悪魔になったらするべきこと?

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新学期

エトナーのところに

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エトナ―は今回の事件においても自分たちが出張らなければいけない事件であることを
薄々は感じていたがそれを差し引いてもやる気は出なかった。
というのも国の機関やらなにやらを断罪するということ自体が教会にいらぬ権力を持たせることに他ならないからである。

(か弱き人に寄り添う為とはいえ・・・力は腐敗を招くよな)

権力を得て、富を得て狂った人をエトナ―はたくさん見てきた。優しき人が権力を得て恐ろしい凶行にはしったこと、清き人が富を得て醜く濁ったこと。力が人を豹変させてきたことは枚挙にいとまがない。

「けど・・・力なき正義は無力・・・か」

エトナ―はそう言うと馬車の背もたれに体を預けた。馬車は内装に力が入っており、クッションが背もたれにも使われているため快適だ。しかし彼女にとって真に自分が身を預けるべきは質素な荷車の荷台だと思っている。
積まれた藁に埋もれて空を見上げている時が彼女にとって一番気楽で、快適だった。馬車が未舗装の道を進み、揺れるリズムに身をゆだねてゆったりと進むこと。
より自然に、より普通に。なんなら彼女は千里を歩くことも苦にならない質である。
聖人だと祀り上げられるのは性に合わない。仕方ないからそうしているが彼女は本来はいつだってただの聖職者であろうとしている。

いつか、一人の修道女として昔のように巡礼の旅に出たい。
そう思いつつ馬車の窓を見た時だった。

「・・・なぜいる?」

ルナの顔が窓越しに見えた。。それなりの速度で走り始めていたはずだがいつの間にかドアに貼り付いていたのだ。

「己はトカゲか何かか!」
「こんにちは!」

ドアを開けるとその隙間から滑り込むように入ってくるルナ。エトナーが外の様子を見ると護衛の神殿騎士達はおろおろしていた。

「ばっ・・・!お前ら見せもんじゃねえぞ!」

エトナーががーっ!と叫ぶと騎士達は散り散りに。頭を掻きながら席に戻るとクッションの感触に感動しているルナに目を向けた。

「なんで此処に・・・」
「クラスメイトが国境で足止めされてるからって迎えに」

あと魔力草の採取にきました!と朗らかに答えたためエトナ―は脱力した。

「そういえば・・・ディーン先生が言ってたんですけど、戦があるんですか?」
「・・・なんだって?」
「食べ物が砦にたくさん運び込まれるのは戦がある時だって」
「あー、それな。ルナちゃんには言ってもいい感じかな・・・」

エトナーは自分の頭を掻く代わりにルナの頭を撫でくり回しながら考える。

「実を言うと私が此処に来たのは表向きはルナちゃんの言う通りなのさ」
「戦ですか!」
「物騒なこと言うねぇ、まあ普通ならそうなんだが・・・これで何度目だったかって話なのよ」
「何度目・・・?」

砦から本国に要請が入ることは当然ながらあるだろう。食料の手配や人員の補充、その他物資の補充、来賓や入国管理の問い合わせなどなど・・・。しかしである。

「食料とか物品の補充がなんだか最近多くね?って話になったわけよ」
「ふむふむ・・・でもそれってエトナ―さんが来ることです?」
「そこよ、面倒なのは」

エトナ―がビシッ、と指を立てて言う。

「食料やら物品やらちょろまかして売り捌いてんなら私が来る必要なんかまっっっったく無いんだけど」
「?」

エトナ―はルナがかつて売りに出されそうになった闇オークションの会場を思い出していた。
その事件に悪魔が絡んだことでエトナ―はエクソシスト達と調査に入ったのだがその際にこの砦の責任者が
オークションに商品を”納品”していた疑惑が出たのだ。

「人を売り買いしてるバカヤローが居る可能性があるのよね」
「人を?それって犯罪なんじゃ・・・」
「そうよ、国の法だけじゃない、私ら教会が定める規定にもばっちり違反する奴」

エトナ―はふんぞり返ると至極めんどくさそうに溜息をついた。ルナに手を出したバカヤローの主犯格は捕まっていない。マルティナから聞いた話によると犯人はガスタン・ギュントという魔法局の人間らしい。
しかしあの男は忌々しいことに証拠を悉く抹消しており、マルティナの証言も政治に対して影響力の乏しい教会からでは右から左のお役所仕事で真面目に取り合うつもりがないようだ。
アダムの調べによるとそもそもその証言を取り合ったのがこともあろうに犯人の部下らしい。
おそらくだが握りつぶされてしまったのだろう。これ以上は彼女の身が危ないので事件からは手を引いてもらい、一旦療養ということで街を離れてもらっている。

「しかしまあ、その中でこの砦が供給を担当してる可能性があるわけ」
「それじゃあエトナ―さんも危ないんじゃ?」
「私が連絡も無しに消息を絶ったらそれこそここに踏み込む大義名分ができるから無問題。死のうとおもって死ねる体でもないし」

どうやら監査であり、彼女は囮ということらしい。ルナは思わず顔をしかめた。
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