60 / 172
新学期
エトナーのところに
しおりを挟む
エトナ―は今回の事件においても自分たちが出張らなければいけない事件であることを
薄々は感じていたがそれを差し引いてもやる気は出なかった。
というのも国の機関やらなにやらを断罪するということ自体が教会にいらぬ権力を持たせることに他ならないからである。
(か弱き人に寄り添う為とはいえ・・・力は腐敗を招くよな)
権力を得て、富を得て狂った人をエトナ―はたくさん見てきた。優しき人が権力を得て恐ろしい凶行にはしったこと、清き人が富を得て醜く濁ったこと。力が人を豹変させてきたことは枚挙にいとまがない。
「けど・・・力なき正義は無力・・・か」
エトナ―はそう言うと馬車の背もたれに体を預けた。馬車は内装に力が入っており、クッションが背もたれにも使われているため快適だ。しかし彼女にとって真に自分が身を預けるべきは質素な荷車の荷台だと思っている。
積まれた藁に埋もれて空を見上げている時が彼女にとって一番気楽で、快適だった。馬車が未舗装の道を進み、揺れるリズムに身をゆだねてゆったりと進むこと。
より自然に、より普通に。なんなら彼女は千里を歩くことも苦にならない質である。
聖人だと祀り上げられるのは性に合わない。仕方ないからそうしているが彼女は本来はいつだってただの聖職者であろうとしている。
いつか、一人の修道女として昔のように巡礼の旅に出たい。
そう思いつつ馬車の窓を見た時だった。
「・・・なぜいる?」
ルナの顔が窓越しに見えた。。それなりの速度で走り始めていたはずだがいつの間にかドアに貼り付いていたのだ。
「己はトカゲか何かか!」
「こんにちは!」
ドアを開けるとその隙間から滑り込むように入ってくるルナ。エトナーが外の様子を見ると護衛の神殿騎士達はおろおろしていた。
「ばっ・・・!お前ら見せもんじゃねえぞ!」
エトナーががーっ!と叫ぶと騎士達は散り散りに。頭を掻きながら席に戻るとクッションの感触に感動しているルナに目を向けた。
「なんで此処に・・・」
「クラスメイトが国境で足止めされてるからって迎えに」
あと魔力草の採取にきました!と朗らかに答えたためエトナ―は脱力した。
「そういえば・・・ディーン先生が言ってたんですけど、戦があるんですか?」
「・・・なんだって?」
「食べ物が砦にたくさん運び込まれるのは戦がある時だって」
「あー、それな。ルナちゃんには言ってもいい感じかな・・・」
エトナーは自分の頭を掻く代わりにルナの頭を撫でくり回しながら考える。
「実を言うと私が此処に来たのは表向きはルナちゃんの言う通りなのさ」
「戦ですか!」
「物騒なこと言うねぇ、まあ普通ならそうなんだが・・・これで何度目だったかって話なのよ」
「何度目・・・?」
砦から本国に要請が入ることは当然ながらあるだろう。食料の手配や人員の補充、その他物資の補充、来賓や入国管理の問い合わせなどなど・・・。しかしである。
「食料とか物品の補充がなんだか最近多くね?って話になったわけよ」
「ふむふむ・・・でもそれってエトナ―さんが来ることです?」
「そこよ、面倒なのは」
エトナ―がビシッ、と指を立てて言う。
「食料やら物品やらちょろまかして売り捌いてんなら私が来る必要なんかまっっっったく無いんだけど」
「?」
エトナ―はルナがかつて売りに出されそうになった闇オークションの会場を思い出していた。
その事件に悪魔が絡んだことでエトナ―はエクソシスト達と調査に入ったのだがその際にこの砦の責任者が
オークションに商品を”納品”していた疑惑が出たのだ。
「人を売り買いしてるバカヤローが居る可能性があるのよね」
「人を?それって犯罪なんじゃ・・・」
「そうよ、国の法だけじゃない、私ら教会が定める規定にもばっちり違反する奴」
エトナ―はふんぞり返ると至極めんどくさそうに溜息をついた。ルナに手を出したバカヤローの主犯格は捕まっていない。マルティナから聞いた話によると犯人はガスタン・ギュントという魔法局の人間らしい。
しかしあの男は忌々しいことに証拠を悉く抹消しており、マルティナの証言も政治に対して影響力の乏しい教会からでは右から左のお役所仕事で真面目に取り合うつもりがないようだ。
アダムの調べによるとそもそもその証言を取り合ったのがこともあろうに犯人の部下らしい。
おそらくだが握りつぶされてしまったのだろう。これ以上は彼女の身が危ないので事件からは手を引いてもらい、一旦療養ということで街を離れてもらっている。
「しかしまあ、その中でこの砦が供給を担当してる可能性があるわけ」
「それじゃあエトナ―さんも危ないんじゃ?」
「私が連絡も無しに消息を絶ったらそれこそここに踏み込む大義名分ができるから無問題。死のうとおもって死ねる体でもないし」
どうやら監査であり、彼女は囮ということらしい。ルナは思わず顔をしかめた。
薄々は感じていたがそれを差し引いてもやる気は出なかった。
というのも国の機関やらなにやらを断罪するということ自体が教会にいらぬ権力を持たせることに他ならないからである。
(か弱き人に寄り添う為とはいえ・・・力は腐敗を招くよな)
権力を得て、富を得て狂った人をエトナ―はたくさん見てきた。優しき人が権力を得て恐ろしい凶行にはしったこと、清き人が富を得て醜く濁ったこと。力が人を豹変させてきたことは枚挙にいとまがない。
「けど・・・力なき正義は無力・・・か」
エトナ―はそう言うと馬車の背もたれに体を預けた。馬車は内装に力が入っており、クッションが背もたれにも使われているため快適だ。しかし彼女にとって真に自分が身を預けるべきは質素な荷車の荷台だと思っている。
積まれた藁に埋もれて空を見上げている時が彼女にとって一番気楽で、快適だった。馬車が未舗装の道を進み、揺れるリズムに身をゆだねてゆったりと進むこと。
より自然に、より普通に。なんなら彼女は千里を歩くことも苦にならない質である。
聖人だと祀り上げられるのは性に合わない。仕方ないからそうしているが彼女は本来はいつだってただの聖職者であろうとしている。
いつか、一人の修道女として昔のように巡礼の旅に出たい。
そう思いつつ馬車の窓を見た時だった。
「・・・なぜいる?」
ルナの顔が窓越しに見えた。。それなりの速度で走り始めていたはずだがいつの間にかドアに貼り付いていたのだ。
「己はトカゲか何かか!」
「こんにちは!」
ドアを開けるとその隙間から滑り込むように入ってくるルナ。エトナーが外の様子を見ると護衛の神殿騎士達はおろおろしていた。
「ばっ・・・!お前ら見せもんじゃねえぞ!」
エトナーががーっ!と叫ぶと騎士達は散り散りに。頭を掻きながら席に戻るとクッションの感触に感動しているルナに目を向けた。
「なんで此処に・・・」
「クラスメイトが国境で足止めされてるからって迎えに」
あと魔力草の採取にきました!と朗らかに答えたためエトナ―は脱力した。
「そういえば・・・ディーン先生が言ってたんですけど、戦があるんですか?」
「・・・なんだって?」
「食べ物が砦にたくさん運び込まれるのは戦がある時だって」
「あー、それな。ルナちゃんには言ってもいい感じかな・・・」
エトナーは自分の頭を掻く代わりにルナの頭を撫でくり回しながら考える。
「実を言うと私が此処に来たのは表向きはルナちゃんの言う通りなのさ」
「戦ですか!」
「物騒なこと言うねぇ、まあ普通ならそうなんだが・・・これで何度目だったかって話なのよ」
「何度目・・・?」
砦から本国に要請が入ることは当然ながらあるだろう。食料の手配や人員の補充、その他物資の補充、来賓や入国管理の問い合わせなどなど・・・。しかしである。
「食料とか物品の補充がなんだか最近多くね?って話になったわけよ」
「ふむふむ・・・でもそれってエトナ―さんが来ることです?」
「そこよ、面倒なのは」
エトナ―がビシッ、と指を立てて言う。
「食料やら物品やらちょろまかして売り捌いてんなら私が来る必要なんかまっっっったく無いんだけど」
「?」
エトナ―はルナがかつて売りに出されそうになった闇オークションの会場を思い出していた。
その事件に悪魔が絡んだことでエトナ―はエクソシスト達と調査に入ったのだがその際にこの砦の責任者が
オークションに商品を”納品”していた疑惑が出たのだ。
「人を売り買いしてるバカヤローが居る可能性があるのよね」
「人を?それって犯罪なんじゃ・・・」
「そうよ、国の法だけじゃない、私ら教会が定める規定にもばっちり違反する奴」
エトナ―はふんぞり返ると至極めんどくさそうに溜息をついた。ルナに手を出したバカヤローの主犯格は捕まっていない。マルティナから聞いた話によると犯人はガスタン・ギュントという魔法局の人間らしい。
しかしあの男は忌々しいことに証拠を悉く抹消しており、マルティナの証言も政治に対して影響力の乏しい教会からでは右から左のお役所仕事で真面目に取り合うつもりがないようだ。
アダムの調べによるとそもそもその証言を取り合ったのがこともあろうに犯人の部下らしい。
おそらくだが握りつぶされてしまったのだろう。これ以上は彼女の身が危ないので事件からは手を引いてもらい、一旦療養ということで街を離れてもらっている。
「しかしまあ、その中でこの砦が供給を担当してる可能性があるわけ」
「それじゃあエトナ―さんも危ないんじゃ?」
「私が連絡も無しに消息を絶ったらそれこそここに踏み込む大義名分ができるから無問題。死のうとおもって死ねる体でもないし」
どうやら監査であり、彼女は囮ということらしい。ルナは思わず顔をしかめた。
0
あなたにおすすめの小説
異世界あるある 転生物語 たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?
よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する!
土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。
自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。
『あ、やべ!』
そして・・・・
【あれ?ここは何処だ?】
気が付けば真っ白な世界。
気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ?
・・・・
・・・
・・
・
【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】
こうして剛史は新た生を異世界で受けた。
そして何も思い出す事なく10歳に。
そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。
スキルによって一生が決まるからだ。
最低1、最高でも10。平均すると概ね5。
そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。
しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。
そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで
ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。
追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。
だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。
『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』
不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。
そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。
その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。
前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。
但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。
転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。
これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな?
何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが?
俺は農家の4男だぞ?
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
底辺から始まった俺の異世界冒険物語!
ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。
しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。
おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。
漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。
この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――
男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる
暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。
授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる