【完結】望まれなかった代役婚ですが、投資で村を救っていたら旦那様に溺愛されました。

ivy

文字の大きさ
68 / 89
第四章 全てを暴いて幸せになります!

66・策略

しおりを挟む
「先ほどアシュレイ小公爵様が仰ったように、お二人は婚約を前提とした仲です。けれど、当初、自身より劣る家門のアルヴェリオ様からの求婚を疎ましく思われ、代わりにライネル様を寄越されました」

「……なっ!?」

 アシュレイは青を真っ赤にして口篭った。法廷内が、先ほどとは違うどよめきに沸く。

 ……アシュレイにも恥という感覚はあるんだな、とライネルは、感心する。そして何気なくアルヴェリオの方を向くと、慌てた様子でブラウンに向かって止めろと訴えていた。

(アルヴェリオ様までどうかしたのかな?)

 だが、ブラウンはお構いなしに言葉を続ける。

「アルヴェリオ様はすぐにライネル様をご自身が持て余していた領地、つまり職人村をライネル様に与えて、追いやろうとしていたのです。“嫌がらせ”で」

「ブラウン!そこまで言わなくても……!お前は誰の味方だ……」

「これはその時の証書です。ここに当時の法務局の印と日付が入ってます」

 ブラウンはアルヴェリオの言葉を無視して先を続けた。
 アシュレイは自分の目でそれを確認し、絶望に目を見開く。

「……そんな!でも何か勘違いされてます。私はそんなひどい事はしません。ライネルが!貴方の元に嫁ぎたいと、私より先に貴方の元に行ってしまったのです!」

 どちらの言葉が真実か、皆は考えあぐねているのか、しばしの沈黙が法廷を包む。
 ライネルは小さな声でアルヴェリオにそっと声をかけた。

「……アルヴェリオ様」

「……分かっている。すまない。俺は酷い事を考えていた」

 アルヴェリオは、当時のことを思い出しているのか、顔を伏せて呟いた。

「いえ、そのまま叩き出されてもおかしくない状況でした。それなのに領地を下さろうとしていたなんて」

 ライネルはその瞳を感謝の気持ちで潤ませてアルヴェリオを見た。

「……やめてくれ。罪悪感で死にそうだ」

「え?」

(罪悪感?どうして?アルヴェリオ様は、居場所のない僕に領地をくれようとしたのに)

 その時、傍聴席から女性の大きな声が聞こえた。

「思い出した!その子、嫁入りの時に辻馬車で一緒だった子だよ!顔も知らない相手に嫁がされるって言ってたよ!」

 ライネルが驚いてそちらを見る。
 確かにあの日、馬車に同乗した平民の女性だった。

「あ!あの時は沢山のパンをありがとうございました!」

 ライネルが満面の笑みで手を振ると、俄かに法廷内が人々の話し声で埋め尽くされる。

「……証人が現れましたね」

 事務官の呟きに周りの平民たちも声を上げた。

「あんたが噂の妾の子かい?俺も聞いたよ。うちの婆さんが馬車に乗ってて、帰ってから泣きながらそこらじゅうに話してた」
「ああ、俺も聞いたことある。あんたがその子か」

「……なんの話だ?ライネル」

「あ、いえ……ナンデモアリマセン……」

(あの時のネガキャンがこんなところで生きてくるとは……)

「静粛に!!」

 裁判官の木槌が大きな音を立てる。それをきっかけに、法廷は元の静けさを取り戻した。

「……お互いの主張に齟齬がある。それを鑑みて……」

「うっ!!」

 裁判長の言葉を遮り、アシュレイが突然床に倒れた。事務官が胸を押さえて苦しむ彼に駆け寄るが、周りにいたアシュレイの同僚たちがそれを止めた。

「アシュレイ様は繊細なのです。ご自身が疑われたショックで心臓が異変をきたし……」

 と、何やら説明を始めている。

「あれ、絶対仮病だよね」

「そうだろうな。ここで判決を出されないためだろう」

 そうしているうちに、とうとう裁判長が木槌を叩いて裁判の延期を告げる結果となった。


「ア……アルヴェリオ様、私を部屋まで連れて行ってください」

「え?俺が?何故だ?」

「え……?あ、その、婚約者じゃないですか」

「ああ、そうだったな。分かった」

 完全に忘れていたと言わんばかりのアルヴェリオの態度に、アシュレイは驚きと悔しさに顔を歪ませた。

「では、ライネル。また後で会おう」

「はい。今日はありがとうございました」

(ライネルのくせにそんなに優しくされるのはおかしいだろ!アルヴェリオも、僕にはそんな顔で微笑みかけることなんかないくせに……)

 嫉妬でどうにかなりそうなアシュレイだったが、それを必死で押し殺し、アルヴェリオに縋り付く。

「……歩きにくいな」

「抱き上げてくださってもいいんですよ」

「……」

「アルヴェリオ様」

 ライネルの声に、ふと我に返ったアルヴェリオは小さく舌打ちをしてアシュレイを抱き上げた。

 ……今回のことで、期せずしてアシュレイの評判を落とすことが出来た。証拠集めも目処が立った今、アシュレイに芝居をする必要性は低い。

 けれど、慎重なライネルのことだ。最後までアシュレイに油断をさせておいた方がいいとの考えだろう。

「アルヴェリオ様、僕は本当に何も知らないんです」

 先ほどとは打って変わった弱々しさで腕の中にいるアシュレイに、嫌悪感が増す。

「……誰も来ない部屋があるんです。そこまで連れて行ってくれますか?」

「……ああ」
しおりを挟む
感想 151

あなたにおすすめの小説

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *不定期連載です。

強欲なる花嫁は総てを諦めない

浦霧らち
BL
 皮肉と才知と美貌をひっさげて、帝国の社交界を渡ってきた伯爵令息・エルンスト──その名には〝強欲〟の二文字が付き纏う。  そんなエルンストが戦功の褒美と称されて嫁がされたのは、冷血と噂される狼の獣人公爵・ローガンのもとだった。  やがて彼のことを知っていくうちに、エルンストは惹かれていく心を誤魔化せなくなる。  エルンストは彼に応える術を探しはじめる。荒れた公爵領を改革し、完璧な伴侶として傍に立つために。  強欲なる花嫁は、総てを手に入れるまで諦めない。 ※性描写がある場合には*を付けています。が、後半になると思います。 ※ご都合主義のため、整合性は無いに等しいです、雰囲気で読んでください。 ※自分の性癖(誤用)にしか配慮しておりません。 ※書き溜めたストックが無くなり次第、ノロノロ更新になります。

姉の聖女召喚に巻き込まれた無能で不要な弟ですが、ほんものの聖女はどうやら僕らしいです。気付いた時には二人の皇子に完全包囲されていました

彩矢
BL
20年ほど昔に書いたお話しです。いろいろと拙いですが、あたたかく見守っていただければ幸いです。 姉の聖女召喚に巻き込まれたサク。無実の罪を着せられ処刑される寸前第4王子、アルドリック殿下に助け出さる。臣籍降下したアルドリック殿下とともに不毛の辺境の地へと旅立つサク。奇跡をおこし、隣国の第2皇子、セドリック殿下から突然プロポーズされる。

六年目の恋、もう一度手をつなぐ

高穂もか
BL
幼なじみで恋人のつむぎと渉は互いにオメガ・アルファの親公認のカップルだ。 順調な交際も六年目――最近の渉はデートもしないし、手もつながなくなった。 「もう、おればっかりが好きなんやろか?」 馴ればっかりの関係に、寂しさを覚えるつむぎ。 そのうえ、渉は二人の通う高校にやってきた美貌の転校生・沙也にかまってばかりで。他のオメガには、優しく甘く接する恋人にもやもやしてしまう。 嫉妬をしても、「友達なんやから面倒なこというなって」と笑われ、遂にはお泊りまでしたと聞き…… 「そっちがその気なら、もういい!」 堪忍袋の緒が切れたつむぎは、別れを切り出す。すると、渉は意外な反応を……? 倦怠期を乗り越えて、もう一度恋をする。幼なじみオメガバースBLです♡

夫には好きな相手がいるようです。愛されない僕は針と糸で未来を縫い直します。

伊織
BL
裕福な呉服屋の三男・桐生千尋(きりゅう ちひろ)は、行商人の家の次男・相馬誠一(そうま せいいち)と結婚した。 子どもの頃に憧れていた相手との結婚だったけれど、誠一はほとんど笑わず、冷たい態度ばかり。 ある日、千尋は誠一宛てに届いた女性からの恋文を見つけてしまう。 ――自分はただ、家からの援助目当てで選ばれただけなのか? 失望と涙の中で、千尋は気づく。 「誠一に頼らず、自分の力で生きてみたい」 針と糸を手に、幼い頃から得意だった裁縫を活かして、少しずつ自分の居場所を築き始める。 やがて町の人々に必要とされ、笑顔を取り戻していく千尋。 そんな千尋を見て、誠一の心もまた揺れ始めて――。 涙から始まる、すれ違い夫婦の再生と恋の物語。 ※本作は明治時代初期~中期をイメージしていますが、BL作品としての物語性を重視し、史実とは異なる設定や表現があります。 ※誤字脱字などお気づきの点があるかもしれませんが、温かい目で読んでいただければ嬉しいです。

この冬を超えたら恋でいい

天気
BL
夜の街で、凪は人生の底にいた。 古いアパートに帰る途中、父の残した借金の取り立てに絡まれ、逃げ場を失う。 そこに現れたのは、大手企業の社長・鷹宮だった。 偶然の救い。年齢も立場も違う二人は、その夜を境に交わることになる。 事情を多く語らない凪は、不幸が当たり前のように身にまとい、誰かに頼ることを知らない。 一方の鷹宮は、完璧な成功者として生きてきた男だった。 危険から守るため、鷹宮は凪を一時的に自宅へ迎え入れる。 冬の同居生活の中で、凪は少しずつ日常を取り戻していく。 大学へ通い、温かい食事をし、夜を一人で怯えずに眠る。 しかし、守られることに慣れない凪は、距離が近づくほどに自分から一歩引いてしまう。 それは、失うことを恐れる、健気で不器用な選択だった。 一方、鷹宮は気づいてしまう。 凪が笑うだけで、胸が満たされることに。 そんな自分の感情から凪を守るつもりで引いた距離が、 凪を遠ざけてしまう。 近づきたい。 けれど、踏み込めば壊してしまうかもしれない。 互いを思うほど、すれ違いは深くなる。 2人はこの冬を越えることができるのかーー

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

【16話完結】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー AI比較企画作品

処理中です...