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重ねた手
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「子供ができた」
放課後のファーストフード店で。
その唐突なお知らせに俺は食べていたポテトを床に落とした。
「……子供?誰に?」
「俺に決まってんだろ」
むっとした顔で俺を睨む桜木。
その顔は最高に可愛い……じゃなくて。
「なんだよ迷惑なのかよ。……まだ高校生だけど、もう少しで卒業なんだし別にいいだろ」
いやいやちょっと待て。
「まさか本当に自分の子か疑ってる?」
「いや、それ以前の話なんだが、男は妊娠しない」
「誰が決めたんだよ」
「誰って……」
決めたとかそういうもんじゃ……強いて言えば神様か?
けど、目の前の桜木は至極真面目な顔で俺をみている。
……これ、どんな返事をするのが正解?
俺はしばらく考えてから口を開いた。
「いや、ごめんごめん、突然でびっくりしただけ。俺たちの子か。産まれんの楽しみだなあ」
桜木が何を考えてんのか分からないけど、この際とことんノッてやることにした。
けど、そう話しているうちに、そんな未来も悪くない気がしてくる。……大丈夫か?俺。
「……なんだよ。いなくなるくせに」
「え?」
「俺を置いて行くくせに」
「……ああ」
そうか。
桜木は寂しかったんだ。
だからこんな突拍子もないことを言い出して、俺を引き止めようとしたのか。
「そんな遠くに行くわけでもないし、また会えるんだから」
「……いつだよ」
桜木の澄んだ目から涙がひとつぶ落ちた。
「いつか、お前がやりたいこと全部やって、幸せになって……それからかな」
「……いつの話だよ。そんときにはもうお前のことなんて忘れてる」
俺はテーブルの下でそっと桜木の手を握った。
その手の温かさが俺に伝わって、じんわりと温もりが全身を包む。
ああ桜木は泣き顔も可愛いんだな。
知らなかった。
「いいよ忘れても。そのくらい凄く楽しい人生を送れたってことだからな」
「カッコつけんな」
「あはは。……桜木、その子供ちゃんと産めよ?」
冗談めかした言葉に、桜木は久しぶりの笑顔を見せる。
俺は、少し輪郭がぼんやりとしてきた自分の手を最後にもう一度、桜木に重ねた。
放課後のファーストフード店で。
その唐突なお知らせに俺は食べていたポテトを床に落とした。
「……子供?誰に?」
「俺に決まってんだろ」
むっとした顔で俺を睨む桜木。
その顔は最高に可愛い……じゃなくて。
「なんだよ迷惑なのかよ。……まだ高校生だけど、もう少しで卒業なんだし別にいいだろ」
いやいやちょっと待て。
「まさか本当に自分の子か疑ってる?」
「いや、それ以前の話なんだが、男は妊娠しない」
「誰が決めたんだよ」
「誰って……」
決めたとかそういうもんじゃ……強いて言えば神様か?
けど、目の前の桜木は至極真面目な顔で俺をみている。
……これ、どんな返事をするのが正解?
俺はしばらく考えてから口を開いた。
「いや、ごめんごめん、突然でびっくりしただけ。俺たちの子か。産まれんの楽しみだなあ」
桜木が何を考えてんのか分からないけど、この際とことんノッてやることにした。
けど、そう話しているうちに、そんな未来も悪くない気がしてくる。……大丈夫か?俺。
「……なんだよ。いなくなるくせに」
「え?」
「俺を置いて行くくせに」
「……ああ」
そうか。
桜木は寂しかったんだ。
だからこんな突拍子もないことを言い出して、俺を引き止めようとしたのか。
「そんな遠くに行くわけでもないし、また会えるんだから」
「……いつだよ」
桜木の澄んだ目から涙がひとつぶ落ちた。
「いつか、お前がやりたいこと全部やって、幸せになって……それからかな」
「……いつの話だよ。そんときにはもうお前のことなんて忘れてる」
俺はテーブルの下でそっと桜木の手を握った。
その手の温かさが俺に伝わって、じんわりと温もりが全身を包む。
ああ桜木は泣き顔も可愛いんだな。
知らなかった。
「いいよ忘れても。そのくらい凄く楽しい人生を送れたってことだからな」
「カッコつけんな」
「あはは。……桜木、その子供ちゃんと産めよ?」
冗談めかした言葉に、桜木は久しぶりの笑顔を見せる。
俺は、少し輪郭がぼんやりとしてきた自分の手を最後にもう一度、桜木に重ねた。
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