43 / 172
新学期
旧館の掃除は進む
しおりを挟む
ルルイエはルナがハンドベルを自身の服にアクセサリーのように結んで落とさないようにしたのを見て嬉しそうに頷くと
「それじゃまたねー」
と歩いていってしまった。ルナは唐突に現れては立ち去った師に呆気にとられつつも空腹を優先して帰宅した。
「おかえりなさい、学校はどうだった?」
「私達は本館から溢れて旧館を使うみたい」
「旧館?あれって何年も使われてなかったんじゃ?」
家に戻るとアリシアが昼食の準備をしていた。どうやら茹でたマカロニにたっぷりチーズ、それを山盛りとパンとサラダのようだ。
「うん、だから皆で掃除してた。お昼食べたらまた戻って手伝ってくる」
「あらあら、掃除も自分たちでしないといけないの?大変ねぇ」
置いたそばから目減りしていく昼食にアリシアは夫の姿を幻視しつつ黙って追加を用意する。夫のエルドは今でこそ控えめだが悪党と殴りあっていた時は食事の度にパンを一斤丸かじりしていたような男である。ルナにその血が流れていることにアリシアは嬉しいような悲しいような複雑な気持ちだ。
「ご馳走様!じゃあまた行ってくるね!」
「はーい、気をつけてね」
アリシアは立ち上がってパタパタと走っていく娘を見送りながら食卓に戻るとため息をついた。
「あの人の一族って皆こんなにたべるのかしら・・・」
パンを入れていた籠が空になっていた。親族の寄り合いではエルド達の一族とお酒はともかく真っ当に食事をしたことが無かったような気がしていた。
しかしながら女の子のルナですらこれである。エルドのような男兄弟の多い所帯だとどうなるのだろうか。
もしかすると食事の席だととんでもないことになるから避けていたのかもしれない。
アリシアは食べても居ないのに食欲が失せそうだった。
「戻りましたぁ」
「おー、すまんな」
ルナが戻るとアダムがゴミの入った袋を荷車に乗せている所だった。その後ろではティナとクロエ、ダズが箒と雑巾を手に奮闘している。上手くすれば今日の内に寮の一部は使えるようになるかもしれない。
「それじゃ私も手伝ってきますね」
「うむ、頼んだ」
そうして四人に増えた人手で寮の掃除はそれなりに捗った
「うがー!もう無理!暇過ぎ!」
「ちょ、ティナちゃん!」
と思ったらこれである。午前中はギリギリ真面目にしていたティナが音を上げた。教室はともかく、実家通いのティナは寮の掃除の手伝いまではするつもりが無かったのかもしれない。
「・・・流石に私も疲れました」
「そうだねぇ、皆はもう切り上げたらどうかなぁ」
ダズはルナ含めた三人が朝イチから掃除をしていることを知っていたのでティナの不満顔にも鷹揚に応えている。
見た目通りののんびりした性格がそうさせるのかもしれないが。
「えー、でもそれだと寝泊まりするの辛くない?」
「夜まで頑張れば僕一人でももう一部屋くらいはできると思うよ?」
「クロエと二人としてもやっぱ面倒でしょ、まああと一部屋目途に頑張るって」
そう言いながらティナは箒を持ち直した。なんだかんだで良い子のようだ。
「ちゃちゃっと終わらせよー」
数時間後、時刻が夕方に近づいたころ二部屋の掃除が完了し、クロエとダズの部屋ができた。
「・・・ふふふ、ヒトリジメだね」
「二部屋でほぼ全員が入れるの流石に少ないね」
ルナとティナは実家から、今日来れていない三人は遠路からということなので必然的に
「残りはサボったのかよ!」
「ひどい話だね」
ルナ、ティナ、クロエ、ダズ、そして遠路もしくは病欠の三人、そしてまだ見ぬ四人。
とりあえずこの三人とは仲良くやれそうなのでルナは内心ホッとしていた。
「んじゃ寝る準備するか・・・その後で食事の準備かな」
「そういえば厨房はまだ掃除してなかった・・・」
「明日やればいいじゃん、今日は学園の食堂つかえよなー」
どーせ食材もないっしょ?とはティナの言。それは確かにそうなので皆は今日はここらへんで掃除を切り上げることに。
「んじゃまた明日かな?授業はどーなってるんだっけ?」
「本格的に始めるのはもうちょい先だ。旧館の設備をフルに使える都合上ワシらは結構余裕があるんだ」
掃除がついてまわるがなー、とゴミ捨てを終えたアダムが声を掛ける。
「ほかの七人はどんな人なんだろ?中等部で会ったことある人だったかな・・・?」
「えー、まともに授業受けてたらFこなくね?あーしみたいに試験で火じゃなくて雷出ちゃった奴とかそうそういないっしょ?あれで一回不合格なってんのよなー」
「私も霧が出た・・・マジで意味不明。つらみ・・・」
固有組は意図せぬ魔法が出たせいで試験を一回で合格できなかったようだ。ダズは笑顔を浮かべながら言う。
「僕は寝坊ですねぇ、直前まで土の魔法の鍛錬をしてたら昼夜の感覚が狂っちゃって。穴倉にいたのがわるかったかなぁ」
「寝坊・・・私は体調不良で倒れて不合格でした。そこから再試験でなんとか」
四人は奇しくも魔法の実力とは無関係で実技試験を一発合格できなかったようだ。それを知って四人はなんとなく連帯感を感じていた。
「それじゃまたねー」
と歩いていってしまった。ルナは唐突に現れては立ち去った師に呆気にとられつつも空腹を優先して帰宅した。
「おかえりなさい、学校はどうだった?」
「私達は本館から溢れて旧館を使うみたい」
「旧館?あれって何年も使われてなかったんじゃ?」
家に戻るとアリシアが昼食の準備をしていた。どうやら茹でたマカロニにたっぷりチーズ、それを山盛りとパンとサラダのようだ。
「うん、だから皆で掃除してた。お昼食べたらまた戻って手伝ってくる」
「あらあら、掃除も自分たちでしないといけないの?大変ねぇ」
