悪魔になったらするべきこと?

ファウスト

文字の大きさ
44 / 172
新学期

教師としては見過ごせない

しおりを挟む
アダムはルナ達が仲良く話しているのを微笑ましく見ていたが名簿に目を通すと来ていない四人のうちの一人に心当たりがあり、彼らに暗くなる前に帰るよう声を掛けてから旧館を後にした。


「こんなところで何をしてるんだ?」

アダムはそう言いかけた言葉を止めて蹲っている学生に歩み寄った。

「大丈夫か?」
「・・・」

びしょ濡れの姿で蹲っていたのはFクラスの生徒だった。服に付けているワッペンがある。魔法学校では固有魔法などの性質によって着られる服が限られる者もいるため制服の規定はない。
そのためクラスを示すものは腕章やアクセサリー、ワッペンなど様々だ。アダムは事前に調べていた名簿の名前から生徒がFクラスの一員であるマリー・クライグスだとわかった。

「ここに居たら風邪をひくぞ、旧館に来い。そこで服が乾くまで待ってるといい」

マリー・クライグスはアダムの手を取ると泣きながらアダムに着いて歩いた。

(なんとつまらん話だ、クラスの序列がまだ残ってるとはな・・・)

アダムはかつてこの学校に在籍していた友人のコロンのことを思い出していた。彼もまた実技試験を一度で突破できずに当時の末尾のクラスであるGクラスに入った。アダムはその際にもコロンがいらぬ苦労をしていたことを知っていた。

教師として入ってから長くその根絶に気を使ってきたはずだった。

「つまらんな、Aクラス以外は関係ないのに」
「・・・じゃあAは意味あるんですか?」
「ああ、一番に試験を受けて、一番の成績を出して、固有の魔法を持っていたりする」
「A以降は?」
「受付の順番だよ、これは校長も言ってるし職員の間でもそう決まってる」

実技で足踏みしたり病気だったりすると受付が最後になるから末端のクラスになるだけだ。とアダムは言う。

「いいか、お前がFクラスだからってバカにするやつの言葉を真に受けるな」
「・・・」
「実のところを言うとな、ウチのクラスにとんでもない奴がいるんだ」
「とんでもない・・・?」
「いずれわかるかもしれん、まあ楽しくやれ。旧館の設備は使いたい放題だからな」
「わかりました・・・」

生徒はそう言うと少しだけ落ち着いた様子で旧館へと足を向けた。アダムはそれに連れそうように歩いていたがマリーがふと、足を止めた。

「あ、鞄・・・」
「鞄?」
「持ってきた鞄を落としました・・・」
「どんな鞄だ?」
「教科書と、筆記用具が入った・・・青の・・・鞄です」
「わかった、ワシがまず探しておこう。君は先に服を乾かしてきなさい」

アダムは笑顔でそう言うとマリーを旧館に送り届けて、自身は再びマリーが蹲っていた場所に戻ってきた。

「落とした・・・か、嘘が下手だな」

アダムは躊躇い勝ちにそういったマリーの姿を見て内心で歯を軋らせた。途中で高い木に引っ掛けられている鞄を見つけたからだ。教科書は地面に散らばっており、どれも踏んづけた跡があった。

「まったく、こんなことをするとは許せんな」

木を蹴って飛び上がるとアダムは引っかけられた鞄を枝から外した。そして教科書の足跡を払って鞄に詰めると鞄についた葉っぱや汚れを落として肩に掛けた。気付かぬふりをしつつ落ちていた文房具を探し、全てを拾い集める

「・・・」

そしてついでに道端に落ちていた石ころを拾い上げると茂みに向かって投擲した。

『ぎゃっ!』
「取りに来たのがワシじゃなかったらどうするつもりだったんだ?卑怯者め」

茂みからくぐもった悲鳴が聞こえた。アダムはそれに鼻を鳴らして答えると踵を返してずんずんと歩いて行った。
魔力の感知、そして物音や息遣いを聞き分けられるアダムにとって素人が隠れている茂みはかえってわかりやすかった。

「マリーの服に残ってた魔力の質から見るに昼間にフラウステッドにやられたヤツだな・・・Dクラスだったか?半端な奴ほどこういう陰湿なことをやりたがるもんだ」

ぷりぷりと怒りながら旧館に戻ると

「私の魔法で湿度をコントロールできるかも・・・」
「今度こそ火の魔法が出そうだから!ね?ね?」
「ステイ!ステイです!そんな微小なコントロールできないでしょ!」

≪バビビビ!≫

「ひゃいっ!また電気っっ!!」
「ごめ・・・私の魔法は魔法を伝達するから・・・」
「どっちも早く引っ込めてっ!あびびび!」

「寒い・・・」
「ごめんね、とりあえずこの毛布使って・・・」
「ありがとう・・・くしゅん!」

ティナとクロエが魔法で服を乾かそうとしていたがそのたびにクロエが湿らせ、ティナが放電していた。
ルナは数回の直撃で髪の毛があちこち跳ねている。
マトモに対応できているのは寝具を持ち込んでいたダズだけだった。

「何やっとるんだお前ら・・・」
「ディーン先生!助けてくださささささ!」
「さっさと魔法を止めろ!ユピトール!」

がたがたと震えているマリーと別の意味で震えているルナ。ティナの魔法が止まったのは結局複数回の魔法の行使で疲れてようやくである。クロエはその間もずっとじめじめしていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

魅了だったら良かったのに

豆狸
ファンタジー
「だったらなにか変わるんですか?」

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

側妃に追放された王太子

基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」 正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。 そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。 王の代理が側妃など異例の出来事だ。 「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」 王太子は息を吐いた。 「それが国のためなら」 貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。 無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。

処理中です...