【完結】前世は犬と猫! 〜二度目の恋のやり直し〜

ivy

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24.無くなる意識

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「……まだ、動いてる」

ケイがスマホを睨みながら呟いた。

タクシーは埠頭近くに差し掛かっている。GPSアプリに表示された春人のスマホの位置が、ゆっくりと港の倉庫街に向かって進んでいた。

「この辺、やばそうな倉庫だらけじゃねーか……」

「全部まわるしかねえな。麻央経由で警察にも位置情報共有してるから、すぐに来てくれるはずだし……」

「そんなの待ってられねえ!」

「──あっ!」

ケイが声を上げた。スマホの画面が点滅している。

「……GPSが切れた」

「はっ!?」

「今、あそこの角倉庫の手前で途絶えた。電源切られたか、スマホ捨てられたか……!」

「最悪じゃねぇか……!」

俺は、頭の奥が真っ白になっていくのを感じた。震えそうになる唇を噛みしめ、必死で考える。

「可能性があるのは……GPSが切れる直前のポイント……そこに賭けるしかない!」

「でもどの倉庫かなんて──」

「賭ける!春人が諦めてないって信じて!」

俺たちは走った。どこまでも、必死に。
心臓が壊れそうなほど打ち鳴らす中、叫ぶように倉庫の扉を叩きながら駆け回る。

「はるとーっ!!」

「返事しろー!!どこだ……!!」

倉庫街には誰もいない。辺りは静まり返っている。
風に揺れる古びた鉄扉が、ガタガタと嫌な音を立てた。

「ケイ……見てくれ……あそこ、扉の前に……!」

「スマホ!?」

春人の携帯が、地面に落ちていた。

「近い。絶対このあたりだ!」

「まて、なんか匂いがする」

「匂い?なんだ?」

「春人の匂い」

俺は目を閉じて意識を集中させた。

「ちょ、マジで?そんなとこで犬の能力役に立つの?!」

「……本物の犬じゃないからどこまで使えるか分からんけど……こっちだ!行くぞ!」

「おお!」

確証なんてない。
春人の匂いだって気のせいかもしれない。
でも後悔はしたくない!




~春人視点~



「……ッ、痛……」

鈍い痛みが、頬と背中に走った。

散々抵抗したせいで、殴られて、蹴られて、今は床に転がされてる。

「これ、持って行くだけでいいって言ってんだろ?楽な仕事なんだからさ」

「……絶対にやらない」

「まったく強情だな。届けりゃ終わりなのに」

「……そんな簡単な仕事、他にもできる奴いるだろ。なんで俺なんだよ……」

「怪しまれたら困るんだ。正確に、確実に、あいつを仕留めないと。お前みたいな弱そうなチビが適任なんだよ」

「は?一体どういう……」

「まあ、その辺りは気にすんな。縄張りとか色々あんだよ。よそもんにでかい顔させられないからなあ」

何だって?じゃあその袋には……

「気がついたか?吸ったらあっという間に死んじゃう液体だ。お前も届けたらすぐ逃げないと死ぬぞ」

冗談じゃない……!!まだ死ねない!
まだ、俺は……

脳裏には何でか分からないが、タケルの顔が浮かんだ。
能天気な犬みたいに人懐っこいブラウンの目。
初めて見た時から理由もなく懐かしかった。

あれは一体……。

「あーもう、めんどくせーな。もういい、お前ら、他のやつ探せ」

「けど、……こいつはどうしますか」

「縛って海に放り込め。足に重りつけてな」

「はい!」

ふざけんな!
こんなとこで死んでたまるか!

その時、遠くでタケルの足音がした。
俺を呼ぶ声もする。

俺は全力で息を吸い込む。
そして人生初ってくらいの大声で叫んだ。

「タケルーー!!!!!!」







――ドンッ!!

倉庫の鉄扉が、音を立てて開く。

「──春人ッ!!」

「……えっ?」

息を呑む声が、俺の耳に届いた。

「くそがぁ!!やめろぉ!!」

タケルは叫びながら奴らの真ん中に飛び込んだ。
視界に入った男の肩を、全力で突き飛ばす。
すげーなタケル、こんな時に体がでかいと有利だなあ。
俺は夢でも見てるみたいな気持ちで、その様子をぽかんと見ていた。



「ぐあっ!?」

「触るな!春人に──指一本触れるなッ!」

ケイも来た。
ほんとにこいつらニコイチだな。
気味悪いなんて言って悪かった。お前らお似合いだよ。
ここを出たらちゃんと謝って祝福するからな。

その時、ケイがナイフを持っていた男の腕を蹴り上げた。

「てめぇら、何しやがんだ……!」

「警察はもう来る。今すぐ春人を離せ」

「ちっ……ガキが調子に乗んな!」

その時、パトカーのサイレンが倉庫地帯に響き渡った。

「やべぇ!」

男が袋を持って逃げようとした瞬間、ケイが冷たい目で脚を払った。

ナイス!ケイ!

だが、袋が男の手を離れて地面に転がり、ガチャンと鈍い音を立てて割れた。

「タケル!ケイ!逃げろ!!その薬品の匂いを嗅ぐな!」

「えっ!?」

「わああああ!!!」

さっきまでの威勢はどこへやら、上級生たちも転がるように逃げていく。

「春人!」

「俺はいいから!早く逃げろ!」

「ふざけんな、何のためにここまで来たと思ってんだ!」

タケルは俺を軽々と担ぎあげ、戦車のような勢いで出口を目指す。

ああ、匂いが濃くなってきた……。

「春人!?春人──!!」

タケルの声が遠くに聞こえる。
段々と意識が薄れ、俺はそれっきり気を失った。

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