【完結】前世は犬と猫! 〜二度目の恋のやり直し〜

ivy

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13.コンクール??

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「お前ら! 全国高校対抗の合唱コンクール、申し込んどいたぞ!」

ガラッと教室のドアを開けて飛び込んできたのは、担任の大葉先生だった。
超マッチョなため肩幅が教室のドアギリギリでいつもハラハラと見守っているんだが、……いやまて?合唱コンクールってなんだ?

「えっ? いつの間に?」
「まだ案内プリントも来てないんだけど」
「やるやるやるー! 楽しそー!」

クラスはいつも通りノリが良い。
ていうか、もう申し込んでるって……やる気ありすぎだろ、大葉先生。

「ちなみに課題曲はこれだ! あと自由曲は好きに選べ! お前らならイケる! 勝てる! やれるぞ青春!」

「熱量すごっ」
「いつも通りすぎて逆に安心するわ」
「てか自由曲なににする?」

そんな空気の中、春人は相変わらず眠たそうな顔で、ぼんやりと窓の外を見ていた。

「なぁ、春人はどのパートがいい?」

俺は久しぶりに春人に声をかけてみた。
避けてたわけじゃないけど、なんとなく気まずくて話しかけられなかったんだ。だから今回、大葉先生には大感謝だ。

春人は少し驚いたように目を大きくしたけど、特に嫌がる様子もなく肩をすくめた。

「どこでもいいけど、俺は高い声の方が出る」

「お、じゃあソプラノだな」

「なんでもいい」

そう答えると春人は、『くわっ』と欠伸をした。
その仕草が、黒猫だったときのままで、懐かしさに胸が詰まる。

……相変わらずバイト三昧なのかな。金を貯めてるって聞いたけど、何をするつもりなんだ?実際、いくらくらいいるんだ? 俺に何かできることはないか?

たくさんの問いかけが頭の中をぐるぐる回るけど、どれも的外れな気がして、ひとつも春人には伝えられなかった。

「みんな! 特別ゲストだ! 音楽の土居先生が来てくれたぞ!」

「……よろしく」

明らかに無理やり連れて来られた感を出している土居先生は、元バイオリニストという異色の経歴の若い男性教師で、その神経質そうな見た目に違わず、なかなかに気難しい人だ。
それを引っ張ってくるなんて、大葉先生の強引さ……いや、人徳は素晴らしい。

「……はい、じゃあまず一節歌ってもらってからパート分けをします。並んでください」

「はーい!」「俺一番!」「あーずるい!」「私が先ね!」

大騒ぎしながら皆が並ぶのを見ていた土居先生は、なぜか「じゃあ最後尾の人から」と予想外の宣言したので、教室はまた大騒ぎとなった。

……土居先生らしいけどな。

「あーうるさい。さっさと始めますよ。じゃ、岡崎春人くん始めて。何でもいいから好きな曲のサビのとこだけ歌って」

「……はい」

最後尾だった春人は、ちょっと悔しそうな顔をしながら前に出る。
へそ曲がりなとこが土居先生と春人って似てるよなと思いながら、俺は静かに聴く体制をとった。

「~~~🎵」

軽く咳払いしたあと、春人は、何の前触れもなく、澄んだソプラノを教室に響かせた。

……めちゃくちゃ上手い。美しすぎて(犬の)耳が立った……ていうか、夜になると空に向かって意味のない鳴き声をあげていたあの頃の鳴き声に似てる。

ほんの数秒。それだけで皆の度肝を抜いた春人は、自分の番は終わったとばかりに席へ戻った。

「え、やば……」
「めっちゃ上手くね?」
「てか声もレベルも高っ!?」「CDかと思ったんだけど!」「岡崎くん、もしかして歌い手?」

クラスがどよめく中、ケイが爆笑しながら言った。

「えっ、ちょっと春人、その声反則じゃん! マジ王子様なんだけど!!」

「……練習した。カラオケで100点出すバイトしたことあるから」

さらっと返す春人。なにそれどこのバイト?しかもそれで100点取れるってお前のスキル、チートじゃない?


「……逸材を見つけた。たまには大葉先生も役に立つ。岡崎くんの声なら、あの曲いけるんじゃないかな」

土居先生がぶつぶつ言いながら考え込んでしまったので、皆は一斉に春人に歌わせたい曲を好き勝手に話しだす。

「よし、曲は決まった。じゃあ次の人」

そうして、組み分け帽よろしく、土居先生はそれぞれのパートを決めると、「楽譜を起こす」と呟いて姿を消した。

「いや、すごいな春人! 俺のためにも歌ってほしいくらいだなぁ!」

「……はぁ? 嫌です」

大葉先生は大笑いして、春人の背中をバシバシ叩いている。
なんだかこんな雰囲気、久しぶりで、この間までの重苦しい空気が軽くなった気がした。

 

数日後、土居先生が持ってきたのは、クラシック系の難易度高めの合唱曲にアレンジを加えた楽譜だった。

「岡崎がセンターで高音パートやったら絶対勝てるよ!」
「この曲なら優勝も見えてきたかも!」
「うちのクラス、天才か???」

ノリと勢いで盛り上がるクラス。
そして、その中心には、気づけば春人が立っていた。

「……なんか、いいな、こういうの」

ふと漏れた俺の言葉に、隣にいた麻央がうなずいた。

「うん。やっぱり楽しいね、みんなで一緒って」

「そうだな。……なんか、俺たち感じ悪かった? ごめんな。二人を避けてたわけじゃなかったんだけど」

「ううん。確かに気まずいよね、グループ内でカップルができちゃうと」

さらりとそう言った麻央に、「ああ、やっぱりな」と思った。
それは、諦めだったり、寂しさだったり、未練だったり──
でも、その中に、二人を祝福する気持ちもちゃんとあって、俺は少しだけ、自分にほっとした。
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