56 / 172
新学期
国境に向かって
しおりを挟む
結果からいうとダズは国境へ向かう道中ほとんど寝ていた。
最初は皆思い思いに起こそうとしていたが四六時中寝ているのに夜は夜でキッチリ寝てしまうので皆放置することにした。
「そろそろ国境の近くだな」
アダムはそう言うと馬車の窓の外から覗く景色を見る。ルナ達には多少賑やかな状況と言った程度の認識だったが経験のあるアダムにはこの状況がややきな臭いものに映っていた。
(食料品の出入りが多いな、山間部なのに町の規模に少々見合わないが・・・これは本当にあり得るか?)
すれ違う馬車は空で、自分達と同じ道を行く馬車は皆保存食や小麦などの穀類を積んだ馬車ばかり。
アダムの予測を裏付けるようにさらに自分達の道に同行する馬車には教会のシンボルを掲げた馬車が。
「教会の馬車がいますね」
「いやーな予感がしてきたぞ」
ルナが教会の馬車に気付いて窓に顔を近づけた。そしてその馬車の近くにさらに見知った顔があるのに気付いた。
「あ、エトナ―さんだ」
「知らん顔しとけ!」
アダムは即座にルナを窓から引き離した。かの聖人が現れるところ争乱ありである。
「いよいよもって嫌な予感がしてきたぞ」
「どうしてですか?」
「食料が大量に運び込まれてて、坊主がやって来てる資源のある国境地域とか問題しかないわ!」
僧侶に対してアダムが何故嫌な予感を感じているのか。それについて説明すると日光教の仕事の一つが「地域の安定」だからである。古今東西俗世から離れて市井の損得から離れている宗教組織は揉め事が起こった時の住民の保護や戦争や紛争の仲裁を行う立場なのである。
言い換えればこれから紛争か、下手をすれば戦争が起こるかもという前触れなのだ。
食料品の大量流入もこれに該当する。食料は全て兵士たちを養うためのもので、戦いに備えるものに他ならない。
「こりゃ国境を超えるのは至難の業だぞ」
「えー、じゃあどうしたら・・・?」
「宿に泊まれたらいいが、もし断られるようなら馬車で車中泊だ。場合によってはすぐにとんぼ返りする必要がある」
「魔力草の採取も無理そうですかね?」
「わからん、場所に関してはわかってるか?」
「一応旅行者向けのパンフレットにも載ってますけど・・・」
アダムはそのパンフレットと一応下調べした自分の記憶とを比べて場所を確認すると二手に分かれる計画を立てることにした。
「この状況だと国境にこのまま近づくのは賢い選択じゃない。魔力草の採取組と居残ってすぐに帰り支度をする組、そしてワシがクラスメイトの安否確認を行う」
アダムがいつになく真剣な表情で言うのでティナたちも珍しく緊張した面持ちで話を聞いている。
「魔力草の採取をするときは身元と目的、所属をきっちりと説明しろ。誤解されると牢屋にぶちこまれるからな」
「わかりました」
「あとフラウステッドはエトナ―に事情を聞きに行け、こうなってはしょうがない」
アダムは嫌々と言った様子だがルナに指示を出して先んじて馬車を降りるように告げた。
「事情を聞けたらお前はエトナ―と一緒に居ろ。こっちから迎えに行く」
「わかりました、それではお先に」
馬車が一旦停まったのを見計らってルナは馬車を降り、教会の馬車を追いかけていく。
「ルナちゃん大丈夫かな・・・」
「エトナ―と知り合いだから大丈夫だ、それに彼女の御父君は治安組織に顔が利くからな」
「それよりワシらの方が大変だぞ、さっそくだが班決めだ。留守番組と魔力草の採取組に分かれる必要がある」
ティナ・マリー・ダズ・テイロス・クロエの五人だが・・・
「採取組は普通にアタシとテイロス君とダズ君じゃない?」
「何故だ?」
「クロエは山歩き不慣れだし、マリーちゃんもヤバくなったら大変だからこういう時は男と足に自信がある子が鉄板でしょ」
ティナの言葉にアダムはふむ、と考える。確かにこういった時に体力的に劣るクロエとマリーを採取組に入れるのは不適格だ。それはそれとしてこういった際に長所や短所を考慮して発言できるティナにアダムは感心した。
「よし、それでは留守番組は荷物の管理と馬車にいつでも乗り込める状態で待機だ」
「わかりました」
「・・・わかりましたぁ」
アダムは生徒に指示を出すと自身も馬車を降りて御者に声を掛ける。
「すみませんが何かあれば子供たちを連れて街まで戻ってください」
「わかりました、先ほどの子は?」
「あの子は教会の人とつながりがあるのでどうしようもない場合こちらで何とかします。あくまで最悪のケースですがね」
「わかりました、馬車が停まれる宿はそう多くはありませんからすぐに見つけられると思います」
「無理を言って申し訳ない」
お願いします、と念押しすると御者は帽子のつばを持って頷いた。アダムはそれに頷き返すとそのまま雑踏の中に姿を消した。
最初は皆思い思いに起こそうとしていたが四六時中寝ているのに夜は夜でキッチリ寝てしまうので皆放置することにした。
「そろそろ国境の近くだな」
アダムはそう言うと馬車の窓の外から覗く景色を見る。ルナ達には多少賑やかな状況と言った程度の認識だったが経験のあるアダムにはこの状況がややきな臭いものに映っていた。
(食料品の出入りが多いな、山間部なのに町の規模に少々見合わないが・・・これは本当にあり得るか?)
