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旅立ちの日に
さっさともどろっと
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先生に挨拶もしてないけど子供たちに見つかるとまた大変だ。仕方ない。私はそのまま踵を返して村を出ていく。
今から戻れば明日の朝にはたどり着けるだろうか。夜につくことが出来ればそのまま水路から戻って何食わぬ顔でまた生活に戻ればいいだろう。
「今回の獲物は山賊とアンデッドらしい」
時間と場所が戻って町から少し進んだ場所で騎士団と教会の僧侶たちは山賊の根城を攻略すべく進軍していた。
「アンデッドはともかく山賊の相手となると我らでは手に余りますな」
「まさしく、そもそも僧侶には若い男はおりませんでの」
僧侶たちは不安げに呟く。この部隊の編制はとても偏っているからだ。騎士と僧侶。対人と対アンデッドの両極端でしかも双方が森林や山岳部の行動に慣れていないのかそれとも考えていなかったのか、騎兵ばかりだ。
僧侶たちはベテランの老人が男性に多く、女性は見習い、しかも彼らには僧侶としての経験しかない。人々の為に労を惜しまない彼らであったが戦闘に関してはからっきしだ。
「冒険者の方々は来てくれませなんだか・・・」
「なんでも騎士の方と揉めたとか・・・」
「刃傷沙汰になったと私は聞きました・・・一体何があったのやら」
僧侶たちは冒険者の事を騎士達よりもずっと評価していた。なぜならば普段から僧侶たちの護衛としてアンデッドの退治に同行するのは冒険者がずっと多かったからだ。彼らは騎士達よりもより身近なところで勤勉に働き、その能力を見せていた。
「彼らは人相手でも魔物相手でも立ち回り方を弁えていましたからね」
「そもそも彼らにここら辺の土地勘があるのでしょうか?」
僧侶たちは老人も若者も全て王都で勉学を修め、それから故郷の町へ帰ってきたものが多い。それ故に町の周辺については多少なりとも地理に関して心得がある。しかし騎士達はそれが怪しいばかりか山道を歩くのにつらそうな重装備だ。山道はもちろん商人が普段から使う通り道も完全に舗装されているわけではないので馬が可哀想なほどだ。
「とりあえず・・・いざという時の為に」
そう言うと僧侶の一人が僧侶全員にポーションを配った。回復の魔法があるがそれとて万能ではない。しかも使える人が限られているのだ。
「それと・・・これも」
男性にはショートソード。女性には腕を守るバックラーが配られた。杖は一応メイスの代わりにもなるよう設計されているが使う側がそもそも普段机に向かっているような人たちなのでお察しである。屈強な僧侶は詠唱しながら迫るアンデッドの頭を粉砕するような猛者もいるがひと握りだし、そう言った人たちはもともとが剣士だったり騎士だったりと経歴によるものが多い。
「だ、大丈夫でしょうか・・・」
不安を他所に騎士達は馬を進ませ、僧侶たちはそれに続く。騎士達はというと僧侶たちとは逆に自信をにじませていた。
「山賊どもの根城はどのようなものでしょうかね」
「大抵は汚い、それに防備など考えられていないモノが多い」
騎士達にとって山賊とはあくまでただのはぐれ者、社会のつまはじき者だった。大抵の山賊は大した統率もなく騎士や訓練を積んだ戦士にとっては大した脅威にはなれなかった。彼らの前身が一般人であったことがそれを助長した。そもそも学べず、食えず、犯罪に走るしかなかった乱暴者が山賊なのだ。弓なども持っていたりはしたが騎士達の金属製の鎧や質のいい剣をどうにかできるだけの装備を持っていなかった。
「しかし人質が居る可能性はある、油断はするな」
「・・・人質と言っても平民だろうが、気にする必要はない」
「・・・」
騎士を統率するメンバーの一人がそう言うと階位が下のものは眉をひそめたがリーダーはどこ吹く風。典型的な貴族至上主義であったが、その為に彼らは冒険者側の支援を受けられずにいた。
やがてやや楽観的な騎士と不安げな僧侶たちは徐々に町付近にある山の中腹まで来ていた。冒険者の報告ではここら辺がすでに危険地帯であったはずだったが、下々の言葉などしらない彼らは自身の経験則に従い薬草の群生地近くだろうと踏んで馬を進めていた。
(来たな・・・)
それを虎視眈々と狙う視線に気づかなかった。仮に気づいたとしてそれはもう手遅れだった。
「なんだ・・・?うわっ!」
背後から突然投石が行われた。バックラーを咄嗟に構えたものは良かったが僧侶の一部がその投石をもろに浴びる羽目になった。混乱する僧侶たちは攻撃を受けたにも関わらず負傷した僧侶に駆け寄り、迎撃態勢を取らなかった。
「おらっ!どきやがれクソ坊主どもっ!」
混乱する僧侶たちをかき分けるように山賊達が巧妙に隠されたわき道から登場する。そして混乱した僧侶たちを手あたり次第に捕まえ始め、残った半数が騎士を背後から急襲する。
「隊長!背後から山賊が!」
「な、なにっ!」
僧侶たちの悲鳴と騎士達の怒号を受けて隊長たちは混乱を収束すべく馬を転回させる。
今から戻れば明日の朝にはたどり着けるだろうか。夜につくことが出来ればそのまま水路から戻って何食わぬ顔でまた生活に戻ればいいだろう。
「今回の獲物は山賊とアンデッドらしい」
時間と場所が戻って町から少し進んだ場所で騎士団と教会の僧侶たちは山賊の根城を攻略すべく進軍していた。
「アンデッドはともかく山賊の相手となると我らでは手に余りますな」
「まさしく、そもそも僧侶には若い男はおりませんでの」
僧侶たちは不安げに呟く。この部隊の編制はとても偏っているからだ。騎士と僧侶。対人と対アンデッドの両極端でしかも双方が森林や山岳部の行動に慣れていないのかそれとも考えていなかったのか、騎兵ばかりだ。
僧侶たちはベテランの老人が男性に多く、女性は見習い、しかも彼らには僧侶としての経験しかない。人々の為に労を惜しまない彼らであったが戦闘に関してはからっきしだ。
「冒険者の方々は来てくれませなんだか・・・」
「なんでも騎士の方と揉めたとか・・・」
「刃傷沙汰になったと私は聞きました・・・一体何があったのやら」
僧侶たちは冒険者の事を騎士達よりもずっと評価していた。なぜならば普段から僧侶たちの護衛としてアンデッドの退治に同行するのは冒険者がずっと多かったからだ。彼らは騎士達よりもより身近なところで勤勉に働き、その能力を見せていた。
「彼らは人相手でも魔物相手でも立ち回り方を弁えていましたからね」
「そもそも彼らにここら辺の土地勘があるのでしょうか?」
僧侶たちは老人も若者も全て王都で勉学を修め、それから故郷の町へ帰ってきたものが多い。それ故に町の周辺については多少なりとも地理に関して心得がある。しかし騎士達はそれが怪しいばかりか山道を歩くのにつらそうな重装備だ。山道はもちろん商人が普段から使う通り道も完全に舗装されているわけではないので馬が可哀想なほどだ。
「とりあえず・・・いざという時の為に」
そう言うと僧侶の一人が僧侶全員にポーションを配った。回復の魔法があるがそれとて万能ではない。しかも使える人が限られているのだ。
「それと・・・これも」
男性にはショートソード。女性には腕を守るバックラーが配られた。杖は一応メイスの代わりにもなるよう設計されているが使う側がそもそも普段机に向かっているような人たちなのでお察しである。屈強な僧侶は詠唱しながら迫るアンデッドの頭を粉砕するような猛者もいるがひと握りだし、そう言った人たちはもともとが剣士だったり騎士だったりと経歴によるものが多い。
「だ、大丈夫でしょうか・・・」
不安を他所に騎士達は馬を進ませ、僧侶たちはそれに続く。騎士達はというと僧侶たちとは逆に自信をにじませていた。
「山賊どもの根城はどのようなものでしょうかね」
「大抵は汚い、それに防備など考えられていないモノが多い」
騎士達にとって山賊とはあくまでただのはぐれ者、社会のつまはじき者だった。大抵の山賊は大した統率もなく騎士や訓練を積んだ戦士にとっては大した脅威にはなれなかった。彼らの前身が一般人であったことがそれを助長した。そもそも学べず、食えず、犯罪に走るしかなかった乱暴者が山賊なのだ。弓なども持っていたりはしたが騎士達の金属製の鎧や質のいい剣をどうにかできるだけの装備を持っていなかった。
「しかし人質が居る可能性はある、油断はするな」
「・・・人質と言っても平民だろうが、気にする必要はない」
「・・・」
騎士を統率するメンバーの一人がそう言うと階位が下のものは眉をひそめたがリーダーはどこ吹く風。典型的な貴族至上主義であったが、その為に彼らは冒険者側の支援を受けられずにいた。
やがてやや楽観的な騎士と不安げな僧侶たちは徐々に町付近にある山の中腹まで来ていた。冒険者の報告ではここら辺がすでに危険地帯であったはずだったが、下々の言葉などしらない彼らは自身の経験則に従い薬草の群生地近くだろうと踏んで馬を進めていた。
(来たな・・・)
それを虎視眈々と狙う視線に気づかなかった。仮に気づいたとしてそれはもう手遅れだった。
「なんだ・・・?うわっ!」
背後から突然投石が行われた。バックラーを咄嗟に構えたものは良かったが僧侶の一部がその投石をもろに浴びる羽目になった。混乱する僧侶たちは攻撃を受けたにも関わらず負傷した僧侶に駆け寄り、迎撃態勢を取らなかった。
「おらっ!どきやがれクソ坊主どもっ!」
混乱する僧侶たちをかき分けるように山賊達が巧妙に隠されたわき道から登場する。そして混乱した僧侶たちを手あたり次第に捕まえ始め、残った半数が騎士を背後から急襲する。
「隊長!背後から山賊が!」
「な、なにっ!」
僧侶たちの悲鳴と騎士達の怒号を受けて隊長たちは混乱を収束すべく馬を転回させる。
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