【完結】望まれなかった代役婚ですが、投資で村を救っていたら旦那様に溺愛されました。

ivy

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第四章 全てを暴いて幸せになります!

65・裁判〜アルヴェリオ〜

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「嘘だ!!」

ライネルは思わず叫ぶが、すぐに裁判長に嗜められ、仕方なく席に座り直した。

その様子を見て、アシュレイは優しい声で語りかける。

「ライネル。君が嘘をつけばつくほど苦しい立場になる。そろそろ罪を認めようか」

傍聴席の空気は“有罪”一色に傾いている。
そしてアシュレイは決定打を撃った。

「証拠が揃っている。そして証言者もいる。
この状況で“無実”と言うのは、もはや無理があります」

アシュレイは勝利を確信し、裁判長を見ながらゆっくりと続けた。

「被告には、国家反逆罪の罪で処刑が妥当であると考えます。……弟を失うのは胸が裂かれるように苦しいですが、家族を特別扱い出来ません。それに、このままでは侯爵家としての面目も立ちません」

法廷がざわめき、重い空気に満ちた。

(ああ、やっぱりアシュレイに勝つなんて無理だった……)

ライネルが目を閉じた、その瞬間。

「──ではそろそろ、反撃と行こうか」

そう言って立ち上がったのはアルヴェリオだった。

裁判長も、アシュレイも、そして傍聴席の誰もが無意識に息を呑む。
アルヴェリオの瞳は静かだったが、その奥には氷の刃のような光が宿っていた。

「……アルヴェリオ様……?」

アルヴェリオは、ライネルに向かって微笑み、その耳元で小さく何事か囁いた。
そして一歩前に出てアシュレイを正面から見据える。

「……どうしてアルヴェリオ様がライネルの味方を?」

「うちの領地の発展に寄与してくれた恩人を救うのは当たり前のことじゃないか?」

「……あなたは僕の婚約者のはずですよね」

「まだ婚約はしてないがな。それに今、無実の罪を着せられそうな人間がいる。それを救うのは人として当然だ」

アシュレイの顔色は真っ青だ。
自分の味方をしてくれるとばかり思っていた相手が、あろうことか今自分を追い詰めようとしている。

「裁判長、今度は俺の番だ。被告人の弁護をする。いいな?」

「もちろんです。どうぞ」


その言葉を聞くなり、アルヴェリオはテーブルの上に置かれた証拠の書類を一枚取った。
それは、先ほどアシュレイがカリエルの商人との書簡だと見せたものだ。

「まずこれだが、署名はライネルのものじゃない」

「どこにそんな証拠があるんですか?こちらの書類と見比べてください。全く同じです」

ショックを受けつつも、アシュレイは気丈に言い張る。

「この筆跡は、ライネルのものに似せて書かれているが、決定的な違いがある」

会場がざわついた。

「……違い?」

アシュレイが冷ややかな声で返すと、アルヴェリオは淡々と続けた。

「ライネルの字には癖がある。しかも数字にだけだ。お前はライネルの書いた数字を見たことがないだろう?ライネルには変な癖があるんだ」

そう言ってアルヴェリオは、ショーから借りてきた株式の台帳見せた。確かに数字の間にいくつか「,」が入っている。

(あ、前世の記憶でうっかり桁にカンマを入れちゃったんだ)

ライネルは自分の無意識の行動に驚いた。そしてそれを覚えていたアルヴェリオにも。

「数字の間に、こんなものを入れる奴が他にいるか?確かに文字はよく似ているが、ここまでは気が回らなかったみたいだな」

裁判長が目を細める。

「文字鑑定官を」

鑑定官が呼ばれ、震える手で書簡を確認した。

「……確かに。これは本人の筆跡を模した別人によるものです」

傍聴席がざわめき、アシュレイの顔が強張る。

「それから、外国への送金に関してだが、ライネルではなく職人村のショーが送ったものだ」

「ほら!やっぱり!代理を立てて送金なんて、更に重い罪だ!」

「……違う。預かっていた金を返しただけだ」

「……は?そんな大金を預かっていた?」

「ああ、そうだ」

送金先の外国の貴族は、以前ライネルの株式化の説明に感銘を受け、工房の希望の証をいくつも購入してくれた。けれど、他にも欲しがっている人が沢山いると聞いて、いくつかを手放してくれたのだ。

アルヴェリオは、その時の事情を簡単に説明する。すると、その場にいた一人の男が声を上げた。

「彼の売ってくれた希望の証を買ったのは私だ。彼とは旧知の仲でね。譲ってくれたのだよ。……ああ、突然すまない。私はブライト王国のゴートロートというものだ」

「え?あなたが?!」

ライネルの目が、驚きに見開かれる。

ゴートロート公爵は希望の証のやりとりにあたり、何度も心温まる手紙をくれた。いつか会ってみたい。ライネルはそう思っていたが、まさかこんなところで会うことになるとは夢にも思ってもいなかった。

「まさか……来てくださったんですか?」

「ああ、きな臭い罪状で捕まったと聞いたので、いてもたってもいられなかった。そこの若者が声を上げなかったら、私が裁判長に食ってかかるところだったよ」

そう言うと、ゴートロートは豪快に笑った。

「アシュレイ、これでもまだライネルを罪に問うつもりか」

「……まだ、メイドの証言があります。それに権限もない貴方の領地を好き勝手にしたんですよ」

「それなら問題ない。俺がライネルにあの村を任せたんだ」

「そんな嘘は通りません!どうせ裁判のために急遽書類を用意したんでしょう?」

「……ブラウン」

「はい」

名前を呼ばれたブラウンは、一枚の紙を持って裁判長の前まで行った。そして頭を下げてそれを手渡す。

「これはライネルが家に来たときに書いたものだ」

「……確かに日付はずいぶん前のものです」

秘書官が譲渡契約書を見ながら証言した。

「そんなの、後からいくらでも書くことができます!」

「それは無理だ」

ブラウンが静かに答えた。
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