ノーライフ・ガールは博士の最高傑作

ファウスト

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旅立ちの日に

手慣れたもんよ、汚部屋なんて

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ささっと片付けること一時間。ゴミはまず撤去完了。床も汚いけど掃除までやってる時間はないか。

「さてと、次は厨房ね、覗いてるところだけでもヤバいけど」

おじさんとリッキーにゴミを外に運ぶように指示して私は厨房へ。戦場を覚悟しないとね。

「うっ・・・普通に臭い」

生ごみか、腐った臭いが微かにする。とてもじゃないけど調理場とは思えない臭いだ。山になったお皿にも汚れがこびりついている。お客様用のお皿なんかも流しにほったらかし・・・お皿が無くなってそうな数だけど宿だったからかお皿は沢山あるみたいで量がヤバい。
仕方ないので一つずつ汲んである水を流しに移してはお皿と流しを綺麗にしていく。うう・・・先生のお世話を最初に始めたころを思い出す酷さだ。もっとも爆発痕とか、ヤバい溶解液とかはないけども。それでも男の不精が詰まった空間を私が一つずつ片付けていく。錬金術を応用してスポンジや布巾の汚れを分離させ、生活用の魔法で綺麗にする。生活魔法とはクリーンアップや火打石フリントと呼ばれる攻撃には全く向かないが枯れ草に火をつけたり、汚れを落としたりする生活にあると便利な魔法だ。魔法を使える人は少ないが生活魔法だと勉強すれば使えるようになる人は多い。

「床とかは後回しにして厨房を使えるようにしないとね」

爆発して壁がひび割れたりしてないぶん修理はいらないのでむしろ楽だったかもしれない。それでも掃除は大変なもので、ひと段落する頃には夕闇が辺りを包み込む頃だった。

「よし、掃除も終わったしまずはお料理しちゃおう」

綺麗になった厨房で料理をするのは好きだ。勝手は分からないけど調味料なんかもストックはされてるみたい。
一応チェックしたので傷んでいるものもない。今日は手軽にジャガイモとベーコンを胡椒で炒めたものと持ち込んだチーズを溶かして黒パンの上に乗っける。残り物の野菜を細かく切ってスープに入れ、塩コショウで味を調えたら秘伝のコンソメ粉末で味付けもできた。

「はーい、できましたよ」
「おお、すげえ・・・久々にまともな飯だ」
「なんかすいません」

とりあえず食卓に使えそうなテーブルを引っ張り出して掃除し、その上に料理を並べる。するとおじさんは料理を拝む勢いになり、リッキーは申し訳なさそうに頭を下げる。生ごみの種類の偏り方から考えてもかなり偏った食生活だったんだろう。仕方ないとはいえ、どうにも困ったものだ。

「カミさんが死んで以来だなぁ・・・本当にありがてぇ」

食事が進むとおじさんはいつの間にか酒瓶を傾けている。リッキーはあきれ顔だが慣れているのか何も言わなかった。

「せめて俺の足がまだついてりゃなぁ・・・」

酒瓶が二つほどになったところでおじさんは寂しそうに言う。彼の話によると廃業する前は彼はベテランの鉱山夫兼冒険者であり、マトックと斧を片手にモンスターと鉱石を集めていたらしい。奥様とはその過程で知り合い、二人で貯金の末にこの宿を構えたのだという。しかし仕事納めのつもりで受けた最後の依頼でおじさんは毒で足を失ってしまい、奥様も病気がちになったそうだ。それからは宿の経営にも支障が出始め、奥様が亡くなってからは休業状態とのこと。それでもこうして此処に住み続けられるのは冒険者時代に鉱山経営の手助けをしてもらっていた貴族がおじさんの生活費を見てくれているからだそうだ。それにリッキーのアシスタント業も合わさってそこまで困窮はしていないそう。しかしドワーフ顔負けの凄い体つきだとおもったら鉱山夫もしてたんだ、納得だね。

「そうだったんですね・・・」

ふーむ、そうなると足を失っておじさんがここで腐ってしまうのはもったいない気がする。リッキーも心配だろうし、こうなれば乗りかかった船ってやつだよね。

「とりあえず泊めてもらうからにはここら辺をキレイにはさせてもらいますね」
「あぁ、好きにしてくれ」

おじさんは短くそう言うと机に突っ伏して眠りこんでしまった。仕方ないので私はおじさんの背に毛布をかけ、食器片づける。

「お姉さん、ちょうどよかった・・・これ使って」

姿が見えないと思ったらリッキーはお湯を張った桶を渡してくれた。お宿でこれは結構なサービスだと聞いた事がある。それに彼はどうやら私が使う部屋の支度もしてくれていたようだ。一階の従業員用らしい小さな部屋だが綺麗にしてあるし、ベッドのシーツも新しめだ。

「ありがとう、リッキー。今日はこのまま寝ちゃうから戸締りだけはきっちりね」
「わかった、今日はありがとう・・・」
「お礼もいいけど、こういう時はおやすみなさいでしょ?」
「・・・おやすみなさい」

ちょっと恥ずかしそうだったけど挨拶は大事。一日の終わりと始まりに交わす挨拶は親睦を深める上で大切なことだからね。私が笑顔で頷いたのを見るとリッキーはそのままスタタタと歩いて行った。

「ふぅ、いろいろと大変だったけど・・・宿代が浮いたからまあ良しとしようっと」

お湯に持ってきたタオルを浸して体を拭くとさっぱりするわね。お湯加減も結構いい感じ。リッキーも将来はこの宿を経営するのかしら。そうなったらまた利用しにきてもいいかな。
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