ノーライフ・ガールは博士の最高傑作

ファウスト

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旅立ちの日に

賊、どうしてやろうか

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ここらへんに賊が出るとは思ってもみなかった。なにせ先生が道を整備した時に魔獣を使役して牛や馬代りにしていたからだ。それからは道から外れ迷った人間を道に追いやる役目をしていたはずだったが・・・自然に帰ってしまったのだろうか。


「さてと、どこのどちら様かな」

すたすたと歩いてみると不意に私の足元に矢が飛んできた。そして身なりのあまりよろしくないむさいおっさん達が私の行き手を阻むように展開した。

「おう、旅人かな?一人で歩いてちゃあぶねえぞ」
「そう、それで・・・一人だったらどうするつもり?」
「身ぐるみ剥いで人買いにでも売ってやる!」

一人相手に随分と大げさじゃないかな。数えると10人くらいは居そうだ。

「とりあえず、待たせてるから・・・」

私は銃を抜いて弓を構えていて私から見える場所にいる二人に射撃を始める。

「な、なんだぁ?!」
「ハグとグンドが倒れたぞ!ありゃ魔道具か!」

外れなくてよかった。余裕かましてて外れたらかっこ悪いし、作った弾がもったいない。弓を構えていた二人に使ったのは普通の弾丸だけど威力は十分、心臓に当たったかもだし。

「とりあえず片付けるよ、色々と面倒だからね」

残った四発を一人に一発ずつ撃ちこむと胴体に命中した者はほぼ即死し、下半身に当たった者も倒れ伏して激痛に呻いている。

「ち、畜生が・・・」

賊の一人がそう溢したが果たして畜生はどちらやら。十五歳の小娘の身ぐるみ剥いで人買いに売ろうとするやつらとそれを撃退するだけのこちら。言うまでもないけど。とりあえずリロードしとこ。

「!・・・六回が限度か!」

目端の利く一人がリロードし始めた私を見て下がりかけていた歩を進める。まあ、知らなくてもそういうのは想像が働くか・・・。とはいえ私もこれだけが戦う方法てわけでもない。

「火の模様はこれこれこれっと」

空中をなぞるように私は指先を動かし、模様を描く。先生から教わった異界の魔法、ルーンとか言っていたかな。

「へ・・・?」
「ほいっと」

浮かんだ模様に軽くパンチすると模様から火の弾が飛び出し、近づいた一人を吹き飛ばした。やば、適当に書いてもアレくらい威力出るのか。
神様にお祈りしながら書いたらどれだけ上乗せされるかわからないね。

「あんたらの生き死にはともかく威力が有りすぎると使いにくくなっちゃう」

私は書く行為をも省略して簡略にルーン文字を空中に展開する。

「ひぃ!」

もはや残った三人は抵抗もままならず、万策尽きた様子でこちらに怯えたまなざしを送っている。ともあれ私は人買いや人買いに関わる人間なんて大嫌いだ。燃え尽きてしまえばいい。

「せいぜい私が許せるのは生きるために奪うくらいよ。けど、尊厳まで奪う理屈なんて知ったこっちゃないし」

生死を左右する瞬間は善悪関わらずあるだろうし、私がかつて命を奪った時にはまだほんの五歳だった。後悔なんて微塵も感じちゃいない。ただ、自分にその時ルールを定めたのだ。
尊厳を奪う事は命を奪うことよりも重い。人は尊厳があってこそ、ルールを重んじてこそなのだ。彼らはそんな中で私のルールに踏み込んだ。命を奪う、物を奪う、金を奪う。それらなんて私にはよく分かる。生きるため、死なないため、明日に希望を見出すため。精神の安寧のため。

「法が許すかはともかく、理解して尊重してあげようじゃない・・・でも、人買いに売るなんて言っちゃあおしまいよね」

ルーンが熱を帯びて火球に変わる瞬間に彼らは悲鳴を上げた。しかしそんなことが私の決意を鈍らせるにはいささか遅かったかもね。

「口は禍の元・・・勉強になったわねぇ」

跡形もなく燃え尽きる彼らを後目に私は吐き捨てるように言う。ああ、やだやだ。嫌な臭いだわ・・・。

「終わったわ」
「ご苦労様、死体は?」
「後始末も済ませたからアンデット死にぞこないになる事もないと思うわ」
「なるほど、ぬかりはないんだね。それならよかった」

村の人や商人が被害にあったら大変だものなぁ、とドレイトンさんは言う。そして焦げた跡を踏み越えて悠々と荷馬車を進ませる。結構、田舎の人・・・っていうか私の知る限りだけどゴウリ村の人たちってよそ者には結構ドライなのよね。人数も状況も把握してないから詳しく聞かないだけかもだけど。

「しかし珍しい、ここらへんに山賊の類とはね」
「ホントにね、もしかしたら町になにかあったのかな・・・」

周辺の治安はゴウリ村はともかく近場の町に詰める騎士や町に属する冒険者ギルドが取り仕切っている。賊が小規模とは言え野放しになっているのだからもしかすると町でなにか大変な事が起こっているかも。

「しかしウチも結構最近にも野菜を売りに行ったりしてたけどな・・・」
「最近って何日前?ドレイトンさんここ何か月かずっと孤児院の村手伝ってなかった?それに異例の結婚ラッシュで荷馬車も使えてなかったと思うけど・・・」

そう言うとドレイトンさんは思い出したように手を叩いた。

「そうだ、ここ三か月くらい行ってなかった。先生がいろいろと援助してくださるもんだから・・・」

呆れた、商売先のこと全然覚えてないなんて。けどそれだと何かあってもこちらには情報は届かないものかな?
賊の通報なら騎士が巡回したりしそうなものだけど・・・。
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