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31.俺たちの始まり
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それから、ケイの家の弁護士が相続人と連絡を取ってくれて、とんとん拍子に買取のの話が進んだ。
先方も、遠く離れた場所にある不良物件に頭を悩ませていたらしく、思っていたよりもずいぶん安い金額で譲ってくれたのだ。
正式に取引が完了してから、俺と春人はケイの父親に挨拶に行った。
いかにもエリートって感じで、最初は少しとっつきにくかったけど、本当は優しい人のようで、俺たちに「気にしなくていい」と声をかけてくれた。
「理由も言ってないのに……ケイのお父さん、本当に優しいな」
「そうだなぁ。いつも俺のすることに否定的なのに、今回は積極的に動いてくれてありがたかった」
「意外と、ちゃんと話せばわかり合えるんじゃね?」
「どうだろうなぁ……。まぁ、ちょっと他にもいろいろあるから、俺たちもすぐには無理かもな」
──そうか。やっぱり、ケイにもまだ言えないことがあるんだろうな。
外から見ている分には、みんなそれなりに幸せそうに見えるけど……。
実際に中を覗けば、苦労してない人なんて、きっといないんだ。
◇◇◆◆◇◇
それからしばらく経った週末。
ケイの父さんが俺たちに若原の家の鍵を「好きにしていい」と渡してくれた。
まだ全然借金も返せてないのに本当に感謝しかない。
「わあ、この物干し台、錆びてるけど……まだちゃんと立ってる」
「この縁側も、半分くらいは木が腐ってるけど、土台はしっかりしてるな。板さえ張り替えれば何とかなりそう。やっぱ、昔の家って造りがちゃんとしてるよなー」
朽ち果てたと思っていた家が、辛抱強く俺たちを待っていてくれたようで、とても嬉しい。
「あ……」
突然春人は、小さな声をあげて庭の隅に向かって駆け出した。
そしてこんもりと土が盛られた場所に跪き、手を合わせて祈る。
……自分の墓に祈られてるなんて複雑な気分なんだけどな。
「……あれ?その土の上にある白いのなんだ?」
「え?白いの?ああ、……骨だ」
「えっ?!俺の?!」
雨で流れ出たのだろうか。自分の骨とかちょっと見たくないんだけど。
「ううん、違う。これ俺のだ、思い出した。男に蹴られて内臓やられたみたいで動けなくなってさ、お前の墓の上に横になってやり過ごそうと思ってたんだけど……多分そのまま……」
「……埋めよう!」
今からでも同じ墓に入るんだ。
俺は手でガシガシと穴を掘り、そこに小さな小さな骨たちを寄せ集めて埋めた。
「くそっ!マジ許せねー」
「安心しろ、自分の仇は取ったから」
「……確かにそうだけど」
何となく腑に落ちないが、春人はとても頼もしいな。
「よし……じゃあ、玄関を開けるぞ」
「ああ、頼む」
ガチャリ──と、鍵の開く重たい音が響く。
俺たちは緊張で高鳴る胸を押さえながら、ゆっくりと家の中に足を踏み入れた。
部屋の中は、まるで時間が止まっていたかのように、あの頃のままだった。
犬だったころは大きな家だと思ってたけど、人間になった今見ると、天井は低くて、部屋も狭い。
──こんな場所で、俺みたいな大型犬を飼ってたんだから、おばあさんもさぞかし不便だったろうな。
近所の犬たちが外に繋がれてる中で、おばあさんは絶対に俺をそんなふうに扱わなかった。
「冬は寒いし、夏は暑いからね」って言いながら、いつも家の中で一緒にいてくれた。
「……ぐすっ、おばあさん……」
「お前、また泣いてんのかよ」
春人が呆れ声を上げた。
「だってさ……思い出すだろ。ここで、おばあさんがご飯作ってくれたじゃん。夜になるとテレビを見ながら、俺たちのことずーっと撫でてくれててさ。爪切りもブラッシングも、ぜんぶおばあさんがやってくれたんだぞ? 俺……ほんとに、おばあさんのことが大好きだったんだ」
「……ああ、わかってるよ」
最後まで“ワン”としか言えなかったけど──
本当は、ずっと「ありがとう」って言ってたんだよ。気付いてくれてたかな?
