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26.思い出
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(え?お前なんで犬??)
まあ猫になった俺が言うことでもないが。
そう思った瞬間、俺は目が覚めた。
天井は真っ白で慣れ親しんだ婆さんの家よりずっと綺麗だ。
あれ?俺、どこに連れてこられたんだ?せっかくタケルに会えたのにどうなってんの。
「マジか」
その時、聞いたことのある声がした。こいつは確か友達のケイだ。
……いや待て、猫の俺になんで人間の友達が……?
「春人……!」
あ、タケルだ。
よかった。いてくれて……。
……けど。
「タケル……なんでそんなカッコしてんの?」
まるで人間だ。こいつ、俺を置いて一人で人間に戻ったのか?なんて奴だ。
「え?そんなカッコ?」
タケルが戸惑いの表情を浮かべて、自分の姿を見下ろしている。いつもより眉が下がって情けない顔。
俺、この顔好きなんだよなあ。
ああ、また眠たくなってきた。
まあ俺は猫だもんな。
もうちょっと寝かせてくれ……。
タケルの呼ぶ声を聞きながら、俺は再び眠りの淵へと滑り落ちていった。
◇◇◆◆◇◇
春人が眠り始めて二日目、そろそろ起きてもいいはずという医者の見たてに反して、彼は一向に目覚める様子はなかった。
「なあ、麻央に来てもらうか」
「えっ?いいのかよ、タケル」
「だって二人は恋人同士なんだから麻央だって見舞いに来たいだろ。それに麻央が声をかけたら目が覚めるかもしれないし」
「まあ、確かに。動揺しすぎてすっかり連絡とるの忘れてたもんな」
「……ああ」
俺は気付いてた。何なら真っ先に来てもらうべきだと思ってた。けど仲のいい二人を見る勇気が無かったんだ。
「じゃあ、連絡するけど、本当にいいんだな」
「だって全然目を覚まさないじゃん。麻央が呼んだらきっと目を覚ますよ」
「そっか。じゃあ連絡入れてくるわ」
「頼む」
俺はケイを見送ってから春人の側に寄り添った。
自分の醜い嫉妬心で二人に嫌な気持ちをさせないよう、俺はもう帰ろう。
そして夜にまた来ればいい。
その時に何か必要なものは……。
「……タケル」
「は、春人!」
目が覚めた!春人が!春人の目が覚めた!!
俺は嬉しくて思わず春人に抱き付いた。
「……痛いって。お前図体デカいんだから加減しろよ」
「ごめん!!」
「うるせーって。まったくいつまで経っても変わんねーんだから」
「……?ん?え?」
春人らしからぬ饒舌な毒舌。粗野な口調。
おい、これじゃまるで前世のお前じゃないか。
「タケル、俺を置いて死んだ恨みは深いぞ。なんせ二度もだからな。お前も覚えてんだろ?」
「あ、ああ」
「変だと思ったんだ。最初からやけに馴れ馴れしいし、顔なんて犬だった頃そのままじゃん」
「いや、そこはせめてその前の人間だった時と同じって……あ?全部思い出したのか?」
「ああ、お前がいなくなった後のことも全部な」
その後、連絡を受けた麻央が見舞いに来たので、俺はソワソワしながら様子を見守っていた。
そこで二人が別れたことや、最初から恋愛感情ではなかったことを聞いた。
「まったく、ややこしいことを……」
思わずそう言った俺に、麻央は「春人を責めないでほしい」と困った顔をした。
「……そうだよな、ごめん」
確かに俺が口を出すことじゃ無い。春人は春人で散々悩んで麻央に助けを求めたんだろう。
「麻央は優しいな」
「え?違うよー。私も一緒だったから気持ちは分かるの。それだけよ。それに春人とはずっといい友達でいたいからね」
そう言ってあっさり手を振って麻央は帰って行った。
「……なあ春人」
「なんだ?ケイ」
「お前昨日までと全然違うな。なんかあった?」
ケイ、さすが鋭い。
「ケイ、実は春人は……」
「おい、いいのか」
春人が鋭い声を上げた。
「ああ、ケイには全部話してある。ケイ、春人も前世を思い出したみたいなんだ」
「そうなのか、良かったな!じゃあ積もる話もあるだろうから俺はこれで失礼するよ。助けがいる時は呼んでくれ」
「ありがとう!ほら春人も!」
「……世話かけたな」
「いいってことよ。友達だろ?じゃあまたな」
ケイまでいなくなってしまった病室は、とても静かだ。窓から差し込む西陽が、カーテンを超えて春人に降り注いでいる。
「暑く無いか?」
「ああ、あったかくて気持ちいい」
さすが猫。日向ぼっこ好きだったもんなあ。
「……先に死んでごめんな。人間はともかく、犬と猫の時は本当にお前を置いていくのが心残りで……」
「は?ともかくって何だよ。人間の時だって号泣したわ」
「……本当に?」
「ああ、母さんから知らせを貰ってな。葬式も出たし墓参りだって欠かさなかった」
「……それは、ありがとう」
自分の墓参りのお礼を言うなんて複雑な気持ちだけど。
「猫の時は?あのあと、どうしたんだ?」
「どうもこうも、最悪だったよ」
春人は猫の時みたいに鼻の頭に皺を寄せて俺を見た。
まあ猫になった俺が言うことでもないが。
そう思った瞬間、俺は目が覚めた。
天井は真っ白で慣れ親しんだ婆さんの家よりずっと綺麗だ。
あれ?俺、どこに連れてこられたんだ?せっかくタケルに会えたのにどうなってんの。
「マジか」
その時、聞いたことのある声がした。こいつは確か友達のケイだ。
……いや待て、猫の俺になんで人間の友達が……?
「春人……!」
あ、タケルだ。
よかった。いてくれて……。
……けど。
「タケル……なんでそんなカッコしてんの?」
まるで人間だ。こいつ、俺を置いて一人で人間に戻ったのか?なんて奴だ。
「え?そんなカッコ?」
タケルが戸惑いの表情を浮かべて、自分の姿を見下ろしている。いつもより眉が下がって情けない顔。
俺、この顔好きなんだよなあ。
ああ、また眠たくなってきた。
まあ俺は猫だもんな。
もうちょっと寝かせてくれ……。
タケルの呼ぶ声を聞きながら、俺は再び眠りの淵へと滑り落ちていった。
◇◇◆◆◇◇
春人が眠り始めて二日目、そろそろ起きてもいいはずという医者の見たてに反して、彼は一向に目覚める様子はなかった。
「なあ、麻央に来てもらうか」
「えっ?いいのかよ、タケル」
「だって二人は恋人同士なんだから麻央だって見舞いに来たいだろ。それに麻央が声をかけたら目が覚めるかもしれないし」
「まあ、確かに。動揺しすぎてすっかり連絡とるの忘れてたもんな」
「……ああ」
俺は気付いてた。何なら真っ先に来てもらうべきだと思ってた。けど仲のいい二人を見る勇気が無かったんだ。
「じゃあ、連絡するけど、本当にいいんだな」
「だって全然目を覚まさないじゃん。麻央が呼んだらきっと目を覚ますよ」
「そっか。じゃあ連絡入れてくるわ」
「頼む」
俺はケイを見送ってから春人の側に寄り添った。
自分の醜い嫉妬心で二人に嫌な気持ちをさせないよう、俺はもう帰ろう。
そして夜にまた来ればいい。
その時に何か必要なものは……。
「……タケル」
「は、春人!」
目が覚めた!春人が!春人の目が覚めた!!
俺は嬉しくて思わず春人に抱き付いた。
「……痛いって。お前図体デカいんだから加減しろよ」
「ごめん!!」
「うるせーって。まったくいつまで経っても変わんねーんだから」
「……?ん?え?」
春人らしからぬ饒舌な毒舌。粗野な口調。
おい、これじゃまるで前世のお前じゃないか。
「タケル、俺を置いて死んだ恨みは深いぞ。なんせ二度もだからな。お前も覚えてんだろ?」
「あ、ああ」
「変だと思ったんだ。最初からやけに馴れ馴れしいし、顔なんて犬だった頃そのままじゃん」
「いや、そこはせめてその前の人間だった時と同じって……あ?全部思い出したのか?」
「ああ、お前がいなくなった後のことも全部な」
その後、連絡を受けた麻央が見舞いに来たので、俺はソワソワしながら様子を見守っていた。
そこで二人が別れたことや、最初から恋愛感情ではなかったことを聞いた。
「まったく、ややこしいことを……」
思わずそう言った俺に、麻央は「春人を責めないでほしい」と困った顔をした。
「……そうだよな、ごめん」
確かに俺が口を出すことじゃ無い。春人は春人で散々悩んで麻央に助けを求めたんだろう。
「麻央は優しいな」
「え?違うよー。私も一緒だったから気持ちは分かるの。それだけよ。それに春人とはずっといい友達でいたいからね」
そう言ってあっさり手を振って麻央は帰って行った。
「……なあ春人」
「なんだ?ケイ」
「お前昨日までと全然違うな。なんかあった?」
ケイ、さすが鋭い。
「ケイ、実は春人は……」
「おい、いいのか」
春人が鋭い声を上げた。
「ああ、ケイには全部話してある。ケイ、春人も前世を思い出したみたいなんだ」
「そうなのか、良かったな!じゃあ積もる話もあるだろうから俺はこれで失礼するよ。助けがいる時は呼んでくれ」
「ありがとう!ほら春人も!」
「……世話かけたな」
「いいってことよ。友達だろ?じゃあまたな」
ケイまでいなくなってしまった病室は、とても静かだ。窓から差し込む西陽が、カーテンを超えて春人に降り注いでいる。
「暑く無いか?」
「ああ、あったかくて気持ちいい」
さすが猫。日向ぼっこ好きだったもんなあ。
「……先に死んでごめんな。人間はともかく、犬と猫の時は本当にお前を置いていくのが心残りで……」
「は?ともかくって何だよ。人間の時だって号泣したわ」
「……本当に?」
「ああ、母さんから知らせを貰ってな。葬式も出たし墓参りだって欠かさなかった」
「……それは、ありがとう」
自分の墓参りのお礼を言うなんて複雑な気持ちだけど。
「猫の時は?あのあと、どうしたんだ?」
「どうもこうも、最悪だったよ」
春人は猫の時みたいに鼻の頭に皺を寄せて俺を見た。
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