すれ違う馬車は空で、自分達と同じ道を行く馬車は皆保存食や小麦などの穀類を積んだ馬車ばかり。
アダムの予測を裏付けるようにさらに自分達の道に同行する馬車には教会のシンボルを掲げた馬車が。
「教会の馬車がいますね」
「いやーな予感がしてきたぞ」
ルナが教会の馬車に気付いて窓に顔を近づけた。そしてその馬車の近くにさらに見知った顔があるのに気付いた。
「あ、エトナ―さんだ」
「知らん顔しとけ!」
アダムは即座にルナを窓から引き離した。かの聖人が現れるところ争乱ありである。
「いよいよもって嫌な予感がしてきたぞ」
「どうしてですか?」
「食料が大量に運び込まれてて、坊主がやって来てる資源のある国境地域とか問題しかないわ!」
僧侶に対してアダムが何故嫌な予感を感じているのか。それについて説明すると日光教の仕事の一つが「地域の安定」だからである。古今東西俗世から離れて市井の損得から離れている宗教組織は揉め事が起こった時の住民の保護や戦争や紛争の仲裁を行う立場なのである。
言い換えればこれから紛争か、下手をすれば戦争が起こるかもという前触れなのだ。
食料品の大量流入もこれに該当する。食料は全て兵士たちを養うためのもので、戦いに備えるものに他ならない。
「こりゃ国境を超えるのは至難の業だぞ」
「えー、じゃあどうしたら・・・?」
「宿に泊まれたらいいが、もし断られるようなら馬車で車中泊だ。場合によってはすぐにとんぼ返りする必要がある」
「魔力草の採取も無理そうですかね?」
「わからん、場所に関してはわかってるか?」
「一応旅行者向けのパンフレットにも載ってますけど・・・」
アダムはそのパンフレットと一応下調べした自分の記憶とを比べて場所を確認すると二手に分かれる計画を立てることにした。
「この状況だと国境にこのまま近づくのは賢い選択じゃない。魔力草の採取組と居残ってすぐに帰り支度をする組、そしてワシがクラスメイトの安否確認を行う」
アダムがいつになく真剣な表情で言うのでティナたちも珍しく緊張した面持ちで話を聞いている。
「魔力草の採取をするときは身元と目的、所属をきっちりと説明しろ。誤解されると牢屋にぶちこまれるからな」
「わかりました」
「あとフラウステッドはエトナ―に事情を聞きに行け、こうなってはしょうがない」
アダムは嫌々と言った様子だがルナに指示を出して先んじて馬車を降りるように告げた。
「事情を聞けたらお前はエトナ―と一緒に居ろ。こっちから迎えに行く」
「わかりました、それではお先に」
馬車が一旦停まったのを見計らってルナは馬車を降り、教会の馬車を追いかけていく。
「ルナちゃん大丈夫かな・・・」
「エトナ―と知り合いだから大丈夫だ、それに彼女の御父君は治安組織に顔が利くからな」
「それよりワシらの方が大変だぞ、さっそくだが班決めだ。留守番組と魔力草の採取組に分かれる必要がある」
ティナ・マリー・ダズ・テイロス・クロエの五人だが・・・
「採取組は普通にアタシとテイロス君とダズ君じゃない?」
「何故だ?」
「クロエは山歩き不慣れだし、マリーちゃんもヤバくなったら大変だからこういう時は男と足に自信がある子が鉄板でしょ」
ティナの言葉にアダムはふむ、と考える。確かにこういった時に体力的に劣るクロエとマリーを採取組に入れるのは不適格だ。それはそれとしてこういった際に長所や短所を考慮して発言できるティナにアダムは感心した。
「よし、それでは留守番組は荷物の管理と馬車にいつでも乗り込める状態で待機だ」
「わかりました」
「・・・わかりましたぁ」
アダムは生徒に指示を出すと自身も馬車を降りて御者に声を掛ける。
「すみませんが何かあれば子供たちを連れて街まで戻ってください」
「わかりました、先ほどの子は?」
「あの子は教会の人とつながりがあるのでどうしようもない場合こちらで何とかします。あくまで最悪のケースですがね」
「わかりました、馬車が停まれる宿はそう多くはありませんからすぐに見つけられると思います」
「無理を言って申し訳ない」
お願いします、と念押しすると御者は帽子のつばを持って頷いた。アダムはそれに頷き返すとそのまま雑踏の中に姿を消した。
0
あなたにおすすめの小説
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
底辺から始まった俺の異世界冒険物語!
ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。
しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。
おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。
漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。
この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――
勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~
楠ノ木雫
ファンタジー
IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき……
※他の投稿サイトにも掲載しています。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
異世界あるある 転生物語 たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?
よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する!
土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。
自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。
『あ、やべ!』
そして・・・・
【あれ?ここは何処だ?】
気が付けば真っ白な世界。
気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ?
・・・・
・・・
・・
・
【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】
こうして剛史は新た生を異世界で受けた。
そして何も思い出す事なく10歳に。
そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。
スキルによって一生が決まるからだ。
最低1、最高でも10。平均すると概ね5。
そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。
しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。
そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで
ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。
追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。
だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。
『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』
不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。
そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。
その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。
前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。
但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。
転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。
これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな?
何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが?
俺は農家の4男だぞ?
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる