ノーライフ・ガールは博士の最高傑作

ファウスト

文字の大きさ
95 / 100
次の町 モリッツ

お休み

しおりを挟む
宿舎に戻ると一階は既に凡そが片付いており、一室にたくさんベッドが並んだ場所があった。先に連れて来た彼女達は子供たちと共にそこにおり、こちらに気づくと何人かがこちらに来た。

「おかえりなさい、ご無事でなによりです」
「ご無事で、って随分と・・・いや、ただいま、こんな時間まで起きてて大丈夫?疲れてない?」

大げさ、と言いかけて私はなんとか言葉を飲み込んだ。彼女達は何の変哲もない日常から突然此処に連れてこられたのだ。いつ何が起こるかわからないのは彼女達にとって身に染みていることだろう。

「ここもすこし汚れてはいましたが向こうに比べれば誤差みたいなものです。一通り寝泊りするだけのものはありますし」

ベッドは数台くっつけて子供たちを一か所に集めて寝かせ、それを挟むように大人が寝るスペースを作っている。
まだすこし埃っぽい気もするがそこは魔術師である私の出番だろう。

「ちょっと埃っぽいのはこうすればいいのよ」

指を弾いて魔法を発動する。生活用に改良された魔法だ。ベールの様に部屋を包んだ埃や微細なゴミが風に包まれ
人を避けて移動し、私が明けたドアを抜けて外に飛んで行った。

「今何を?」
「ん?ちょっとね」

埃っぽい匂いが消えたので綺麗にはなっただろう。残りのシーツなんかは洗わないといけないかもだけど。
部屋は照明がほとんどなく薄暗いのでおじさんやジェイナのように夜目の利く人じゃないと何が起こったかわからなかっただろうか。

「トンでもねえな、風の魔法か?」
「まあね」

実際にはただの風だと吹き飛ばすだけなのでいろいろ問題があるのだが風の魔法で塵に魔力を纏わせてからそれをそのまま風の魔法で操る操作をするわけだ。おじさんが驚いているのは普通のあの手の魔法だと人のいるところで埃を飛ばせば大変な事になるからだ。微細なコントロールが必要だし、魔力を小さいものに限定して行うのは思ったよりも難しい。

「それじゃあ明日からは此処の人の指示に従ってちょうだい、できる事は私達もしてあげるけど最後は自分でなんとかしてもらわないといけないからね」
「あの、それで・・・私達はいつまで此処にいてもいいんでしょうか?」
「ん?あぁ、それだけど・・・ま、この宿舎に他の利用者がくるまではいいんじゃない?保守点検をそっちでやってくれればさらにいいでしょうし、そこまで不安ならここで働けるか聞いてみたら?」

別嬪さんがここで働いてくれれば人は自然と増えるかもしれないしね。労働者の夫婦なんかには共働きで子供の面倒見るのに困ってる人もいるかもしれない。

「保育所だっけか・・・」

先生が開いていた孤児院、その中には両親が仕事だからとしばらく預けられる事もあった。大抵は一か月も開かない内にどちらかが迎えに来て帰っていくのが殆どだ。時折、そのまま孤児院で引き取ることになる不幸もあったが。
それでも共働きの人たちにとって子供を預けられる信頼のある施設はとても便利なものだ。そこにちょっとした教育などもあれば・・・っていうか先生のスタイルが実施できたらどこでも流行りそうな気はする。

(ま、それをするにはかなりのお金がいるけど・・・どうにかそれも商売にできないものかなぁ)

先生は私の知らないたくさんの功績があったのか、椅子に座っているだけでお金の詰まった袋が送られてきた。
その山盛りのお金を元手に先生は子供たちを育て、教育し、その子供たちが時折貴族の養子として引き取られて行って・・・さらに積まれるお金の袋。それくらいになればそんな施設も作れるんだろうなぁ。

「ふぁぁ・・・とりあえず私達も何処か場所とって寝ましょう」

欠伸が漏れ、リッキーがうつらうつらとし始めたのでそろそろ寝ようかと思うと女性たちが私に再び声をかけて来た。

「あの・・・」
「?」

端っこを陣取ろうとした私達を捕まえて彼女達はなぜか自分達の傍へと引っ張ってくる。

「どうしたのよ?」
「いや、その・・・あんまり離れてほしくなくて・・・」

困っておじさんを見るとおじさんにも何人かがやって来て近くのベッドに引っ張られている。ジェイナとリッキーも同様だ。リッキーはそもそも意識がほとんどないので運ばれている感じだが。

「す、すみません・・・ですが私達には頼る人が貴方達しかいないんです、いざとなったら私達は自分どころかこの子たちも守れません・・・あんなところにはもう戻りたくないし、戻らせたくないんです・・・」
「そう、そう言う事ね」

まだまだ彼女たちの恐怖は抜けてない、此処はまだ彼女達にとって見知らぬ場所のままなのだ。マックさんは優しくて正義漢なんだろうけど、この人たちにとっては『怖い男の人』に似てしまっても居るのだ。可哀想だけど強面だし。入り口に近いところにおじさん、次にジェイナ、それから私とリッキーでそこから奥に子供たち。私達と子供たちの間に女性たちが居る感じ。

(まあ、それで安心してくれるなら安いもんだけども)

おじさんと同等の扱いをされているジェイナが地味に傷ついている気がするがそこは後でフォローしてあげようっと。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

RIGHT MEMORIZE 〜僕らを轢いてくソラ

neonevi
ファンタジー
運命に連れられるのはいつも望まない場所で、僕たちに解るのは引力みたいな君との今だけ。 そんな風に引き寄せ合う者達が、世界の波に翻弄されながらも抗い生きる物語。 ※この作品は小説家になろうにも掲載されています

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

処理中です...