この家には、そんなおばあさんの愛情が、まだあちこちに残っている。
「いつまでも泣いてんじゃねーよ。さっさと始めんぞ」
春人が上着を脱いで、窓を大きく開けた。
家具に積もった埃が、きらきらと風に舞って飛んでいく。
掃除道具は近くのホームセンターでひと通り揃えていた。
まずは、玄関まわりと床に積もった埃を掃き出すところからスタートだ。
「よっし、まずはこのボロ雑巾で床を拭いて……」
「え、拭く前に掃いたほうがよくね? 埃で舞い上がったら二度手間だろ」
「……あ、たしかに」
俺は素直に春人の指示に従い、箒を持ち替えた。
「見ろよこれ、ここ、畳の色ぜんぜん違うじゃん。積年の汚れってすげぇな……」
「お前、昔ここで粗相したことあるよな。しかも俺の布団の上で」
「……覚えてたのか」
「絶対忘れねぇよ。地味にトラウマだわ」
春人がククッと笑って、布団を干すために縁側に運び出した。
俺も負けじと雑巾を手に、玄関のたたきを磨き始める。
「でも、懐かしいな。あのときは種族が違うのに妙に意思疎通できてたよな」
「うん。気持ちで話してたんかな」
「だな」
雑巾を絞る音と、ホコリをはらう音。
しばらく無言で掃除に集中していた春人がぽつりとつぶやいた。
「なぁ、ここ全部直せないかな」
「リフォームってことか?」
「ああ。全部業者に任せたら金かかるし。手を動かせば、その分思い出も増えるだろ?」
「悪くないな」
「まずはさ、畳と壁。ふすまも傷んでるし、床もところどころ抜けそうだったしな。あと、水回り……台所の蛇口はたぶん壊れてる。トイレも昭和感やばいし」
「つまり、全部じゃん」
「まぁ、そうなるな」
春人は苦笑しながら天井を見上げる。
埃だらけの梁が、昼下がりの光に照らされて、うっすらと影を落としていた。
「もっと勉強しよう。配線とか設備とか。多分そういうの俺得意だと思う」
俺の本当の父親が設備屋だったからずっと近くで見てたし。将来その道に進んでもいいな。
「マジか。頼もしすぎるだろそれ。じゃあ俺は……内装とインテリア。あとペンキ塗り。美術部にいたから、そういうの得意だし」
「ああ、そうだったな。お前が部室で一人絵を描いてるのこっそり覗きに行ってた」
「え?キモ……」
「酷くね?」
本当にこいつの毒舌は人間だろうが猫だろうが健在だ。
そんなやりとりをしながら、二人で黙々と床を磨く。
窓を全開にした古い家に、新しい風が吹き込んで、積もった想い出がゆっくりと動き出した気がした。
「なぁ、春人」
「ん?」
「……俺たちさ、ここで暮らさねーか?」
「──え?」
「今回、お前が貯めた金全部出してくれただろ?残りの金は俺に出させてよ」
「なんだそれ。まるで同棲しようって言ってるみたいだぞ」
「言ってる。同棲っていうかむしろ結婚して欲しい」
「……は?」
春人が、目を見開いた。
……分かってる。
この間、麻央と話すことがあって、その時に春人が“普通”に固執していることを聞いた。
その普通から随分とかけ離れているこの暮らしを、お前は受け入れられないだろう。
けれど言わずにはいられない。
「──俺、気は長いからさ。お前が納得できるまでいつまでも待つよ」
この家でこんなことを言うのは卑怯かもしれない。
「…………」
春人は、黙って雑巾を動かし始めた。
俺もそれに倣って床磨きの作業に没頭する。
この家と一緒に、自分たちの未来を作っていきたい。
そう思いながら。
先方も、遠く離れた場所にある不良物件に頭を悩ませていたらしく、思っていたよりもずいぶん安い金額で譲ってくれたのだ。
正式に取引が完了してから、俺と春人はケイの父親に挨拶に行った。
いかにもエリートって感じで、最初は少しとっつきにくかったけど、本当は優しい人のようで、俺たちに「気にしなくていい」と声をかけてくれた。
「理由も言ってないのに……ケイのお父さん、本当に優しいな」
「そうだなぁ。いつも俺のすることに否定的なのに、今回は積極的に動いてくれてありがたかった」
「意外と、ちゃんと話せばわかり合えるんじゃね?」
「どうだろうなぁ……。まぁ、ちょっと他にもいろいろあるから、俺たちもすぐには無理かもな」
──そうか。やっぱり、ケイにもまだ言えないことがあるんだろうな。
外から見ている分には、みんなそれなりに幸せそうに見えるけど……。
実際に中を覗けば、苦労してない人なんて、きっといないんだ。
◇◇◆◆◇◇
それからしばらく経った週末。
ケイの父さんが俺たちに若原の家の鍵を「好きにしていい」と渡してくれた。
まだ全然借金も返せてないのに本当に感謝しかない。
「わあ、この物干し台、錆びてるけど……まだちゃんと立ってる」
「この縁側も、半分くらいは木が腐ってるけど、土台はしっかりしてるな。板さえ張り替えれば何とかなりそう。やっぱ、昔の家って造りがちゃんとしてるよなー」
朽ち果てたと思っていた家が、辛抱強く俺たちを待っていてくれたようで、とても嬉しい。
「あ……」
突然春人は、小さな声をあげて庭の隅に向かって駆け出した。
そしてこんもりと土が盛られた場所に跪き、手を合わせて祈る。
……自分の墓に祈られてるなんて複雑な気分なんだけどな。
「……あれ?その土の上にある白いのなんだ?」
「え?白いの?ああ、……骨だ」
「えっ?!俺の?!」
雨で流れ出たのだろうか。自分の骨とかちょっと見たくないんだけど。
「ううん、違う。これ俺のだ、思い出した。男に蹴られて内臓やられたみたいで動けなくなってさ、お前の墓の上に横になってやり過ごそうと思ってたんだけど……多分そのまま……」
「……埋めよう!」
今からでも同じ墓に入るんだ。
俺は手でガシガシと穴を掘り、そこに小さな小さな骨たちを寄せ集めて埋めた。
「くそっ!マジ許せねー」
「安心しろ、自分の仇は取ったから」
「……確かにそうだけど」
何となく腑に落ちないが、春人はとても頼もしいな。
「よし……じゃあ、玄関を開けるぞ」
「ああ、頼む」
ガチャリ──と、鍵の開く重たい音が響く。
俺たちは緊張で高鳴る胸を押さえながら、ゆっくりと家の中に足を踏み入れた。
部屋の中は、まるで時間が止まっていたかのように、あの頃のままだった。
犬だったころは大きな家だと思ってたけど、人間になった今見ると、天井は低くて、部屋も狭い。
──こんな場所で、俺みたいな大型犬を飼ってたんだから、おばあさんもさぞかし不便だったろうな。
近所の犬たちが外に繋がれてる中で、おばあさんは絶対に俺をそんなふうに扱わなかった。
「冬は寒いし、夏は暑いからね」って言いながら、いつも家の中で一緒にいてくれた。
「……ぐすっ、おばあさん……」
「お前、また泣いてんのかよ」
春人が呆れ声を上げた。
「だってさ……思い出すだろ。ここで、おばあさんがご飯作ってくれたじゃん。夜になるとテレビを見ながら、俺たちのことずーっと撫でてくれててさ。爪切りもブラッシングも、ぜんぶおばあさんがやってくれたんだぞ? 俺……ほんとに、おばあさんのことが大好きだったんだ」
「……ああ、わかってるよ」
最後まで“ワン”としか言えなかったけど──
本当は、ずっと「ありがとう」って言ってたんだよ。気付いてくれてたかな?
この家には、そんなおばあさんの愛情が、まだあちこちに残っている。
「いつまでも泣いてんじゃねーよ。さっさと始めんぞ」
春人が上着を脱いで、窓を大きく開けた。
家具に積もった埃が、きらきらと風に舞って飛んでいく。
掃除道具は近くのホームセンターでひと通り揃えていた。
まずは、玄関まわりと床に積もった埃を掃き出すところからスタートだ。
「よっし、まずはこのボロ雑巾で床を拭いて……」
「え、拭く前に掃いたほうがよくね? 埃で舞い上がったら二度手間だろ」
「……あ、たしかに」
俺は素直に春人の指示に従い、箒を持ち替えた。
「見ろよこれ、ここ、畳の色ぜんぜん違うじゃん。積年の汚れってすげぇな……」
「お前、昔ここで粗相したことあるよな。しかも俺の布団の上で」
「……覚えてたのか」
「絶対忘れねぇよ。地味にトラウマだわ」
春人がククッと笑って、布団を干すために縁側に運び出した。
俺も負けじと雑巾を手に、玄関のたたきを磨き始める。
「でも、懐かしいな。あのときは種族が違うのに妙に意思疎通できてたよな」
「うん。気持ちで話してたんかな」
「だな」
雑巾を絞る音と、ホコリをはらう音。
しばらく無言で掃除に集中していた春人がぽつりとつぶやいた。
「なぁ、ここ全部直せないかな」
「リフォームってことか?」
「ああ。全部業者に任せたら金かかるし。手を動かせば、その分思い出も増えるだろ?」
「悪くないな」
「まずはさ、畳と壁。ふすまも傷んでるし、床もところどころ抜けそうだったしな。あと、水回り……台所の蛇口はたぶん壊れてる。トイレも昭和感やばいし」
「つまり、全部じゃん」
「まぁ、そうなるな」
春人は苦笑しながら天井を見上げる。
埃だらけの梁が、昼下がりの光に照らされて、うっすらと影を落としていた。
「もっと勉強しよう。配線とか設備とか。多分そういうの俺得意だと思う」
俺の本当の父親が設備屋だったからずっと近くで見てたし。将来その道に進んでもいいな。
「マジか。頼もしすぎるだろそれ。じゃあ俺は……内装とインテリア。あとペンキ塗り。美術部にいたから、そういうの得意だし」
「ああ、そうだったな。お前が部室で一人絵を描いてるのこっそり覗きに行ってた」
「え?キモ……」
「酷くね?」
本当にこいつの毒舌は人間だろうが猫だろうが健在だ。
そんなやりとりをしながら、二人で黙々と床を磨く。
窓を全開にした古い家に、新しい風が吹き込んで、積もった想い出がゆっくりと動き出した気がした。
「なぁ、春人」
「ん?」
「……俺たちさ、ここで暮らさねーか?」
「──え?」
「今回、お前が貯めた金全部出してくれただろ?残りの金は俺に出させてよ」
「なんだそれ。まるで同棲しようって言ってるみたいだぞ」
「言ってる。同棲っていうかむしろ結婚して欲しい」
「……は?」
春人が、目を見開いた。
……分かってる。
この間、麻央と話すことがあって、その時に春人が“普通”に固執していることを聞いた。
その普通から随分とかけ離れているこの暮らしを、お前は受け入れられないだろう。
けれど言わずにはいられない。
「──俺、気は長いからさ。お前が納得できるまでいつまでも待つよ」
この家でこんなことを言うのは卑怯かもしれない。
「…………」
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この家と一緒に、自分たちの未来を作っていきたい。
そう思いながら。
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