69 / 89
第四章 全てを暴いて幸せになります!
67・期せずして戦闘開始です?
しおりを挟む
そうして、二人が部屋から出て行った後、ブラウンは心配そうな顔でライネルに問いかけた。
「二人きりにしていいのか?」
「はい、アルヴェリオ様を信じてますから。それに……」
「それに?」
「今回の裁判で、僕はアルヴェリオ様に助けてもらいました。でも、アルヴェリオ様のお父上であるバロウズ男爵の件は、まだ解決してないんです」
アシュレイを油断させることで、少しでも証拠が掴めるなら。
「だから全然平気です。あんなふうに抱き上げられても、全然まったくうらやましくなんてないですから」
そう言いつつも、眉間にシワを寄せて悔しそうなライネルはとても可愛らしく、ブラウンは、もしここにアルヴェリオがいたら、すぐにでも結婚式を挙げると言い出しかねないと思った。
「侯爵邸の小屋の件もあるし、この流れに乗ってアシュレイの悪事を暴きたいな」
「はい。悪いことをしたら償わないといけないのです」
幼いライネルにとって、アシュレイは恐怖の対象でしかなかった。けれど、前世の記憶を取り戻してからは、さほど憎しみもない。
「けど、たった一人の兄だもんな」
「あれを兄と言うのならそうなんでしょうけど。正直なところ、今はあまりあの人に興味はないんですよね」
「達観してるな」
「はい、おかげさまで」
そう言って笑いながらも、やはり気にはなる。ライネルは二人が消えていったドアを見つめた。
◇◇◆◆◇◇
(大人しくなったが……こいつは一体何を企んでるんだ)
アルヴェリオは、仕方なくアシュレイを抱き上げたまま黙々と廊下を歩いていた。
当のアシュレイはと言えば、アルヴェリオの首に腕を絡め、胸板にしなだれかかっている。
「おい、本当に具合が悪いのか?」
「……どう見ても苦しそうに見えませんか?さっきのショックでもう死にそうです。アルヴェリオ様、あんまり酷いと結婚してあげませんからね」
「…………」
その沈黙を、自分を失うことへの恐れと勘違いしたアシュレイは、すっかり機嫌を直してアルヴェリオに寄り添った。
「ほら、着いたぞ」
アルヴェリオは、部屋に着くなり、少し乱暴にアシュレイをソファに放り投げ、さっさと出て行こうとする。アシュレイはそれを見て慌てて呼び止めた。
「ちょっと!アルヴェリオ様!」
「……なんだ?もう用は済んだだろ。医者と侍女を寄越すから大人しくしてろ」
「倒れたんですよ?心細いんです。もう少し側にいてください」
「……」
(こんな奴が本当にライネルの血を分けた兄なのだろうか。こいつは、母親の腹の中に良心とか道徳ってものを置き忘れてきたに違いない)
そんなことを考えながらアシュレイの顔を見ていると、彼は魔性の微笑みでアルヴェリオを見つめてきた。
「ねぇ、そろそろライネルを返してくれませんか?」
「……なんだと?」
「外聞も悪いでしょう?妻の弟を可愛がってるなんて。変な噂を立てられたらどうするんですか?まぁあなたにそんな気がないのはわかってますけど」
アシュレイは着ていた服のボタンを上から順に外していく。そして、ゆっくりと白い肌をさらけ出した。
「ライネルなんて、何の役にも立ちませんよ。昔からバカで弱くて不細工で、何一つ良いところがなかったんですから」
その言葉にアルヴェリオの中の何かが壊れた。
「アシュレイ」
「なんですか?もっと近くに来てください」
アシュレイが差し出した白い指を、アルヴェリオは強く掴んだ。そのまま捻るようにソファーに押し付け、アシュレイの上に体を乗り上げる。
「強引なんですね。でも嫌いじゃないです」
「黙れ」
「え?」
見上げたアルヴェリオの顔は、見たこともないくらいに冷たかった。さすがのアシュレイも言葉を失うほどに。
「……ライネルは賢くて、誰よりも思いやりがある」
「アルヴェリオ様?一体何を……」
「それにものすごく可愛いんだ」
「……どうしたんですか?貴方の結婚相手は僕ですよ!!あいつを褒めるのはやめて!」
「俺が何も知らないと思ってるのか?」
「……なんのことですか?」
アシュレイの目に怯えが走るが、アルヴェリオはおかまいなしに続けた。
「バロウズ男爵のことだ。いや、男爵以外にもきっとたくさんいるんだろう。お前が陥れた相手は」
「ど……どうして……」
アシュレイは動けない。
全て完璧に処理したはずだ。そんな思いが頭の中をぐるぐる回り、アルヴェリオから目を離すことができない。
「何のことか……」
「芝居は終わりだ。すぐに全てを白日のもとにさらけ出してやるから覚えてろ」
アルヴェリオは、吐き捨てるようにそれだけ言うと、力いっぱいドアを閉め、部屋を出た。
◇◆◇◆◇
「えっ?!アシュレイに言っちゃったんですか??何やってるんですか?もう!!」
ライネルのいる別荘に戻ってきたアルヴェリオは、ことの顛末を二人に説明した。
そして今、ライネルに大変な説教を食らっているところだ。
「……我慢できなかった」
「何をですか?」
「ライネルが悪く言われるのを」
「……その可愛さ反則です!」
「はぁ……」
横で聞いていたブラウンは、段々と馬鹿らしくなってきた。
この大男の何が可愛いのか。逆鱗に触れればどんな相手でも切り捨てる、悪魔のような男だぞ?
……けれど、口には出さない。ブラウンだって命は惜しいのだ。
「二人きりにしていいのか?」
「はい、アルヴェリオ様を信じてますから。それに……」
「それに?」
「今回の裁判で、僕はアルヴェリオ様に助けてもらいました。でも、アルヴェリオ様のお父上であるバロウズ男爵の件は、まだ解決してないんです」
アシュレイを油断させることで、少しでも証拠が掴めるなら。
「だから全然平気です。あんなふうに抱き上げられても、全然まったくうらやましくなんてないですから」
そう言いつつも、眉間にシワを寄せて悔しそうなライネルはとても可愛らしく、ブラウンは、もしここにアルヴェリオがいたら、すぐにでも結婚式を挙げると言い出しかねないと思った。
「侯爵邸の小屋の件もあるし、この流れに乗ってアシュレイの悪事を暴きたいな」
「はい。悪いことをしたら償わないといけないのです」
幼いライネルにとって、アシュレイは恐怖の対象でしかなかった。けれど、前世の記憶を取り戻してからは、さほど憎しみもない。
「けど、たった一人の兄だもんな」
「あれを兄と言うのならそうなんでしょうけど。正直なところ、今はあまりあの人に興味はないんですよね」
「達観してるな」
「はい、おかげさまで」
そう言って笑いながらも、やはり気にはなる。ライネルは二人が消えていったドアを見つめた。
◇◇◆◆◇◇
(大人しくなったが……こいつは一体何を企んでるんだ)
アルヴェリオは、仕方なくアシュレイを抱き上げたまま黙々と廊下を歩いていた。
当のアシュレイはと言えば、アルヴェリオの首に腕を絡め、胸板にしなだれかかっている。
「おい、本当に具合が悪いのか?」
「……どう見ても苦しそうに見えませんか?さっきのショックでもう死にそうです。アルヴェリオ様、あんまり酷いと結婚してあげませんからね」
「…………」
その沈黙を、自分を失うことへの恐れと勘違いしたアシュレイは、すっかり機嫌を直してアルヴェリオに寄り添った。
「ほら、着いたぞ」
アルヴェリオは、部屋に着くなり、少し乱暴にアシュレイをソファに放り投げ、さっさと出て行こうとする。アシュレイはそれを見て慌てて呼び止めた。
「ちょっと!アルヴェリオ様!」
「……なんだ?もう用は済んだだろ。医者と侍女を寄越すから大人しくしてろ」
「倒れたんですよ?心細いんです。もう少し側にいてください」
「……」
(こんな奴が本当にライネルの血を分けた兄なのだろうか。こいつは、母親の腹の中に良心とか道徳ってものを置き忘れてきたに違いない)
そんなことを考えながらアシュレイの顔を見ていると、彼は魔性の微笑みでアルヴェリオを見つめてきた。
「ねぇ、そろそろライネルを返してくれませんか?」
「……なんだと?」
「外聞も悪いでしょう?妻の弟を可愛がってるなんて。変な噂を立てられたらどうするんですか?まぁあなたにそんな気がないのはわかってますけど」
アシュレイは着ていた服のボタンを上から順に外していく。そして、ゆっくりと白い肌をさらけ出した。
「ライネルなんて、何の役にも立ちませんよ。昔からバカで弱くて不細工で、何一つ良いところがなかったんですから」
その言葉にアルヴェリオの中の何かが壊れた。
「アシュレイ」
「なんですか?もっと近くに来てください」
アシュレイが差し出した白い指を、アルヴェリオは強く掴んだ。そのまま捻るようにソファーに押し付け、アシュレイの上に体を乗り上げる。
「強引なんですね。でも嫌いじゃないです」
「黙れ」
「え?」
見上げたアルヴェリオの顔は、見たこともないくらいに冷たかった。さすがのアシュレイも言葉を失うほどに。
「……ライネルは賢くて、誰よりも思いやりがある」
「アルヴェリオ様?一体何を……」
「それにものすごく可愛いんだ」
「……どうしたんですか?貴方の結婚相手は僕ですよ!!あいつを褒めるのはやめて!」
「俺が何も知らないと思ってるのか?」
「……なんのことですか?」
アシュレイの目に怯えが走るが、アルヴェリオはおかまいなしに続けた。
「バロウズ男爵のことだ。いや、男爵以外にもきっとたくさんいるんだろう。お前が陥れた相手は」
「ど……どうして……」
アシュレイは動けない。
全て完璧に処理したはずだ。そんな思いが頭の中をぐるぐる回り、アルヴェリオから目を離すことができない。
「何のことか……」
「芝居は終わりだ。すぐに全てを白日のもとにさらけ出してやるから覚えてろ」
アルヴェリオは、吐き捨てるようにそれだけ言うと、力いっぱいドアを閉め、部屋を出た。
◇◆◇◆◇
「えっ?!アシュレイに言っちゃったんですか??何やってるんですか?もう!!」
ライネルのいる別荘に戻ってきたアルヴェリオは、ことの顛末を二人に説明した。
そして今、ライネルに大変な説教を食らっているところだ。
「……我慢できなかった」
「何をですか?」
「ライネルが悪く言われるのを」
「……その可愛さ反則です!」
「はぁ……」
横で聞いていたブラウンは、段々と馬鹿らしくなってきた。
この大男の何が可愛いのか。逆鱗に触れればどんな相手でも切り捨てる、悪魔のような男だぞ?
……けれど、口には出さない。ブラウンだって命は惜しいのだ。
647
あなたにおすすめの小説
冤罪で追放された悪役令息、北の辺境で幸せを掴む~恐ろしいと噂の銀狼将軍に嫁いだら、極上の溺愛とモフモフなスローライフが始まりました~
水凪しおん
BL
「君は、俺の宝だ」
無実の罪を着せられ、婚約破棄の末に極寒の辺境へ追放された公爵令息ジュリアン。
彼を待ち受けていたのは、「北の食人狼」と恐れられる将軍グリーグとの政略結婚だった。
死を覚悟したジュリアンだったが、出会った将軍は、噂とは真逆の不器用で心優しいアルファで……?
前世の記憶を持つジュリアンは、現代知識と魔法でボロボロの要塞を快適リフォーム!
手作りスープで将軍の胃袋を掴み、特産品開発で街を救い、気づけば冷徹将軍から規格外の溺愛を受けることに。
一方、ジュリアンを捨てた王都では、破滅の足音が近づいていて――。
冤罪追放から始まる、銀狼将軍との幸せいっぱいな溺愛スローライフ、ここに開幕!
【オメガバース/ハッピーエンド/ざまぁあり/子育て/スパダリ】
姉の聖女召喚に巻き込まれた無能で不要な弟ですが、ほんものの聖女はどうやら僕らしいです。気付いた時には二人の皇子に完全包囲されていました
彩矢
BL
20年ほど昔に書いたお話しです。いろいろと拙いですが、あたたかく見守っていただければ幸いです。
姉の聖女召喚に巻き込まれたサク。無実の罪を着せられ処刑される寸前第4王子、アルドリック殿下に助け出さる。臣籍降下したアルドリック殿下とともに不毛の辺境の地へと旅立つサク。奇跡をおこし、隣国の第2皇子、セドリック殿下から突然プロポーズされる。
悪役会計様に転生した俺は、生徒会長に媚び売って生き残る
桜城 寧
BL
処刑された記憶とともに、BLゲームに登場する悪役会計に転生したことに気付く。処刑されないために、チャラ男としての仮面を被り、生徒会長に媚び売ったり、どうにか能力を駆使したりして生きてたら、色々な人に構われる話。
【エルド学園】俺はこの『親友』が、ただの学生だと思っていた
西園 いつき
BL
エルド王国第一王子、レオンは、唯一の親友ノアと日々研鑽を重ねていた。
文武共に自分より優れている、対等な学生。
ノアのことをそう信じて疑わなかったレオンだが、突如学園生活は戦火に巻き込まれ、信じていたものが崩れ始める。
王国と帝国、そして王統をめぐる陰謀と二人の関係が交錯する、王子×親友のファンタジーBL。
【8話完結】僕の大切な人はBLゲームの主人公でした。〜モブは主人公の幸せのためなら、この恋も諦められます〜
キノア9g
BL
転生先は、まさかのBLゲームの世界。
モブであるリセルは、恋を自覚した瞬間、幼馴染・セスがこの世界の“主人公”だと気づいてしまう。
このまま一緒にいても、いつか彼は攻略対象に惹かれていく運命——それでも、今だけは傍にいたい。
「諦める覚悟をしたのに、どうしてこんなにも君が愛おしいんだろう」
恋の終わりを知っているモブと、想いを自覚していく主人公。
甘さと切なさが胸を締めつける、すれ違いから始まる運命の物語。
全8話。
「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。
キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ!
あらすじ
「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」
貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。
冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。
彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。
「旦那様は俺に無関心」
そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。
バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!?
「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」
怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。
えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの?
実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった!
「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」
「過保護すぎて冒険になりません!!」
Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。
すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる