 ※短編(10万文字以内)予定ですが長くなる可能性もあります。 ※完結までノンストップで毎日2話ずつ更新。

処理中です...