少年愛玩ドール

成瀬瑛理

文字の大きさ
17 / 76
彼の部屋

2

しおりを挟む
 彼は朝方まで一緒に寝てもいいと許可すると、ピノは嬉しそうにベッドに入ってきた。時計は夜中の1時だったので、彼は6時になったらピノを起こそうと思った。ピノはベッドに入るなり直ぐに眠った。彼は隣で寝顔を見ると、少しあきれた顔で微笑んだ。

「――まったくこの子は本当に面白い子だな。無邪気で明るくて素直で可愛い。お前が来てからは色々と沢山驚かされるよ。愛玩ドールか、お前は私の可愛い人形だ。おやすみピノ…――」 

 頬っぺに優しくキスをするとピノを抱き寄せて深い眠りについた。そして、朝方になると彼は腕に違和感を感じてパッと目を覚ました。するとピノがローゼフの腕を眠りながらカジっていた。

「うわぁっ!!」

 その瞬間、ローゼフは驚いて飛び起きた。

「人の腕を噛みつくんじゃない!」

 ローゼフはピノに噛まれた腕をバッと払いのけた。

「う~ん、お肉……」

「ん?」

「お肉……お肉固い……」

 ピノのその言葉にローゼフは、そこでガックリと肩を落とした。

「ピノのヤツ……! 人の腕を肉料理だと思ってカジったな!? 今のは屈辱的だぞ! コラ、今すぐ起きなさい!」

 彼がそう言って声をかけると、部屋のドアが突如ノックされる音が聞こえた。

「ローゼフ様、もう朝でございます! 起床のお時間になりました! さあ、起きて下さい!」

 パーカスの呼び掛けにローゼフは顔が急に青ざめると、時計をバッと見て確認した。


「しまった! この時計は確か10分遅れていたんだ! ピノ今すぐ起きろ!」

 慌てて顔をバシバシ叩くと、ピノは目を覚まして起きた。

「痛いよローゼフ、何するの!?」

「しっ、今すぐ黙れ! とにかくどこかに隠れろ!」

 ローゼフは慌てた様子で右手を引っ張ると、いきなり鞄の中にピノを押し込めようとした。

「さあ、ここに隠れるんだ!」

「痛いよローゼフ! それに鞄の中狭い!」

「ええい、こんな時に駄々をこねるんじゃない! パーカスが部屋に入ってきたら一貫の終わりだ!」

 ローゼフはそう言い返すと、鞄のフタを無理矢理閉めようとした。

「なぜ閉まらない……!? 初めの頃は閉まったはずなのに!?」

「いやぁああああああっ! 鞄の中狭いよーっ!!」

 ピノはそう言って中で騒ぎ始めた。

「黙れピノ! 静かにしてなさい! パーカスに気づかれるだろ!?」

 彼はピノの意思とは関係なく、鞄の中へと無理矢理入れようとした。部屋の中から騒がしい声が聞こえてくると、パーカスが再びドアをノックした。

「ローゼフ様、如何なされましたか?」

 執事がドア越しで彼に声をかけてくると、ローゼフは焦った顔をしながらフタを一生懸命に閉めようとした。

「だめだ……! くっ、こうなったら……!」

 彼のその言葉にピノはとっさに感づいた。

「や、やめてよローゼフ……!」

 ピノは彼にやめてと懇願した。しかし、しローゼフは何かを悟りきった表情でピノの方を見つめた。

「すまんピノ……もうこうするしか方法はないんだ」 

「やめてよローゼフ、それは嫌ぁ!!」

 ピノがそこでぐずると、彼は優しく微笑んで一言謝った。

「許せ……!」 

 そう言った瞬間、彼はおもいっきり右足でフタを真上から踏んづけて閉めた。

「わぁーっ!」

 中ではピノの悲鳴が聞こえた。鞄のフタを無理矢理閉めると、そのまま左側足で鞄を蹴っ飛ばしてベッドの下に慌てて隠した。 

『このひとでなしぃ~っ!!』

 ピノは鞄の中から叫んだ。ローゼフは鞄を急いで隠すと急いでベッドの中に潜った。そして、そのまま何もなかったかのように寝たフリをした。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

先輩アイドルは僕の制服を脱がせ、次のステージへと誘う〈TOMARIGIシリーズ ツバサ×蒼真 #2〉

はなたろう
BL
TOMARIGIシリーズ★ツバサ×蒼真 ​ツバサは大学進学とデビュー準備のため、実家を出て東京で一人暮らしを始めることに。 高校の卒業式が終わると、トップアイドルの蒼真が、満開の桜の下に颯爽と現れた。 ​蒼真はツバサの母に「俺が必ずアイドルとして輝かせます」と力強く宣言すると、ツバサを連れて都内へと車を走らせた。 ​新居は蒼真と同じマンションだった。ワンルームの部屋に到着すると、蒼真はツバサを強く抱きしめた。「最後の制服は、俺の手で脱がせたい」と熱く語る。 ​高校卒業と大学進学。「次のステージ」に立つための新生活。これは、二人の恋の続きであり、ツバサの夢の始まり……

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

イケメンに惚れられた俺の話

モブです(病み期)
BL
歌うことが好きな俺三嶋裕人(みしまゆうと)は、匿名動画投稿サイトでユートとして活躍していた。 こんな俺を芸能事務所のお偉いさんがみつけてくれて俺はさらに活動の幅がひろがった。 そんなある日、最近人気の歌い手である大斗(だいと)とユニットを組んでみないかと社長に言われる。 どんなやつかと思い、会ってみると……

イケメンモデルと新人マネージャーが結ばれるまでの話

タタミ
BL
新坂真澄…27歳。トップモデル。端正な顔立ちと抜群のスタイルでブレイク中。瀬戸のことが好きだが、隠している。 瀬戸幸人…24歳。マネージャー。最近新坂の担当になった社会人2年目。新坂に仲良くしてもらって懐いているが、好意には気付いていない。 笹川尚也…27歳。チーフマネージャー。新坂とは学生時代からの友人関係。新坂のことは大抵なんでも分かる。

見ぃつけた。

茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは… 他サイトにも公開しています

死ぬほど嫌いな上司と付き合いました

三宅スズ
BL
社会人3年目の皆川涼介(みながわりょうすけ)25歳。 皆川涼介の上司、瀧本樹(たきもといつき)28歳。 涼介はとにかく樹のことが苦手だし、嫌いだし、話すのも嫌だし、絶対に自分とは釣り合わないと思っていたが‥‥ 上司×部下BL

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

【完】君に届かない声

未希かずは(Miki)
BL
 内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。  ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。 すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。 執着囲い込み☓健気。ハピエンです。

処理中です...