97 / 100
次の町 モリッツ
朝食とこれから
しおりを挟む
なんだか昨日助けた女性の中の一人の視線が妙に気になる。熱っぽいというかなんというか。
「とりあえず全員揃った?」
ギルドの二人も座らせて食事の席につかせる。受付の人はまだこっくりこっくりとしているがそれでも一応全員が席についた。
「一日の始まりは朝ごはんから、ってなわけで・・・皆手を合わせてー」
先生が教えてくれた食事の前の挨拶を此処でも行ってみようとおもう。習慣をつけて、みんなで連帯感を持ってもらおう。意味としてもいいものがあるし。
「?」
「えっと・・・」
ジェイナとおじさんとリッキーは知っているのでよどみなく、他の人たちもそれを真似するようにして全員が手を合わせる。
「これは食事の前に全ての食材と、作った人に感謝を告げる意味合いがあるから。皆で食事をするときはもちろん、個人で食べる時もできるだけしてみてね」
私がそう言うと皆は感心したように声をもらし、全員が改めて合わせた手を見つめる。
「最後にこう一言言うの。『いただきます』ってね。それじゃあいただきます!」
「「「「いただきまーす」」」」
皆が一斉に言い、それから自分達のお皿の料理を食べ始める。全員が思い思いのペースで食べ進め、お皿はどんどんと空になっていった。
「全員ちゃんと食べられた?それじゃあ始まりの挨拶があるのならもちろん、終わりの挨拶もあります」
頃合いを見て立ち、再び全員の注目を集めてから言う。全員がちゃんと聞いてくれているようでうれしい。
「最初と同じように両手を合わせて、こう言うの、『ご馳走様でした』ってね」
私がそう言って再び手を合わせると全員が同じように手を合わせる。
「それじゃあ、『ご馳走様でした』!」
「「「「「ご馳走さまでしたーっ」」」」」」
子供たちは笑顔で、そしてそれを見守る大人たちも笑顔。とてもよろしい。こういった何気ない習慣こそが幸せの第一歩なのだろう。先生に、そして孤児院の皆で覚えた大切な事。穏やかで、優しいこと。
「お嬢ちゃんは面白い事をしってるんだな」
マックさんがそう言うと髭をいじって笑う。そんな彼の顔には素直に感心した様子で、なんだかむずがゆくなる。
「そうかな、教わったことばかりだけど」
「あたりめえだろ、そうじゃなきゃお前さんが出まかせ言ってることになるぞ」
おじさんが隣から笑いながら言うとマックさんも笑う。豪快な二人が笑うと机が揺れるような感覚に陥るくらいだ。
「学ぶ機会があって、それを良いなと思う感覚があるならそれは素直にいいことじゃねえか」
「知識と知恵の違いに似てるってもんだ」
二人はやはり長い間パーティを組んでいたからか呼吸がぴったり合っている。そんな二人に褒められるとなんとなく気恥ずかしくなってプイとそっぽを向いた。すると再び件の女性と目があった。
「貴女は・・・?」
「ファティナと申します、自己紹介が遅れてしまって申し訳ありません」
ファティナと名乗った女性は捕まっていた女性たちの中でも飛びぬけて美しく、一晩の休息ではまだまだくたびれた様子が抜けきってはいないもののそれでも目を見張るものだ。
「ファティナさん、貴女は・・・」
「そんな、呼び捨てでかまいません」
「えっと・・・それじゃあファティナ、貴女達にはこれからこのギルドで働いてもらうわけなんだけどそれは大丈夫?」
「何をするのでしょうか?」
そう言う彼女に私は少し考える。彼女達はしばらくは此処で仕事をしてと言いたいがそもそもこのギルドは閑古鳥が鳴いている状態なのだ。まあその分仕事を教える時間もたくさんあるという事でもあるのだけど。
「ここでは本来近所の人から依頼をもらって、それをこのギルドに所属する人に斡旋してあげて、その手間賃で生計を建てるものなんだけど・・・」
思わずため息が漏れ、私が考える事が少しわかったのか彼女も少し苦笑する。そう、仕事がないのだ。雇う余裕というより雇っても回せる仕事がない。という現実がある。
「現状はそれも厳しい、とりあえず私が薬草の目利きと調合が出来るからそこからかな。リッキー・・・えっと小さい子達と年の近い子がいるんだけどその子に薬草の種類や簡単な調合なんかを教えていくつもりだからゆくゆくはその子と私で調合と目利き、貴女達にそれの受付とかをやってもらえたらいいかも」
「わかりました、皆とも相談はしますが・・・概ねの了承はすぐにでも取れるでしょう。文字は少し苦労はしますが私は理解できます、仕事が軌道に乗るまでには皆にも教えておきましょう」
ファティナはそう言うとほほ笑んだ。身なりは粗末なのだがどうにも気品というか、身のこなしに知性が感じられる。いいとこの出なのだろうか。
「そう言う事なら任せるわ、とりあえず私達は手に付けた仕事をこなさないといけないから」
そう言うと私はジェイナを連れてギルドを出る事にした。今日はあそこの店に行って、みんなの分の稼ぎを捻出しなければならないからだ。ジェイナは店に属するから良いとして、私は客商売だから何かしらの工夫や知識が必要になるかな・・・不安だ。
「とりあえず全員揃った?」
ギルドの二人も座らせて食事の席につかせる。受付の人はまだこっくりこっくりとしているがそれでも一応全員が席についた。
「一日の始まりは朝ごはんから、ってなわけで・・・皆手を合わせてー」
