初雪は聖夜に溶ける

成瀬瑛理

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諸刃

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 胸が悲しくて辛くなるとベッドの上で泣き伏せた。瞳から涙を流すと、大好きな司に裏切られた気持ちで一杯になり、たまらず声をあげて泣き続けた。涙腺が壊れると次から次へと涙が溢れ落ちた。

 深い悲しみに襲われると、セーターを手に取りそれを自らほどいた。毛糸を引っ張るとセーターからは、毛糸が次々にほどけた。まるでそれは今の自分のボロボロになった気持ちみたいだった。

「こんなもの…! こんなセーターなんて…――! 司のバカヤローッ!!」

 グシャグシャになった青いセーターを掴むと、それを持って泣きながらバルコニーに向かった。そして、窓を開けるとそれを外に向かって投げ捨てた。

「こんなもの捨ててやる……!!」

 感情的になると躊躇わずに、セーターを窓から投げ捨てた。一生懸命頑張って編んだセーターは下に回るように落ちていった。そして、想いが弾けて泣き崩れると、堰を切ったように泣き叫んだ。

『わぁあああああああああっつ!!』

 心がちぎれるほど痛くて、ひたすら泣き続けた。セーターをただ捨てただけなのに、自分の気持ちも捨てたように感じると涙が止まらなかった。司への愛がこぼれると俺は泣き崩れたまま、彼の名前を無意識に呼んだ。

『司、司っ……!!』

 悲しくて辛くて何度も泣いた。それなのにまだ涙が止まらなかった。心が張り裂けそうで、苦しくて胸が痛かった。震えた体を両腕で抱き締めると、彼の事を思った。



「司どうして…! 俺を捨てないで…――!」



 12月の寒さは、心の奥まで冷たく凍らせた――。


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