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第二章 静かに暮らしたいだけだったのに
38・アルヴェリオ様!近すぎます!
そんなライネルの不安をよそに、アルヴェリオの手が彼の腰をそっと抱いた。そしてもう一方の手が、ライネルの指先を包み込む。
「肩の力を抜け。俺の足の動きを真似るだけでいい」
「いや、あの!アルヴェリオ様!近いです!」
「当たり前だ。離れていては踊れないだろう?」
低く落ち着いた声が耳のすぐ近くで響くと、ライネルの体はふるりと震え、全身の力が抜けていくような感覚を味わった。
「ただ俺に体を任せるだけでいい」
そう言ったアルヴェリオは、驚くほど滑らかにライネルをリードする。
(す、すごい……!僕は何もしてないのにちゃんと踊れてる!)
足を動かすたびに衣擦れの音が重なり、
アルヴェリオの金の瞳がわずかに細められる。
その微笑があまりにも優しくて、ライネルの胸が甘く痛んだ。
(僕、今……アルヴェリオ様と、踊ってるんだ)
「そう、その調子だ。上出来だな」
「僕は何もしてません……」
「何もじゃない。ちゃんと俺のリズムに合わせているだろ」
褒めるように囁かれ、ライネルの鼓動が一気に跳ね上がる。
(近い!近すぎる!)
けれど離れられない。
こんなに幸せな時間があるのだろうか。ライネルは夢見心地でダンスを楽しんだ。
「今日の洋服、とても似合ってるな」
「ひゃ……!?」
「……なんだ?その声」
「しゅみましぇん!」
(しまった!噛んでしまった!恥ずかしい!!)
「あのっ!これはブラウンさんが用意してくれて……あっ!ブラウンさんはアルヴェリオ様のお知り合いなんですよね?!すごくいい人でとても助けられています!」
「……ほぅ?」
(えっ?なに?急に怖い顔になった?僕、何か間違ったこと言ったかな……)
「村のみんなもすごく頼りにしてて……ほら!あそこにいるアノマリーもとっても懐いてるんです」
「アノマリー?」
「はい、アルヴェリオ様に紹介したいです。すごく綺麗な子で……ちょっと癖が強いんですが、きっと気に入ってもらえると思います」
そう言ってライネルは、目線でアノマリーのいる方を指した。
「……あの、ご婦人方に囲まれて頭を撫でられている子供か?」
「はい!可愛いでしょう?」
「……なにか、ネックレスを食べているように見えるが」
「はい、アノマリーは宝石を食べるんです」
「……癖が強いレベルの話じゃないな」
「でも、ちゃんと台座は外して食べているので大丈夫です」
「……そんな問題じゃない気もするが……まあいい。今は俺と踊っているんだ。こっちに集中してくれ」
そう言うと、アルヴェリオがライネルをふわりと持ち上げターンした。
「び、びっくりした!」
「ふふっ、どうだ?楽しいか?」
「はい!ダンスがこんなに楽しいなんて知りませんでした!」
背の高いアルヴェリオにしがみつくように手を伸ばして抱きつくライネルを、周りの貴族たちは微笑ましい顔で眺めている。
だが、そんな中で一人、憎しみのこもった眼で彼らを見ている女がいた。
「あら?ペンネ来ていたの?面白くなさそうだから来ないって言ってたのに」
令嬢に声をかけられたその女──ペンネ伯爵令嬢は、パッとその顔に笑みを貼り付けて振り向く。
「そうなの。田舎者の顔を見たくなってね」
そうして、また二人を眺め、手にしていた扇を割れるほど強く握った。
「肩の力を抜け。俺の足の動きを真似るだけでいい」
「いや、あの!アルヴェリオ様!近いです!」
「当たり前だ。離れていては踊れないだろう?」
低く落ち着いた声が耳のすぐ近くで響くと、ライネルの体はふるりと震え、全身の力が抜けていくような感覚を味わった。
「ただ俺に体を任せるだけでいい」
そう言ったアルヴェリオは、驚くほど滑らかにライネルをリードする。
(す、すごい……!僕は何もしてないのにちゃんと踊れてる!)
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アルヴェリオの金の瞳がわずかに細められる。
その微笑があまりにも優しくて、ライネルの胸が甘く痛んだ。
(僕、今……アルヴェリオ様と、踊ってるんだ)
「そう、その調子だ。上出来だな」
「僕は何もしてません……」
「何もじゃない。ちゃんと俺のリズムに合わせているだろ」
褒めるように囁かれ、ライネルの鼓動が一気に跳ね上がる。
(近い!近すぎる!)
けれど離れられない。
こんなに幸せな時間があるのだろうか。ライネルは夢見心地でダンスを楽しんだ。
「今日の洋服、とても似合ってるな」
「ひゃ……!?」
「……なんだ?その声」
「しゅみましぇん!」
(しまった!噛んでしまった!恥ずかしい!!)
「あのっ!これはブラウンさんが用意してくれて……あっ!ブラウンさんはアルヴェリオ様のお知り合いなんですよね?!すごくいい人でとても助けられています!」
「……ほぅ?」
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「アノマリー?」
「はい、アルヴェリオ様に紹介したいです。すごく綺麗な子で……ちょっと癖が強いんですが、きっと気に入ってもらえると思います」
そう言ってライネルは、目線でアノマリーのいる方を指した。
「……あの、ご婦人方に囲まれて頭を撫でられている子供か?」
「はい!可愛いでしょう?」
「……なにか、ネックレスを食べているように見えるが」
「はい、アノマリーは宝石を食べるんです」
「……癖が強いレベルの話じゃないな」
「でも、ちゃんと台座は外して食べているので大丈夫です」
「……そんな問題じゃない気もするが……まあいい。今は俺と踊っているんだ。こっちに集中してくれ」
そう言うと、アルヴェリオがライネルをふわりと持ち上げターンした。
「び、びっくりした!」
「ふふっ、どうだ?楽しいか?」
「はい!ダンスがこんなに楽しいなんて知りませんでした!」
背の高いアルヴェリオにしがみつくように手を伸ばして抱きつくライネルを、周りの貴族たちは微笑ましい顔で眺めている。
だが、そんな中で一人、憎しみのこもった眼で彼らを見ている女がいた。
「あら?ペンネ来ていたの?面白くなさそうだから来ないって言ってたのに」
令嬢に声をかけられたその女──ペンネ伯爵令嬢は、パッとその顔に笑みを貼り付けて振り向く。
「そうなの。田舎者の顔を見たくなってね」
そうして、また二人を眺め、手にしていた扇を割れるほど強く握った。
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