ノーライフ・ガールは博士の最高傑作

ファウスト

文字の大きさ
92 / 100
次の町 モリッツ

酔っ払いと私達

しおりを挟む
「龍の舌は何といってもキノコとは思えないほどの美味しさです!」

そう言うと彼女はナイフを取り出して表面を軽く切った。すると肉汁を思わせるような透明な水分が染み出し、ソースと混じって香ばしい匂いが。

「しかもこれだけの汁気をもっているのに・・・それっ」

どこからか取り出したソース用の小瓶を取り出した彼女は切れ込みにソースを垂らす。するとソースが染み込んでいくではないか。

「ソースとの馴染みかたもこの通りです!」
「凄いわね」

語彙がなくて残念だけどとにかく美味しそうだ。おすすめするだけある。

「他には・・・」
「ごめんなさい、とにかく一度食べてみてもいい?」

冷める冷める!せっかくなんだから出来立てを食べてみたいんだけど!

「おっとっと、そうでした!それでは次はまた機会に!」

そう言うと思い出したように彼女は業務に戻った。周囲の人は余り迷惑そうというか、怒った様子が無いあたりに彼女の癖というか名物的なものなんだろうか。

「それじゃあいただきますか・・・って貴方たちはまったく待ってくれないのね」
「あれ、終わった?食べないと冷めちゃうよ」
「そーそー、量がたくさんあるし」

よく見るとジェイナとリッキーは既に半分以上食べてしまっていた。先ほどは対応に不満だらけだったが労働者向けの食事が多くみられるこの町の例に洩れず二人の食べるステーキもボリューム満点でジェイナはともかくリッキーは少し苦戦している。しかし二人の食べるスピードを考えると味も悪くないようだ。
とりあえず一口、切って食べてみる。鉄板が焼いてあるのかそれほど冷めた感じもなかった。それになにより噛んだらまるで、本当にお肉みたいに肉汁があふれる。バターの香りとしつこくない旨味がマッチしてとても美味しい。

「確かにこれはオススメするだけあるわ、美味しい」

正直、キノコという食材を甘く見ていたかもしれない。そこまで下に見ていたわけでもなかったけど・・・。
こういうのを知ったら確かに誰かにオススメしたくなるわね。

「ホントに美味しいの?」
「ええ、次は自分で頼んでみるといいわ」
「ちょっと頂戴?」

フォークを手にこちらを見るジェイナ。しかし。

「ダメ、待ってくれない子にはあげない」
「けちー」
「リッキーを手伝ってあげなさいよ、そろそろ満腹なんじゃない?」

ジェイナがむくれた様子で言うが食べ終わってマスク姿なので可愛げもなにもあったものではない。
それはそれとしてリッキーが普段食べる量で考えると此処の町はちょっと多めだ。育ち盛りだから大丈夫かな、太らないと良いけど。

「ううぅ・・・もうお腹いっぱい・・・」

私が言うが早いかリッキーがギブアップ宣言した。ジェイナがリッキーが押しのけたお皿を受け取ってもぐもぐと食べ始める。流石というべきか彼女が食べ始めるとあっという間だ。

「食べすぎると太るわよ?」
「大丈夫、むしろ食べないと痩せちゃう」

何という高燃費ボディだろうか。まあ、ジェイナが摂取するエネルギーはジョンにも供給されるようなのでそれも仕方ないのだろうか。実質二人分だし。

「おう、別嬪さんぞろいの席に空きがあるじゃねえか~、酌してくれよぉ」

食べ終わりかける頃には回りはお酒の回った酔っ払いだらけになり、時折こうして絡んでくるおじさんが増えて来た。

「嫌、自分の席に戻りなさいよ」
「そういうなよぉ、ほら、チップだすよぉ・・・」

銅貨をちらつかせながら言う男性を押しのけて躱していたがあんまりしつこいのでどうしようかと思っているとジェイナが立ち上がった。

「うるさいおっさん」
「お、お、お、おーっ?!」

引きずっておじさんを連れて行くと服の襟を掴んで壁の高いところに引っ掛けて吊り上げてしまった。

「そこで飲んでるといい、景色も悪くないでしょ?」
「えー、酌してくれよぉ」
「私で我慢しな」
「がははー、ならいいぞお」

大らかなのか強かに酔っているのか酔っ払いは全く怒った素振りもない。それどころかジェイナが乱暴に注いだジョッキを受け取ってニコニコしている。ジェイナはあきれた様子でため息をつくとそのまま戻ってきて何事もなかったかのように果実水を飲み始める。

「悪い人じゃなさそうだけどねぇ・・・」
「仕方ない、酔っ払いはああいうもの」

覆面が注いだ酒が美味いー!と宙ぶらりんで叫ぶおじさんとそれをみて笑いながら乾杯するほかのおじさん達。
当たり前だが果実水しか飲んでいない私達はかなり浮いてしまっている。

「そういえばおじさん達遅いわね」
「遅いね・・・と噂をすれば」

げっそりした男の人とこれまたげんなりした様子のおじさんがこちらに戻ってきた。

「大丈夫?」
「昼に食べたモン全部出しやがったよ、あーあ・・・」

男の人を椅子に座らせるとおじさんも同じように椅子を引いて座る。

「酷い有様ね、しばらくは消化にいいモノ食べないとすぐトイレに逆戻りよ」
「マジかよ・・・この町でそんなとこあるのか?」
「さあてね、無いならしばらくはギルドで療養生活かしら」

そう考えると病人の為の食事を作るところとしてギルドで商売を始めるのもいいかもしれないわね。二日心によく聞く薬や食べ物とセットにすれば一般にも利益が見込めるかも。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

RIGHT MEMORIZE 〜僕らを轢いてくソラ

neonevi
ファンタジー
運命に連れられるのはいつも望まない場所で、僕たちに解るのは引力みたいな君との今だけ。 そんな風に引き寄せ合う者達が、世界の波に翻弄されながらも抗い生きる物語。 ※この作品は小説家になろうにも掲載されています

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

処理中です...