12 / 172
プロローグ
月光教の取り決め!ってなんですか?
しおりを挟む
「さて、それじゃあ入信の儀式なんだが」
エトナーの言葉に、ルナは身構える。しかし・・・
「特にない」
「えっ」
「特にないの」
「ええっ」
ガビーン、といった様子のルナ。エトナーはニヤニヤしている。
「強いて言えば、日光教の教会に入るときとかに合言葉を言えばいい感じだ」
「合言葉だけでいいんですか?」
「神々との契約を含んだ言霊でな。悪用しようとすると頭に雷が落ちてくる」
「こわい・・・」
ルナがひゃー、と怖がる素振りを見せると、エトナーは噴き出した。
「合言葉っても、私ら聖職者の立ち合いの元に、お前さんを神様に面通しする感じでもある」
「すごい・・・!」
(一々可愛いなコイツ・・・)
むーん!とよくわからないリアクションのルナに、エトナーは小動物的な雰囲気を感じていた。
人畜無害な感じがよく似合う彼女が、なぜ悪魔になる必要があったのか――
それを知る日は、そう遠くないだろう。
そう、エトナーは考えていた。
(どうしても気になったらルルイエを締め上げればいいしな)
そう思いながら、エトナーは手をかざす。すると何処からともなく杖が出現し、彼女の手に収まった。
杖は無骨な金属の棒で、先端近くに左右へ返しのように伸びた棒があり、十字を描いている。
「おおー」
「カッコいいだろ?」
こくこくと頭を振るルナに、エトナーは自分で言っておきながらちょっと恥ずかしくなった。
大抵、相手は呆れるやら何やら反応するのだが、彼女の真っ直ぐな瞳が眩しい。
こういった子の前で、余計なことはするべきではないのかもしれない。
「さて、お前さんに合言葉の伝授と行こう。太陽と月の神の御前である!」
杖で床を叩くと、ルナはまるで弾かれたように直立した。
驚いて目を瞬かせている彼女を見て、一瞬エトナーはほほ笑んだが、すぐに真面目な顔になってつづけた。
「この言葉を、その心に焼き付けよ。これが、そなたの身の証とならん!」
エトナーがそう言うと、口を動かしたが、言葉が発せられず、空間に文字が浮かんだ。
”月は太陽の光を受けて輝き、慈悲の光を持って天地を包む”
「『眠りと安らぎ、その安寧の坩堝に満ちる光は月光である』」
途中から、二人の言葉が重なり、ルナは再び驚いた。
「勝手にしゃべっちゃった・・・!」
「はい、おつかれさん。これでお前さんは、日光教の司祭や月光教の司祭に求められると、自然にそう答えるようになってる」
「そうなんですか?」
「ああ、そういうもんなの」
そう言うと、エトナーはそのまま椅子にどっかりと座って息を吐いた。
「あー、ちかれた・・・」
「大丈夫ですか?」
エトナーは、よく見るとうっすらと汗をかいている。
「あんまし。二日酔いなのもそうだけど、これ本来は神器とかで補助してやるんだぜぇ」
「えっ、じゃあなんでそんな無茶を・・・?」
「だって、めんどくせえもん」
心配しているルナに対して、この言い草である。
「神器借りるの手続きめんどいし、そうなると司祭とかに話通す必要あるしな。お前さんの説明もめんどくせえし」
「でもそれじゃあ面通しにならないんじゃ・・・」
「その首にかけてるのが十分に証拠になるよ。日光教のシンボルあしらってるし、それで日光教アンチとかありえねえから」
ってかそれ私が作ったヤツだろ、とエトナ―は言う。
「そうなんですか?」
「うん、割と力のある悪魔でも封じ込められるタイプの奴。それつけて平気な顔してるってことは結構高位な悪魔だな」
「そうなんだ、これそんなに凄い奴だったんだ・・・」
「それつけてて、さっきの合言葉があれば「自分は日光教か月光教の信者です!」って言えるワケだから」
ルナは首に下げた護符を両手でそっと握った。そこに施された日光教の紋様が、夕暮れの斜光にかすかにきらめいている。
「じゃあ・・・私はこれで、家に戻りますね」
「ん、暗くなる前に帰れよー」
軽く手をひらひらと振るエトナ―は、再びベンチに腰を落としながらルナの背中を見送った。靴音が遠ざかるにつれ、彼女の視線が少しずつ細くなる。
「・・・さて」
口の端を持ち上げ、エトナ―は独りごちた。
「あれだけの代物を首から下げて平気な顔・・・いや、あの反応、むしろ本気で知らなかったな。封呪の仕組みも何も・・・」
風に揺れる樹々の隙間から、ルナの姿がちらちらと見え隠れしている。その背中を目で追いながら、エトナ―は足を組み替える。
「信仰は日光教・・・でもって月光教にも縁ができた。こりゃあ面白くなってきた・・・」
ルナの姿が完全に見えなくなったところで、エトナ―は息を一つ吐いた。酔いの残る頭をかすかに揺らしながら、口の中で短く笑う。
「ルルイエ・・・お前いったい何する気だ?」
その問いは、誰にも聞こえない。
ただ、沈みかけた陽の中に吸い込まれていった。
エトナーの言葉に、ルナは身構える。しかし・・・
「特にない」
「えっ」
「特にないの」
「ええっ」
ガビーン、といった様子のルナ。エトナーはニヤニヤしている。
「強いて言えば、日光教の教会に入るときとかに合言葉を言えばいい感じだ」
「合言葉だけでいいんですか?」
「神々との契約を含んだ言霊でな。悪用しようとすると頭に雷が落ちてくる」
「こわい・・・」
ルナがひゃー、と怖がる素振りを見せると、エトナーは噴き出した。
「合言葉っても、私ら聖職者の立ち合いの元に、お前さんを神様に面通しする感じでもある」
「すごい・・・!」
(一々可愛いなコイツ・・・)
むーん!とよくわからないリアクションのルナに、エトナーは小動物的な雰囲気を感じていた。
人畜無害な感じがよく似合う彼女が、なぜ悪魔になる必要があったのか――
それを知る日は、そう遠くないだろう。
そう、エトナーは考えていた。
(どうしても気になったらルルイエを締め上げればいいしな)
そう思いながら、エトナーは手をかざす。すると何処からともなく杖が出現し、彼女の手に収まった。
杖は無骨な金属の棒で、先端近くに左右へ返しのように伸びた棒があり、十字を描いている。
「おおー」
「カッコいいだろ?」
こくこくと頭を振るルナに、エトナーは自分で言っておきながらちょっと恥ずかしくなった。
大抵、相手は呆れるやら何やら反応するのだが、彼女の真っ直ぐな瞳が眩しい。
こういった子の前で、余計なことはするべきではないのかもしれない。
「さて、お前さんに合言葉の伝授と行こう。太陽と月の神の御前である!」
杖で床を叩くと、ルナはまるで弾かれたように直立した。
驚いて目を瞬かせている彼女を見て、一瞬エトナーはほほ笑んだが、すぐに真面目な顔になってつづけた。
「この言葉を、その心に焼き付けよ。これが、そなたの身の証とならん!」
エトナーがそう言うと、口を動かしたが、言葉が発せられず、空間に文字が浮かんだ。
”月は太陽の光を受けて輝き、慈悲の光を持って天地を包む”
「『眠りと安らぎ、その安寧の坩堝に満ちる光は月光である』」
途中から、二人の言葉が重なり、ルナは再び驚いた。
「勝手にしゃべっちゃった・・・!」
「はい、おつかれさん。これでお前さんは、日光教の司祭や月光教の司祭に求められると、自然にそう答えるようになってる」
「そうなんですか?」
「ああ、そういうもんなの」
そう言うと、エトナーはそのまま椅子にどっかりと座って息を吐いた。
「あー、ちかれた・・・」
「大丈夫ですか?」
エトナーは、よく見るとうっすらと汗をかいている。
「あんまし。二日酔いなのもそうだけど、これ本来は神器とかで補助してやるんだぜぇ」
「えっ、じゃあなんでそんな無茶を・・・?」
「だって、めんどくせえもん」
心配しているルナに対して、この言い草である。
「神器借りるの手続きめんどいし、そうなると司祭とかに話通す必要あるしな。お前さんの説明もめんどくせえし」
「でもそれじゃあ面通しにならないんじゃ・・・」
「その首にかけてるのが十分に証拠になるよ。日光教のシンボルあしらってるし、それで日光教アンチとかありえねえから」
ってかそれ私が作ったヤツだろ、とエトナ―は言う。
「そうなんですか?」
「うん、割と力のある悪魔でも封じ込められるタイプの奴。それつけて平気な顔してるってことは結構高位な悪魔だな」
「そうなんだ、これそんなに凄い奴だったんだ・・・」
「それつけてて、さっきの合言葉があれば「自分は日光教か月光教の信者です!」って言えるワケだから」
ルナは首に下げた護符を両手でそっと握った。そこに施された日光教の紋様が、夕暮れの斜光にかすかにきらめいている。
「じゃあ・・・私はこれで、家に戻りますね」
「ん、暗くなる前に帰れよー」
軽く手をひらひらと振るエトナ―は、再びベンチに腰を落としながらルナの背中を見送った。靴音が遠ざかるにつれ、彼女の視線が少しずつ細くなる。
「・・・さて」
口の端を持ち上げ、エトナ―は独りごちた。
「あれだけの代物を首から下げて平気な顔・・・いや、あの反応、むしろ本気で知らなかったな。封呪の仕組みも何も・・・」
風に揺れる樹々の隙間から、ルナの姿がちらちらと見え隠れしている。その背中を目で追いながら、エトナ―は足を組み替える。
「信仰は日光教・・・でもって月光教にも縁ができた。こりゃあ面白くなってきた・・・」
ルナの姿が完全に見えなくなったところで、エトナ―は息を一つ吐いた。酔いの残る頭をかすかに揺らしながら、口の中で短く笑う。
「ルルイエ・・・お前いったい何する気だ?」
その問いは、誰にも聞こえない。
ただ、沈みかけた陽の中に吸い込まれていった。
0
あなたにおすすめの小説
勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~
楠ノ木雫
ファンタジー
IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき……
※他の投稿サイトにも掲載しています。
異世界あるある 転生物語 たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?
よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する!
土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。
自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。
『あ、やべ!』
そして・・・・
【あれ?ここは何処だ?】
気が付けば真っ白な世界。
気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ?
・・・・
・・・
・・
・
【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】
こうして剛史は新た生を異世界で受けた。
そして何も思い出す事なく10歳に。
そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。
スキルによって一生が決まるからだ。
最低1、最高でも10。平均すると概ね5。
そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。
しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。
そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで
ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。
追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。
だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。
『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』
不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。
そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。
その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。
前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。
但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。
転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。
これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな?
何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが?
俺は農家の4男だぞ?
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
底辺から始まった俺の異世界冒険物語!
ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。
しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。
おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。
漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。
この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる