悪魔になったらするべきこと?

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新学期

悪魔の契約!

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キリルは自室にいた。悪魔は突然魔法陣を描いてその中から飛び出してきたのだ。

「ひっ、まだ期限があるはずなのに・・・!」
『期限ンンン~?知らねえな、どちらにしろもう履行は不可能だろう?』

悪魔は最初から人外の要素を丸出しだった。耳まで裂けた口、赤く光る眼、鋭い牙と爪。
そして恐ろしい声と雰囲気を纏い、キリルの全てを奪うためにやってきた。

「馬鹿な!そんなの、詐欺だろ!」
『契約書を細かく見ろよ!無理になった時点で俺の自由になるって書いてるぞ!』

勝ち誇った顔の悪魔が契約書を指さした。キリルが慌てて契約書を見るとその中に
小さく『履行が不可能になった時点で回収する権利を有する』と書かれていた。

「く、そ、そんなのアリか!無理矢理書かせたのに!こんな見づらい契約書まで!」
『お前の破滅までの時間をずっと長く伸ばしてやったんだから感謝されこそすれ文句を言われる筋合いはないぜ。どうせやくざ者から借りたんだ。利子がどうなるかなんて見当がついてただろう?』

ゲタゲタと笑う悪魔。キリルはへたり込んで自身をこれから死に追いやる存在を
見上げる事しかできなかった。
避けられない死、下手をするとそれよりも恐ろしい事がこれから起こるのだ。

「か、神様ぁ・・・」
『ギャハハハ!此処に神は居ないぜ!』

茫然自失、キリルはずっと背を向けてきた神に祈った。
悪魔はそれを聞いて腹を抱えて笑うが、すぐに切り替えて彼に手を伸ばした。

『お前の魂なんぞ二束三文だが、その器に使い道があるんでな・・・ちゃちゃっと済ませてやるよ』
「ひ、ひいぃぃ・・・」

手がキリルの頭の近くに翳されるとキリルの口や目から半透明の光が漏れ始める。

「あががが・・・!」
『くくく!これで出直しができるぞ』

悪魔が契約を完遂しようとしたその刹那、ドアを蹴破ってエトナ―とルナが部屋に飛び込んだ。


「そこまでだ!」
『あぁっ?・・・げっ!聖職者!』
「悪魔め、覚悟しろ!」
『ぬぐぐ・・・なんちゃってな』

杖を構えてこちらを睨みつける修道女が二人、悪魔は顔をしかめるがすぐに笑みを浮かべて
キリルを放り出し、指を弾いた。

「これは!」
『結界は聖職者だけの特権じゃねえ、俺たちだって使えるんだぜ!』

悪魔は何度も訪れて少しずつキリルの自室を自身の領域に変えていっていたらしい。扉が禍々しい装飾のそれに置き換わり、部屋の景色も悪魔の合図で塗り替わった。

「・・・へえ、聖なる加護から切り離すってか。大それた術を使ってんな」
『知っててその態度とはずいぶんと余裕じゃねえか』

悪魔の支配する領域、魔界に近しい空気になっている。それは聖職者の力を
弱めるだけでなく彼らが受ける加護の力、護りの力から切り離すことを意味している。

「まあな、お前ごときに私が本気出すまでもない」
『・・・言うじゃねえか、吠えづらかくなよ!」

悪魔はエトナ―の言葉に青筋を浮かべて腕を振り上げた。まるで木の幹のような太さの
腕がうなりを上げて振り下ろされる。

「きゃ!」

ルナがそれを見て思わず声を上げたが対するエトナ―は杖を振るって悪魔の攻撃を容易くはじき返した。
エトナ―はその場から一歩も動かなかったが悪魔の腕はあらぬ方向を向いており、その一撃の強烈さを
物語っている。

『ぐっ!がぁぁぁ!?』
「中級に毛が生えた程度だな、こそこそと知恵が回るらしいがそれだけだ」

エトナーはそう言うとルナに顔を向けた。

「んじゃ、後は任せる」
「え?」
「お前さんの力であのバカを黙らせてやれ。いい練習になる」
「戦うんですか?私が?」

えっ、といった反応のルナにエトナ―はいやいや、と手を振ってこたえる。

「お前さんなら戦いにすらならんよ。悪魔の姿を見せればその時点で全てが終わるさ」
「悪魔の姿・・・」
「余所行きの名前ももらっただろ?その首飾りを外して名乗ればいい」
「はい!では・・・我が名は、アービル!」

ずいと前に出て胸をはるとルナは真名を隠した悪魔の名を唱えるが・・・。
しーん、と静まり返った。首飾りを外し忘れていたので再度やってみる。

「うぅ、は、恥ずかしい・・・もう、我が名はアービル!」

もう一度やってみたが・・・どうにも反応が悪い。というより変化がない。
ルナは回れ右してエトナ―のところへ戻った。

「・・・やっぱりな、コントロールできてない」
「うぅぅ・・・ごめんなさい・・・」

二度も恰好をつけて失敗したのでルナは顔が真っ赤になっている。

「人から悪魔に、悪魔から人になれないと困るから経験積ませようとしたんだが・・・」

ま、その為の私だ。とエトナーは言うとルナの首飾りを受け取ると杖でルナの肩を叩いた。

「とりあえずは・・・蝙蝠か蜘蛛の姿をイメージしときな、ムカデだと確実に砦を壊しちまうからな」
「は、はい・・・」
「それでは行くぞ・・・『神の聖名に置いて命ずる、名を明かせ』」

杖をルナの額に移動させてそう唱えるとルナの内側から何かがあふれ出るような感覚を覚えた。

「お、オォォォォォ・・・!」
「名乗れ」
「我が名は・・・アービル!”深淵にてなお清らかなるもの”なり!」

二つ名が自然と口をついて出た。それと同時にルナの体はメキメキと音を立てて膨らんでいく。
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