悪魔になったらするべきこと?

ファウスト

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プロローグ

帰りがけでの出来事、彼の名はアダム・ディーン!

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ルナは帰宅中に思わず呟いていた。

「聞いた通りの人だった・・・」

飲んだくれていて、ぶっきらぼうで、それでいて聖職者だった。
全部が全部、ほぼほぼ彼女のことだった・・・とルナは思う。
片鱗も見せていない気がするが彼女の実力はなんとなく、とんでもない気がしていた。

「もし、君は魔法学校の生徒かな?」

ぼんやりと歩いていたルナに声が掛かった。周囲を見てみるが人影がない。
まさかそんなはずはと思い、振りかえってみてもいない。

「?」

首を傾げながら前を向くといつの間にか中年の男性が立っていた。

「ぴっ!」
「鳥か」

飛び上がったルナを見て男性は笑いながら呟いた。 

「びっくりした・・・」
「すまんね、ところで先ほども聞いたが君は魔法学校の?」
「そ、そうですけど・・・」
「私は魔法学校の教師をしているアダム・ディーンというが、ルナ・フラウステッド君でよかったかな」

アダムと名乗った男性はニコニコしている。魔法学校の先生と言うのでルナは不思議に思いつつもアダムの問いかけに頷いた。

「コロン・・・校医の先生から話は聞いておらんかな、おそらく私が君の担任になると思うんだが」
「あ、じゃあ先生がFクラスの?」
「そうなるな、まあ帰りながら話そう」

アダムはそう言うとルナに歩き出すように促し、話始めた。

「早速で悪いが君の事を少しばかり調べさせてもらったよ」
「私のこと・・・?」
「お父さんのことで大変な目に遭っているようだな」
「それは・・・」

父親のこと、それを聞いてルナは表情を暗くした。そんな彼女をみてアダムは言う。

「色々と勘違いして欲しくないのだが私は君が悪いとか、君のお父さんをどうこうしたくて言っているわけではないよ」
「・・・」
「実のところを言うと今回の事に私はかなり怒っていると言っていい」
「怒ってる?」

アダムはルナの言葉に大きく頷いた。そして足元の石ころを蹴っ飛ばした。

「大人の都合を子供に押し付けるような事を教師が許してはいかんとな」

蹴っ飛ばした石ころが何かに当たる音がして、アダムはふん。と鼻を鳴らした。

「学校は君のような子を見捨てたりはしない、困ったことがあったらいつでも言いなさい」
「はい、ありがとうございます!」

ルナの表情が少し明るくなったのを見てアダムも笑みを浮かべて頷く。

「それじゃあ、学校でな」
「はい!・・・あれ、いない」

歩きながら話していたせいか、少しアダムの前に出たルナが返事をしながら振り返るとそこにはもうアダムの姿はなかった。




ルナが首を傾げながら帰る最中、路地裏にアダムの影が差した。

「魔法局の、それもギュント家の使い走りがこんなところで何をやっている?」
「あ、ぐぐ・・・」

蹴飛ばした石の先には見知らぬ男性が倒れており、ルナを監視していたらしかった。アダムはルナと歩いている際に視線に気づいて咄嗟に石を蹴飛ばしたのである。

「魔法局の、それもギュント家の一派と知っていてこのような事がゆるされると思っているのか・・・」
「・・・まさか本当にギュント家の子分だったとはな。迂闊な奴め」

石が当たった場所をさすりながら答える男性にアダムはとぼけたように答える。
男性は自分が問われるまでもなく自分の所属を喋ってしまったことに気付き顔をしかめる。

「お前の主人に伝えておけ、魔法学校は貴様らごときの脅しに屈したりはせん。生徒に手を出したら」

指のわずかな動きと共に礫が飛び、男の頬を掠めて壁に罅を作った。

「”不幸な事故”が起こるぞ。これは脅しじゃない」

そう言うとアダムは踵を返した。男は痛みと恐怖で目を瞬かせたが数回目の瞬きの間にアダムは姿を消した。




翌日。
ギュント家の応接間は昼下がりの柔らかな光に包まれていたが、その空気はどこか張り詰めていた。
ガスタンは深々と椅子に腰掛け、掌のグラスをゆっくりと回す。琥珀色の液面が揺れ、その視線はただ静かに部下を射抜いていた。

「・・・で?」
低く押さえた声に、部下は緊張で背筋を伸ばす。

「フラウステッドの娘が追試に合格しました」

その一言に、ガスタンの指先が止まる。
氷の溶ける音だけが、短い沈黙を裂いた。

「・・・ほう。倒れるはずの娘が、ね」

ゆっくりと笑う。だがその笑みは、口元だけが形を作り、目はまるで凍りついている。

「はい。加えて、昨日は日光教の教会に立ち寄っています」
「教会?」
「ええ、そしてその後・・・エトナーという聖職者と接触。さらに――」

部下は一瞬言い淀む。

「・・・アダム・ディーンという魔法学校の教師に尾行を気取られ、接触を阻まれました」

ガスタンは片眉をわずかに上げ、グラスを机に置く。

「・・・ディーンだと? あの昼行燈が、わざわざ邪魔を?」

口調は淡々としているが、その奥で歯車が高速に回っているのが見えるようだった。

「はい、ただの偶然かは・・・」
「偶然で片付けるには都合が良すぎるな」

ガスタンは椅子から身を乗り出す。

「追試合格、教会、聖職者との接触、そして学校側の人間が動く・・・。」

その視線は遠くを見据えていたが、次に部下を見下ろした時には、氷のような光が宿っていた。

「――監視を続けろ。あの娘、まだ隠し玉を持っているぞ。潰すなら、全てを吐き出させてからだ」

部下が頷き、静かに部屋を去る。
ガスタンはグラスを再び持ち上げ、揺れる液面に自らの笑みを映した。

「フラウステッド・・・お前の娘は、随分と愉快な仲間を持っているようだな」
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