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ガルデンヘイム王国王都で

龍の契約 その2

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「ちょっと待って聞いてない」
「うるさい、今いいところだから」
「スカサハ様、我等もわからんのですが」

口上を書ききるまで待ってくれると思ったが周りから質問が上がるので仕方なく中断して契約書を手のひらに浮かべたまま視線を皆に戻した。

「なに?」
「すみません、契約術に誰かを引き合いに出すのは当たり前なのですが・・・いま、五龍様の全てをお出しになりませんでしたか?」

契約術には保証人を立てる事はこの世界でも常識らしい。借金の連帯保証人ではないがそれと似たようなものでいざという時に精霊や人間の魔力で契約を保証する事ができる。霧散してしまうような小さな魔力でも契約術なら長期間保持できるし、首輪を縮めたり、心臓を止めたりといったキツイが小さな力で可能な事は人間の魔力でも可能だ。単純な契約術は要はきまった行動を取ると仕掛けを発動させるセンサー機能のようなものだ。
その中で私はそれより遥かに高度な契約術を使っていることになる。これはさらに高い自由度や細かい複数の条項を決定したりする際に必要になるもので大抵は精霊や契約の神様なんぞを出したりするらしいがそんな神さま知らないっていうか、私はいない事を知っているのであやふやな偶像や私からすれば低級の精霊ではなく本物を保証人にしたわけだ。
精霊に契約の保証を頼むのは魔力と会話で可能だが私は魔力的にもコネ的にも師匠達にお願いできるので精霊をすっ飛ばして最上級の契約術を使えたりするのだ。

「そうだけど?」

そういうと皆一様に頭を抱え、ルーンに至っては滝のように汗を掻いている。

「世界を統べる精霊の王たる五龍が監視する契約・・・」
「違反者には死どころのハナシでは・・・っていうか・・・なんで許可され・・・えっ」
「ボクも契約してくれたらいいのになー・・・」

お坊ちゃんがなんか言ってるのはスルー。契約書には既に師匠達のサインが刻まれており、契約書としての効力を発動する機会を今か今かと待っている状態だ。
それを見て真っ白になっているルーンちゃん。そんなに汗かいて大丈夫かな?

「ルーン、アークイラ。汝、我との契約を結ぶか?『命尽きるまで我が愛しき姫君の従者となり、姫君の命令を至上の命題として生きる代わりに姫君の祝福を受ける覚悟があるか?』」

途中から契約書を介して師匠の一人の火龍師匠の声が部屋に響く。その声の圧倒的な威厳に皆が一斉に膝をついた。

「『祝福を受ける代償としてはあまりにも軽い、汝に断る道は無いが・・・あえてこのまま惨めに命を終えるか、希望を掴み一生を生きるか選ばせてやろう』」

言い終わるが早いか彼女の周りを五色の光が囲む。師匠オールスターである。

「あ・・・ああ・・・」

震えて固まっているルーンを急かすように五色の光は地面に線を描き星型の結界の中に彼女を閉じ込める。

「ルーン、選びなよ。楽しいことを探しに行くか、終焉を迎え入れるか・・・選ぶんだよ」
「え・・・えらぶ!選びます!貴女と共に生きます!」

結界の中に入り、再び手を差し伸べる。すると彼女は今度は縋りつくように手を取り、目から涙をこぼしながらうなずいた。

『契約は成った!我等は今よりこの契約を阻害するあらゆる障害に我等の持ちうるすべてを持って跳ね除け!押し潰し!粉砕する!』

火龍師匠の声と共に契約書は炎に包まれ、溶けた金属のようになってルーンの首に巻きついた。

「あ・・・がっ!!」

ジュッという嫌な音と共に巻き付いた契約書はそのまま金色のチョーカーとなった。ルーンは一瞬すごい顔をしたが焼きを入れられたのだから当然だろう。痛いよね・・・焼けるのって。

『貴様が契約を遵守し、天寿を全うすることを切に願う』
『姫君の祝福を無碍にする事なきよう』

今度は水龍師匠と風龍師匠の声だ。比較的に優しい彼らなら彼女が苦しむような事は・・・。

「ぐうっ?!」

チョーカーが俄かに形を変え、水と風のデザインが増えた。しかし首に巻いた状態で変形するのだからつけている側はたまったものではない。

「ちょ・・・」
『我等は何時でも、何処でも見ている』
「ひぎっ!」

止めようと思った私の言葉に続いて雷龍師匠の声が響き、チョーカーの一部の形が刺々しくなった。

「師匠・・・もしかして怒ってる?」
『何事もけじめが肝心であるよ』
「ぐうっ??!」

最後に一番寛大な地龍師匠がチョーカーを一瞬だけ一回り大きく変形させた。変形は一瞬ではあったが彼女はすぐに気絶してしまいその場に倒れ伏した。

『『『『『契約は成った、証を残した今我等は此処に居る必要はない、さらばだ!』』』』』

かなりファンキーなチョーカーの形が普通の金色のチョーカーに五色の宝石をあしらった物に戻り、契約と言う名の公開リンチが終了したところで私は彼女をそっと抱き寄せた。

「なんか・・・ごめんね」

師匠を引き合いに出したらこうなるとはまさか思わなかったんよ・・・。
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