置いたそばから目減りしていく昼食にアリシアは夫の姿を幻視しつつ黙って追加を用意する。夫のエルドは今でこそ控えめだが悪党と殴りあっていた時は食事の度にパンを一斤丸かじりしていたような男である。ルナにその血が流れていることにアリシアは嬉しいような悲しいような複雑な気持ちだ。
「ご馳走様!じゃあまた行ってくるね!」
「はーい、気をつけてね」
アリシアは立ち上がってパタパタと走っていく娘を見送りながら食卓に戻るとため息をついた。
「あの人の一族って皆こんなにたべるのかしら・・・」
パンを入れていた籠が空になっていた。親族の寄り合いではエルド達の一族とお酒はともかく真っ当に食事をしたことが無かったような気がしていた。
しかしながら女の子のルナですらこれである。エルドのような男兄弟の多い所帯だとどうなるのだろうか。
もしかすると食事の席だととんでもないことになるから避けていたのかもしれない。
アリシアは食べても居ないのに食欲が失せそうだった。
「戻りましたぁ」
「おー、すまんな」
ルナが戻るとアダムがゴミの入った袋を荷車に乗せている所だった。その後ろではティナとクロエ、ダズが箒と雑巾を手に奮闘している。上手くすれば今日の内に寮の一部は使えるようになるかもしれない。
「それじゃ私も手伝ってきますね」
「うむ、頼んだ」
そうして四人に増えた人手で寮の掃除はそれなりに捗った
「うがー!もう無理!暇過ぎ!」
「ちょ、ティナちゃん!」
と思ったらこれである。午前中はギリギリ真面目にしていたティナが音を上げた。教室はともかく、実家通いのティナは寮の掃除の手伝いまではするつもりが無かったのかもしれない。
「・・・流石に私も疲れました」
「そうだねぇ、皆はもう切り上げたらどうかなぁ」
ダズはルナ含めた三人が朝イチから掃除をしていることを知っていたのでティナの不満顔にも鷹揚に応えている。
見た目通りののんびりした性格がそうさせるのかもしれないが。
「えー、でもそれだと寝泊まりするの辛くない?」
「夜まで頑張れば僕一人でももう一部屋くらいはできると思うよ?」
「クロエと二人としてもやっぱ面倒でしょ、まああと一部屋目途に頑張るって」
そう言いながらティナは箒を持ち直した。なんだかんだで良い子のようだ。
「ちゃちゃっと終わらせよー」
数時間後、時刻が夕方に近づいたころ二部屋の掃除が完了し、クロエとダズの部屋ができた。
「・・・ふふふ、ヒトリジメだね」
「二部屋でほぼ全員が入れるの流石に少ないね」
ルナとティナは実家から、今日来れていない三人は遠路からということなので必然的に
「残りはサボったのかよ!」
「ひどい話だね」
ルナ、ティナ、クロエ、ダズ、そして遠路もしくは病欠の三人、そしてまだ見ぬ四人。
とりあえずこの三人とは仲良くやれそうなのでルナは内心ホッとしていた。
「んじゃ寝る準備するか・・・その後で食事の準備かな」
「そういえば厨房はまだ掃除してなかった・・・」
「明日やればいいじゃん、今日は学園の食堂つかえよなー」
どーせ食材もないっしょ?とはティナの言。それは確かにそうなので皆は今日はここらへんで掃除を切り上げることに。
「んじゃまた明日かな?授業はどーなってるんだっけ?」
「本格的に始めるのはもうちょい先だ。旧館の設備をフルに使える都合上ワシらは結構余裕があるんだ」
掃除がついてまわるがなー、とゴミ捨てを終えたアダムが声を掛ける。
「ほかの七人はどんな人なんだろ?中等部で会ったことある人だったかな・・・?」
「えー、まともに授業受けてたらFこなくね?あーしみたいに試験で火じゃなくて雷出ちゃった奴とかそうそういないっしょ?あれで一回不合格なってんのよなー」
「私も霧が出た・・・マジで意味不明。つらみ・・・」
固有組は意図せぬ魔法が出たせいで試験を一回で合格できなかったようだ。ダズは笑顔を浮かべながら言う。
「僕は寝坊ですねぇ、直前まで土の魔法の鍛錬をしてたら昼夜の感覚が狂っちゃって。穴倉にいたのがわるかったかなぁ」
「寝坊・・・私は体調不良で倒れて不合格でした。そこから再試験でなんとか」
四人は奇しくも魔法の実力とは無関係で実技試験を一発合格できなかったようだ。それを知って四人はなんとなく連帯感を感じていた。
0
あなたにおすすめの小説
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
底辺から始まった俺の異世界冒険物語!
ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。
しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。
おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。
漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。
この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――
勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~
楠ノ木雫
ファンタジー
IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき……
※他の投稿サイトにも掲載しています。
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる