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22.それぞれの普通〜麻央視点〜
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~麻央視点~
「はい、お土産」
そう言って春人が渡してくれたのは、唐辛子の形をしたキャラクターのぬいぐるみだった。
「ありがとう!」
……なぜシーサーでもなくちんすこうでもなく唐辛子?
そう思ったがとても可愛かったので、私は小ぶりなそれをぎゅっと抱きしめる。
「これは私から。温泉まんじゅう。ご家族と食べてね」
「ありがと」
唐辛子と比べたら何の変哲もないありふれたお土産。私はいつもつい無難な方を選んでしまう。
「今日の水族館、わがまま言ってごめんね」
「謝ることない。俺も久しぶりに行きたかった」
……嘘。
この前の沖縄旅行でケイがインスタにちゅら海水族館をあげてた。優しい嘘。こんな所はとても好ましいけど余計に申し訳ない。
二人で電車を乗り継いでお目当ての水族館に。チケットは既に購入されてて、待たされることなく館内に入れた。
「デートもすっかり板についてきたね?かっこいいよ春人」
「……ああ、ありがとう」
ちょっと照れた顔、こんな表情は私しか知らないのかもしれないと思うと少し嬉しい。
「大きいね」
「うん」
「クジラだもんね」
「そうだね」
口数の少ない春人は水族館によく似合う。
私たちはメインの水槽を抜けてふれあいのコーナーにいる小魚たちを眺めた。
「角質を食べてくれるんだって。くすぐったい!」
思わず声を上げて笑った私に、春人もぎこちない笑みを返した。
「元気ないね、沖縄で何かあった?」
戻ってからの春人はどこか変だった。笑顔も少なくなったし、いつも上の空。
この水族館は少し古くて客は少ない。多分人間より魚の方がずっとずっと多いはず。
だからこそ話しやすいんじゃないかと選んだ場所なんだよ、春人。
「……タケルに酷いことを言った」
「どんな?」
春人の顔は見ないように。ただ目の前で優雅に踊るヒレを眺めた。
「……ケイと仲がいいから……。付き合ってるのかって。もしそうなら気持ち悪いからやめた方がいいって」
「気持ち悪い?」
この春人がそんな攻撃的な言葉を?
「……だって普通じゃない。男だったら女の子と……」
タケルを傷つけたんじゃないかって後悔してるんだ。言い淀む口元が可愛らしい。
「謝ったの?」
「……あれから話し出来てない」
春人が少し他の人と違うところがあるのは気が付いてた。
そんな中で春人は私を見つけたんだよね。
多分、彼にとってとても“普通”な私を。
「普通って難しいよね。私もそう言う意味なら普通じゃないよ」
「……麻央は明るくて可愛くてクラスの人気者で……誰より普通の高校生だと思うけど」
「うーん、確かに。でもそれは普通っていうよりテンプレートみたいなもんじゃない?」
「テンプレート?」
「そう。テンプレの上にそれぞれの嗜好や思考、こだわりなんかを追加していくと思うのね。だから普通普通っていうけどおんなじ人なんていないでしょ」
「でも俺は……普通じゃなくて」
「違うのよ、それが“春人”の普通なのよ。人と違って当たり前。ケイだってタケルだってそうよ。もちろん私も」
「……麻央も?」
「うん、うちね、一つ上の生まれつき重度障碍者の兄がいるの。両親は自分たちが死んだ後、兄の面倒を見させるために私を産んだんだって」
「そんな……」
「でもそれが小さい頃から両親に言われてきた私の“普通”なの」
春人は衝撃を受けて呆然としてる。そんなにショックだったかな。ずっと同じことを言われて育ってきたからよくわからない。
「だから春人と付き合ってても結婚は出来ないの。出産もダメって言われてるからね」
「……麻央はそれでいいの?」
「いいわけない!他に方法があるはず。まだ今は無理だけど、いつか独立したらちゃんと自分の人生を生きるつもり。どんな風に変わってもそれも私の“普通”だわ」
「……そっか」
「だから今日で終わりにしましょう?好きにならなかったわよね。お互いに」
私が笑うと春人もぎこちなく笑った。
良かった。次は自分に正直に自由に生きて欲しい。
「なんか……振り回してごめん」
「いいの。楽しかったし。これからも友達としてよろしくね」
「もちろん!」
私たちは手を振って別れ、それぞれの家路を目指した。
……きっと春人は妬きもちを妬いたのね。
春人の好きなのはケイ?それともタケル?どちらにしても全力で応援しよう。
冬の空に一筋光が差した。
まるで私たちを応援してくれてるかのように。
「はい、お土産」
そう言って春人が渡してくれたのは、唐辛子の形をしたキャラクターのぬいぐるみだった。
「ありがとう!」
……なぜシーサーでもなくちんすこうでもなく唐辛子?
そう思ったがとても可愛かったので、私は小ぶりなそれをぎゅっと抱きしめる。
「これは私から。温泉まんじゅう。ご家族と食べてね」
「ありがと」
唐辛子と比べたら何の変哲もないありふれたお土産。私はいつもつい無難な方を選んでしまう。
「今日の水族館、わがまま言ってごめんね」
「謝ることない。俺も久しぶりに行きたかった」
……嘘。
この前の沖縄旅行でケイがインスタにちゅら海水族館をあげてた。優しい嘘。こんな所はとても好ましいけど余計に申し訳ない。
二人で電車を乗り継いでお目当ての水族館に。チケットは既に購入されてて、待たされることなく館内に入れた。
「デートもすっかり板についてきたね?かっこいいよ春人」
「……ああ、ありがとう」
ちょっと照れた顔、こんな表情は私しか知らないのかもしれないと思うと少し嬉しい。
「大きいね」
「うん」
「クジラだもんね」
「そうだね」
口数の少ない春人は水族館によく似合う。
私たちはメインの水槽を抜けてふれあいのコーナーにいる小魚たちを眺めた。
「角質を食べてくれるんだって。くすぐったい!」
思わず声を上げて笑った私に、春人もぎこちない笑みを返した。
「元気ないね、沖縄で何かあった?」
戻ってからの春人はどこか変だった。笑顔も少なくなったし、いつも上の空。
この水族館は少し古くて客は少ない。多分人間より魚の方がずっとずっと多いはず。
だからこそ話しやすいんじゃないかと選んだ場所なんだよ、春人。
「……タケルに酷いことを言った」
「どんな?」
春人の顔は見ないように。ただ目の前で優雅に踊るヒレを眺めた。
「……ケイと仲がいいから……。付き合ってるのかって。もしそうなら気持ち悪いからやめた方がいいって」
「気持ち悪い?」
この春人がそんな攻撃的な言葉を?
「……だって普通じゃない。男だったら女の子と……」
タケルを傷つけたんじゃないかって後悔してるんだ。言い淀む口元が可愛らしい。
「謝ったの?」
「……あれから話し出来てない」
春人が少し他の人と違うところがあるのは気が付いてた。
そんな中で春人は私を見つけたんだよね。
多分、彼にとってとても“普通”な私を。
「普通って難しいよね。私もそう言う意味なら普通じゃないよ」
「……麻央は明るくて可愛くてクラスの人気者で……誰より普通の高校生だと思うけど」
「うーん、確かに。でもそれは普通っていうよりテンプレートみたいなもんじゃない?」
「テンプレート?」
「そう。テンプレの上にそれぞれの嗜好や思考、こだわりなんかを追加していくと思うのね。だから普通普通っていうけどおんなじ人なんていないでしょ」
「でも俺は……普通じゃなくて」
「違うのよ、それが“春人”の普通なのよ。人と違って当たり前。ケイだってタケルだってそうよ。もちろん私も」
「……麻央も?」
「うん、うちね、一つ上の生まれつき重度障碍者の兄がいるの。両親は自分たちが死んだ後、兄の面倒を見させるために私を産んだんだって」
「そんな……」
「でもそれが小さい頃から両親に言われてきた私の“普通”なの」
春人は衝撃を受けて呆然としてる。そんなにショックだったかな。ずっと同じことを言われて育ってきたからよくわからない。
「だから春人と付き合ってても結婚は出来ないの。出産もダメって言われてるからね」
「……麻央はそれでいいの?」
「いいわけない!他に方法があるはず。まだ今は無理だけど、いつか独立したらちゃんと自分の人生を生きるつもり。どんな風に変わってもそれも私の“普通”だわ」
「……そっか」
「だから今日で終わりにしましょう?好きにならなかったわよね。お互いに」
私が笑うと春人もぎこちなく笑った。
良かった。次は自分に正直に自由に生きて欲しい。
「なんか……振り回してごめん」
「いいの。楽しかったし。これからも友達としてよろしくね」
「もちろん!」
私たちは手を振って別れ、それぞれの家路を目指した。
……きっと春人は妬きもちを妬いたのね。
春人の好きなのはケイ?それともタケル?どちらにしても全力で応援しよう。
冬の空に一筋光が差した。
まるで私たちを応援してくれてるかのように。
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