悪魔になったらするべきこと?

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新学期

保護者同士の喧嘩

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エトナーは困った。彼女をどう扱うべきなのか。

「悪魔になったのに・・・そこらの聖職者より清らかなんだよな・・・」

聖職者とて人である。堕落することもあれば、穢れることもある。心ならば悔い改めればいいし、体ならば清めればいい。罪を犯したらなら償えばいい。なにより大事なのは善であろうとすること、間違いや罪に向き合う心を持つこと。
人に正しくあれと、清くあれと諭し導くのが聖職者たる自分の務めであり永らくそれを行ってきたのだ。


(・・・これも折り込み済みってんなら頭がさがるね)

エトナーは聖職者である。そんな彼女の目の前に前途多難な善良なる若者がいるのだ。そんな存在を彼女は見捨てられない。

「ふーむ」

エトナーにじーっと目を見られていたルナはエトナーが時折ブツブツと呟きながらもされるがままだった。
元よりお人好しの彼女は今こうしているのにもエトナーがやることに何かしらの意味があるであろう事を疑っていなかった。

「うん、決めた」
「何がれふかぁ」

言葉の途中で頬をもちもちされながらルナは尋ねる。

「お前、魔法使いだけじゃなくて聖職者も目指せ」
「えっ?」
「出かける際に被る帽子が二つあってもいいだろ?ってなわけで、お前はこれから私の弟子な」
「????」

訳も分からないままルナの師匠が増えた。

「ところでよ、ルナちゃんさ。ルルイエ呼ぶ方法ある?」
「呼ぶんですか?」
「あぁ、ちょっとばかし用事がな」
「わかりました、それじゃあさっそくこれを」

ルナは渡されたばかりのハンドベルを振った。

「はーい、ルナちゃんどうしたの」
「よう、馬鹿野郎」
「げえっ!エトナー!」

意気揚々と出てきたルルイエだが目の前の存在に露骨に嫌な顔をした。それとは対照的にエトナーは笑顔で詰め寄ると即座にルルイエの頭を鷲掴みにした。

「あがががが!」
「てめえは勝手な事ばっかしやがって!この子の将来どーするつもりなんだ、ああん?」

メキメキと音を立てて軋むルルイエの頭。彼女の手の力の籠り様を見るに相当に頭に来てるらしい。

「狂気がどっちのベクトルに走った?ああ?人間が着せ替え人形にでも見えたか?」
「うぐぐ、違うね!綺麗だったの、すごくね!狂ったのは私よ、彼女に狂ってるの!」

エトナ―が目を見開くと特大の雷がルルイエを自身ごと撃った。轟音と共にルルイエは消し炭になり、煙を吐き出しながら崩れて・・・そして時間が巻き戻るように体を再構築してエトナーと向かい合った。

「狂気の魔神が!」
「狂信者が!」

次にルルイエの手がエトナ―の喉を貫いた。血の泡を吐きながらエトナ―は持っていた杖でルルイエの頭を形が変わる勢いで殴りつける。お互いがたたらを踏んで距離が開くと互いに傷が何事もなかったように塞がり、元通りになる。杖と手、爪と蹴り、お互いがダメージを気にせず血しぶきが飛び散る勢いで殴り合う。

「テメエは!前々から!そう言うとこがクソだったんだよ!」
「私は人助けしてるだけよ!今回はっ!手間を掛け過ぎただけ!」

エトナ―がマウントを取るとルルイエの顔面を地面が陥没する勢いで殴り始める。直撃するたびに飛び散る血がその威力を物語っていた。

「っ!あ、と、とめなきゃ・・・!」

呆気に取られていたルナだったが恩人二人が血みどろで殴り合う光景に慌てて二人の間に割って入った。

「ルナちゃん!」
「ちょ、ルナちゃん!」

ルナが入ってきたことで二人は慌てて手を引っ込めた。そして割って入ったルナを見つめる。

「やめてください・・・私が、私が頑張れば、なんとかなるんでしょう?」
「な、なんとかって・・・」
「魔法使いにもなります!それは私の夢でした・・・不思議なことに触れるのが楽しくて、魔法が綺麗だったから・・・それで、聖職者としても頑張れば、大丈夫なんですよね?」
「それは・・・でも大変よ?」

血塗れの二人を見ていても立ってもいられなかったのだろう。その目がみるみるうちに潤み始めたのを見て二人はおたおたするばかり。

「が、がんばりますから・・・だから、もう、けんかしないで・・・」
「ルナちゃん・・・」

血に塗れた二人の手を握って、嗚咽を漏らすルナ。二人はこんな自分達を心配して涙を流すルナの姿を見て熱くなってしまった自分の浅慮を恥じることになった。

「あー、その・・・なんだ、悪かったよ。目の前で殴り合いなんか始めちゃって」
「ビックリしました・・・ほんとに、こんなにケガして・・・ひっく」
「ごめんねぇ、私が根回ししてなくて」
「・・・それはそうですね」
「あれ?心配してくれない感じ?」
「前もこんなことあったので・・・」
「だよな、悪魔と大悪魔じゃ扱い段違いなんだぞ」

エトナ―がじとーっと見る中でルルイエは居心地が悪そうに目を逸らした。報告漏れでひどい目に遭うのはこれで二度目だろうか。初回のひどさも考えると三度目か。

「はー、もう・・・とりあえずさ、ルナちゃん」
「ぐすっ・・・はい」
「色々と大変な事があるだろうけど、これからは私も君を助けてあげる」

だからね、とエトナ―は優しく言葉を掛ける。

「君は君の思うままに正しいと思ったことをしなさい。体が特殊だからって気にすることはない」
「正しいと思ったこと・・・」
「間違ったらその時は私達年長者の出番さ。悪い事をしたら叱ってあげるし、いい事をしたら褒めてあげよう」

ルナがルルイエに視線を向けるとルルイエも笑って頷く。

「そうだね、ルナちゃん。色々と大変な目に遭わせちゃったけど・・・それでも私は貴女の味方のつもりだから。貴女の夢、やりたい事、全部応援してあげるだから安心してちょうだい」
「お前が言うと安心できねえんだよな・・・」

エトナ―がそう言うとルナは噴き出した。ルルイエはかなり不本意だったがルナが笑顔になったので良しとした。
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