先生が教えてくれた食事の前の挨拶を此処でも行ってみようとおもう。習慣をつけて、みんなで連帯感を持ってもらおう。意味としてもいいものがあるし。
「?」
「えっと・・・」
ジェイナとおじさんとリッキーは知っているのでよどみなく、他の人たちもそれを真似するようにして全員が手を合わせる。
「これは食事の前に全ての食材と、作った人に感謝を告げる意味合いがあるから。皆で食事をするときはもちろん、個人で食べる時もできるだけしてみてね」
私がそう言うと皆は感心したように声をもらし、全員が改めて合わせた手を見つめる。
「最後にこう一言言うの。『いただきます』ってね。それじゃあいただきます!」
「「「「いただきまーす」」」」
皆が一斉に言い、それから自分達のお皿の料理を食べ始める。全員が思い思いのペースで食べ進め、お皿はどんどんと空になっていった。
「全員ちゃんと食べられた?それじゃあ始まりの挨拶があるのならもちろん、終わりの挨拶もあります」
頃合いを見て立ち、再び全員の注目を集めてから言う。全員がちゃんと聞いてくれているようでうれしい。
「最初と同じように両手を合わせて、こう言うの、『ご馳走様でした』ってね」
私がそう言って再び手を合わせると全員が同じように手を合わせる。
「それじゃあ、『ご馳走様でした』!」
「「「「「ご馳走さまでしたーっ」」」」」」
子供たちは笑顔で、そしてそれを見守る大人たちも笑顔。とてもよろしい。こういった何気ない習慣こそが幸せの第一歩なのだろう。先生に、そして孤児院の皆で覚えた大切な事。穏やかで、優しいこと。
「お嬢ちゃんは面白い事をしってるんだな」
マックさんがそう言うと髭をいじって笑う。そんな彼の顔には素直に感心した様子で、なんだかむずがゆくなる。
「そうかな、教わったことばかりだけど」
「あたりめえだろ、そうじゃなきゃお前さんが出まかせ言ってることになるぞ」
おじさんが隣から笑いながら言うとマックさんも笑う。豪快な二人が笑うと机が揺れるような感覚に陥るくらいだ。
「学ぶ機会があって、それを良いなと思う感覚があるならそれは素直にいいことじゃねえか」
「知識と知恵の違いに似てるってもんだ」
二人はやはり長い間パーティを組んでいたからか呼吸がぴったり合っている。そんな二人に褒められるとなんとなく気恥ずかしくなってプイとそっぽを向いた。すると再び件の女性と目があった。
「貴女は・・・?」
「ファティナと申します、自己紹介が遅れてしまって申し訳ありません」
ファティナと名乗った女性は捕まっていた女性たちの中でも飛びぬけて美しく、一晩の休息ではまだまだくたびれた様子が抜けきってはいないもののそれでも目を見張るものだ。
「ファティナさん、貴女は・・・」
「そんな、呼び捨てでかまいません」
「えっと・・・それじゃあファティナ、貴女達にはこれからこのギルドで働いてもらうわけなんだけどそれは大丈夫?」
「何をするのでしょうか?」
そう言う彼女に私は少し考える。彼女達はしばらくは此処で仕事をしてと言いたいがそもそもこのギルドは閑古鳥が鳴いている状態なのだ。まあその分仕事を教える時間もたくさんあるという事でもあるのだけど。
「ここでは本来近所の人から依頼をもらって、それをこのギルドに所属する人に斡旋してあげて、その手間賃で生計を建てるものなんだけど・・・」
思わずため息が漏れ、私が考える事が少しわかったのか彼女も少し苦笑する。そう、仕事がないのだ。雇う余裕というより雇っても回せる仕事がない。という現実がある。
「現状はそれも厳しい、とりあえず私が薬草の目利きと調合が出来るからそこからかな。リッキー・・・えっと小さい子達と年の近い子がいるんだけどその子に薬草の種類や簡単な調合なんかを教えていくつもりだからゆくゆくはその子と私で調合と目利き、貴女達にそれの受付とかをやってもらえたらいいかも」
「わかりました、皆とも相談はしますが・・・概ねの了承はすぐにでも取れるでしょう。文字は少し苦労はしますが私は理解できます、仕事が軌道に乗るまでには皆にも教えておきましょう」
ファティナはそう言うとほほ笑んだ。身なりは粗末なのだがどうにも気品というか、身のこなしに知性が感じられる。いいとこの出なのだろうか。
「そう言う事なら任せるわ、とりあえず私達は手に付けた仕事をこなさないといけないから」
そう言うと私はジェイナを連れてギルドを出る事にした。今日はあそこの店に行って、みんなの分の稼ぎを捻出しなければならないからだ。ジェイナは店に属するから良いとして、私は客商売だから何かしらの工夫や知識が必要になるかな・・・不安だ。
0
あなたにおすすめの小説
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
RIGHT MEMORIZE 〜僕らを轢いてくソラ
neonevi
ファンタジー
運命に連れられるのはいつも望まない場所で、僕たちに解るのは引力みたいな君との今だけ。
そんな風に引き寄せ合う者達が、世界の波に翻弄されながらも抗い生きる物語。
※この作品は小説家になろうにも掲載されています
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる