可愛いだけが取り柄の俺がヤクザの若頭と番になる話

ivy

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婚前旅行2

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ホテルから国際通りまで車を走らせ土産物屋が並ぶ通りでやっと賢士が納得する上着を見つけた。

けれど米軍基地があるからかどの服も一回り大きくて結局サイズが合ったのが子供服。

試着した時に賢士が見せた慈愛の眼差しは一生忘れられない屈辱の瞬間だった。



「悪かったなあ。背ちっさくて」

むくれる俺にひたすら可愛いと言って頭を撫で回す賢士。
アイス屋で親子に間違えられたのは賢士のせいだ。

「そう言えば賢士って年いくつ?」
「今年29になる」
「おお・・」

年上とは分かってたけど一回り近い歳の差だ。
俺は見た目が幼くて中学生に間違えられた事もあるので並んでたら・・

「援交じゃん」
「婚約者だろ」

婚約者・・何その響き。
嬉しすぎる


「どうした?顔が赤いぞ。暑いのか?」
「なんでもない!早く海行こ!」


俺は額に手を当てて熱を測ろうとする賢士の腕を掴み足速に駐車場に向かった。







「気持ちいい!」
6月の海は肌寒いかと思いきや全くそんな事はなく、太陽光で温められた遠浅の海水に優しく肌を包まれる感触は最高だった。
俺は浮き輪に入って波に揺られ全力で解放感を味わう。


「賢士もおいでよ!泳がないの?あ、もしかして泳げないの~?」
ビーチパラソルの下、気だるげにチェアに寝そべりシャンパングラスを傾け俺を見遣る男はそれだけ見ると立派な反社会勢力だ。

そりゃ騙されるよな。
まさか国家権力の方とは・・。
一人でぱちゃぱちゃと波間に漂いながら思う。

けど警察24時!みたいな番組に出て来るのはどっちがどっちかわからない人達だったと思い出し腑に落ちた。

中身はあんなに優しいのに可哀想。
ぼんやりそんな事を考えてると突然浮き輪がグイッと引かれた。

焦って振り向くといつの間にか賢士がいて、にやっと笑ってる。

「誰が泳げないって?昔はよく河童のけんちゃんって言われたもんだ」

「ちょっとよくわかんない」

河童ってあの妖怪?
なんで妖怪呼ばわりされてんの?
それより浮き輪離して欲しい。
何を隠そう俺は泳げない。

「あの岩まで競争するぞ」

「ぎゃー!!浮き輪取り上げないで!死んじゃう!」

慌てて浮き輪を取り返すと全力でしがみつく。
「そういう悪ふざけはやめた方がいいと思う!」

そう言って俺は仕返しに腕を振り回して周りの海水を顔にざぶざぶとかけてやった。

「こら!やめろ」

笑いながらそう言って俺の両手を一掴みにし浮き輪ごと抱き寄せる賢士。
厚い胸板に不覚にもドキドキしてキスしたくなる。

幸いプライベートビーチに他の客はいない。
俺は思いの丈を精一杯込めて顔を上げ、目を閉じる。
端正な顔が少しずつ近づきそのまま・・・

と、思ったら額に衝撃が走った。

「いたっ!なんでおでこ叩くんだよ!」

「間抜けな顔してこっちを見てるからだ」

賢士はそう言うと振り向きもせず俺を置いて波打ち際まで泳いで行ってしまった。

え?なに??
なんで??

いつもなら絶対キスするし何なら水の中でイケナイ事だってしそうなのに・・。

砂浜に上がった賢士はローブを身体に纏い元通りどっかりとチェアに座って酒を煽り出した。

そう言えばキスは病院でしたのが最後だ。
あれから1週間ほど経つが体を休めろと言われてずっとベッドに寝かされてた。

その間は頭を撫でられたくらいでエッチな雰囲気には全くならなかった。

なんでだろう。
チクリと不安が胸を刺す。

せっかくの旅行なのに!
俺はそんな胸の棘をえいっと抜いて海の底に沈めると賢士が待つ砂浜に急いで戻った。

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