ノーライフ・ガールは博士の最高傑作

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旅立ちの日に

はてさて、おじさん達はどうなるのか

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リンプスさんが商家の人たちや農家さん、それにドレイトンさんに聞きこんだところ確かに荷物が無くなったというハナシが出てきたが・・・。

「なんか盗賊や山賊のそれとは随分と違うやり口だな、お前たちは」

リンプスさんが呆れた様子で戻ってきたので事情を尋ねると・・・。

まず、最初で最後の彼らの被害者は農作物の出荷を任された村の老人だった。ドレイトンさんの馬用のそれとは違い、小型の荷車を自ら押して進む健脚のお爺さんだったのだがそこに件のおじさん達がわらわらと押し寄せて荷物を持ってあげると近づいたのだそうだ。お爺さんは親切を断る事なく進んでいたのだがその内、一人、また一人と荷物を抱えたおじさん達が姿を消していき気が付いたらお爺さんは空っぽの荷車を押していたのだと言う。
最後の一人が『ちょっと待ってて』と言い残したそうだが商品が無くなってしまっては町に行く理由もないとお爺さんは一人で引き返してしまったそうだ。

「・・・セコくない?」
「平和的だし・・・」

気配と共に姿を消すスキルだけは一人前だったらしく一般人のお爺さんでは全く気が付かなかったそうだ。

「とりあえずしでかした事は本当らしい、やけにボロボロの服を着たおっさん達だったと老からも連絡が来てる」

どうやら完全に信じたというよりはおじさん達の腰に提げた剣などを警戒して逆らわなかっただけだろうか。とりあえずはおじさん達の刑が確定したので自警団の中から王都で法律を勉強し、資格を取った人が呼ばれてくる。

「えー・・・それでは、ごほごほ・・・簡易裁判をおこないますぅ・・・」

本の虫という響きがぴったりな不健康そうなお兄さんがやってきた。この年齢で資格がもらえたんだから優秀なのは間違いないんだろけど大丈夫かな・・・体調的な意味で。そう言えばこの人何回か先生の診療に来てたな。
基本寝不足と栄養失調だと聞いた。苦学してるからって孤児院の炊き出しに参加してたこともあったね。
ちゃんと寝ないし、食べないしで先生が怒ってた記憶がある。

「それでは窃盗行為を行ったことに関して申し開きはありますか?代表者前へ」

今回は自白と被害が一致しているとのことで早速刑罰の量について話し合いが始まった。

「えっとそれでは・・・俺・・・じゃなくて私、クリムトが発言しても良いでしょうか」
「認めます、クリムト氏」
「えー我らは王都よりやって来て・・・はっきり言いますとお金も居場所もありません。ですので刑罰に関しては労働刑が適当かと」
「確かに、担保になるものもありそうにないですね。剣と槍は没収しますがそれについては?」
「問題ありません」

見の証を立てるものはおろか現金すらもっていない。持ち物もやや古い剣や槍くらいで、テントなどの旅行道具は取り上げてはいけない決まりになっているので罪を償ったら返さなければならない。とどのつまり労働でしか金銭の被害を補填できないのだ。

「えーそれでは・・・刑罰の執行中ということを証明するため手枷を嵌めていただきますね」

刑が確定して彼らに手枷が嵌められる。これをつけたまま生活する事になるが枷自体はそれほど大きくないし両手を繋ぐチェーンはやや長い。これは捕まえるというより目立つ身分紹介みたいなものだ。

「それでは簡易裁判を終了いたします・・・ごほごほ」

枷は沢山ある。先生が依頼を受けてたくさん作ったからだ。つけやすく、外しにくい。しかし着け心地は悪くなく労働の邪魔になりにくい絶妙なバランス。ただ鍬とかは振りにくいかもね。

「それでは・・・あのリーシュ・・・さん」

枷を受け取って自分で嬉々としてつける山賊のおじさん達を後目に私に声をかけてくるお兄さん。なんだろうか。

「貴女と先生のお陰でなんとか裁判官として此処に戻ってこられました・・・何とお礼をいったらいいか」
「先生はともかく、私は何もしてないわ」
「いえ、その・・・ごほっ」

首を傾げるとお兄さんは困ったように頭を掻くと同時に器用に咳込んだ。

「?・・・まあ、お礼は受け取っておくけれど・・・今のままじゃ長生きできそうにないわよ?」

先生はこのお兄さんの体調を時折心配していた。医者が心配するのだから彼の不養生が長いのもあるが体質的にも問題があるからということだ。

「私は私より早く死にそうな人は嫌だからせいぜい養生すること、わかった?」
「・・・善処します」
「よろしい、それじゃあまたね」

手を振って私は詰め所を後にする。フェルグスのおじさん達も心配してるだろうしコッチの道を早いとこ掃除して町に戻らないと・・・。

「リーシュ・・・さん」
「ちょいと高嶺の花すぎるんじゃないかな」

うっとりするお兄さんこと法律家のグルンデータにリンプスがそう言ったが彼の耳には届かず、彼は密かに健康の改善を決意するのだった。
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