12 / 14
アルネ村
何故?
しおりを挟む
老人の話ではまだ語られていないジェロニアさんの父はどうして居なくなってしまったのだろうか?
「それで・・・その、ジェロニアさんの父君は?」
「御察しの通り亡くなっております」
養子になっているのでもしやとは思ったがやはりか。
「事故、とのことですが・・・」
ラグドルさんはそう言いつつなんとなく納得のいっていない様子だ。もしやとは思うがクリックさんがその事故に絡んでいるのか?
「なにか心当たりでも?」
「ジェロニアの父、ジェコスは狩りのやり方を教えてくれましたがその当時からクリックはジェコスのことをよく思っていなかったのですよ」
「何故です?」
「よそ者と呼んで嫌っていたのはもちろんですが荒くれものが担当していた狩りにおける地位を脅かされると思っていたのではないでしょうか・・・」
聞くところによるとクリックさんは生来粗暴でラグドルさんと違い農業や祭事に真面目でなく、はみ出し者を束ねて好きにしていたという。しかしながら農閑期には狩りに出たり、警らに出たりと危険な仕事をこなしていたので皆も内心嫌いつつも仕方ないと我慢していたようだ。
「そんな中で突然やって来たジェコスさんは狩りも上手く、人当たりも良かったと」
「そうですね」
狩りはクリックさんとその子分たちの権力を支える大事な基盤の一つだ。それを脅かすばかりでなく父親や兄、村の人達にちやほやされるジェコスさんの存在が面白くなかったのだろう。
「ジェコスはすぐに村に馴染みましたが彼には妻がいませんでした。ジェロニアは居たのですがどうにも母親は早くに亡くなったらしく親戚に預けていたのを定住するに伴って幼い彼女を連れてここに来たわけです」
なるほど、彼が亡くなってジェロニアさんが引き取られるということまではわかった。そうなると彼が亡くなった理由になにかありそうだな。
「ジェコスさんが亡くなったのは・・・」
「狩りの途中で突然倒れたと・・・病だと思っていたのですが」
そう言いつつもラグドルさんは難しい顔をしている。現に今、クリックさんの疑惑は燻っている。ほぼ黒に近い灰色状態の彼がジェコスさんの死に関わっていると言うのはあながち的外れではないのかもしれない。
「その、葬儀はどのように?」
「クリックが仲間内で執り行うと細かい手配をしてくれました。その時は内心、ジェコスの事を心の内ではよく考えてくれていたのだとばかり・・・」
アルトルさんはそう言いつつ複雑な顔をした。実の息子であるクリックさんが実は優しい人間であると信じたい気持ちと現状によって産まれた疑念が混ざっているのだろう。個人的にみればほぼ黒だろうし、ジェロニアさんの扱いを見るに善意から彼女を引き取ったとは言い難い。
「なるほど・・・しかし先日の獣の件も見る限りジェコスさんの狩りの技術までは完全には伝わらなかった様子ですな」
「あれほどの大物は珍しいですがそれがどのように関係するのですか?」
「大物がジェロニアさんやこの村の人の行動圏内に現れたのが良い証拠です。獣とて自分と戦いになる可能性のある人間がうろうろしている場所に迷い出たとは考え難いですからね・・・ほどよい大きさの内に狩られたりしていないのでしょう」
予測でしかないが狩りの腕前や頻度が落ちているのではと考えられる。理由としては体力が落ちた今の自分が数十分程歩いた程度の距離にもかかわらず出くわした人間はジェロニアさん一人であり、彼女が俺の仕留めた獲物を欲しがったことなどがある。
(疑い過ぎだろうか、けど少なくとも父親を殺そうとするようなヤツだからな)
彼女としか会わなかったのは偶然で、獲物を欲しがったのも山菜拾いが上手くいかなくて仕方なくということもある。しかし彼の粗暴な態度やジェロニアさんに対する扱いを考えるとどうしても良い方向には考え難い。
「とりあえずこのままではお二方はもちろんジェロニアさんの身も危ない・・・薬草探しは私一人で行きますので二人はいざというときの為に安全な場所に居てください」
「お一人で行かれるのですか?もし弟がはやまった真似をしたら・・・」
元よりクリックさんを疑っているラグドルさんはそう言うとアルトルさんをちらりと見てゴニョゴニョと言葉を小さくしていった。
「元より自分はよそ者ですからご心配なく、しかしながら私が今日の内に無事に戻れなければお二方にはあまり気分の良くない話になるかもしれませんね」
二人が無事ならこの村は大丈夫だろう。問題は自分のことだ。仮に相手がその気だったとして・・・。
「それでは・・・」
俺は不安げな三人を残し、一人山へと向かった。
「それで・・・その、ジェロニアさんの父君は?」
「御察しの通り亡くなっております」
養子になっているのでもしやとは思ったがやはりか。
「事故、とのことですが・・・」
ラグドルさんはそう言いつつなんとなく納得のいっていない様子だ。もしやとは思うがクリックさんがその事故に絡んでいるのか?
「なにか心当たりでも?」
「ジェロニアの父、ジェコスは狩りのやり方を教えてくれましたがその当時からクリックはジェコスのことをよく思っていなかったのですよ」
「何故です?」
「よそ者と呼んで嫌っていたのはもちろんですが荒くれものが担当していた狩りにおける地位を脅かされると思っていたのではないでしょうか・・・」
聞くところによるとクリックさんは生来粗暴でラグドルさんと違い農業や祭事に真面目でなく、はみ出し者を束ねて好きにしていたという。しかしながら農閑期には狩りに出たり、警らに出たりと危険な仕事をこなしていたので皆も内心嫌いつつも仕方ないと我慢していたようだ。
「そんな中で突然やって来たジェコスさんは狩りも上手く、人当たりも良かったと」
「そうですね」
狩りはクリックさんとその子分たちの権力を支える大事な基盤の一つだ。それを脅かすばかりでなく父親や兄、村の人達にちやほやされるジェコスさんの存在が面白くなかったのだろう。
「ジェコスはすぐに村に馴染みましたが彼には妻がいませんでした。ジェロニアは居たのですがどうにも母親は早くに亡くなったらしく親戚に預けていたのを定住するに伴って幼い彼女を連れてここに来たわけです」
なるほど、彼が亡くなってジェロニアさんが引き取られるということまではわかった。そうなると彼が亡くなった理由になにかありそうだな。
「ジェコスさんが亡くなったのは・・・」
「狩りの途中で突然倒れたと・・・病だと思っていたのですが」
そう言いつつもラグドルさんは難しい顔をしている。現に今、クリックさんの疑惑は燻っている。ほぼ黒に近い灰色状態の彼がジェコスさんの死に関わっていると言うのはあながち的外れではないのかもしれない。
「その、葬儀はどのように?」
「クリックが仲間内で執り行うと細かい手配をしてくれました。その時は内心、ジェコスの事を心の内ではよく考えてくれていたのだとばかり・・・」
アルトルさんはそう言いつつ複雑な顔をした。実の息子であるクリックさんが実は優しい人間であると信じたい気持ちと現状によって産まれた疑念が混ざっているのだろう。個人的にみればほぼ黒だろうし、ジェロニアさんの扱いを見るに善意から彼女を引き取ったとは言い難い。
「なるほど・・・しかし先日の獣の件も見る限りジェコスさんの狩りの技術までは完全には伝わらなかった様子ですな」
「あれほどの大物は珍しいですがそれがどのように関係するのですか?」
「大物がジェロニアさんやこの村の人の行動圏内に現れたのが良い証拠です。獣とて自分と戦いになる可能性のある人間がうろうろしている場所に迷い出たとは考え難いですからね・・・ほどよい大きさの内に狩られたりしていないのでしょう」
予測でしかないが狩りの腕前や頻度が落ちているのではと考えられる。理由としては体力が落ちた今の自分が数十分程歩いた程度の距離にもかかわらず出くわした人間はジェロニアさん一人であり、彼女が俺の仕留めた獲物を欲しがったことなどがある。
(疑い過ぎだろうか、けど少なくとも父親を殺そうとするようなヤツだからな)
彼女としか会わなかったのは偶然で、獲物を欲しがったのも山菜拾いが上手くいかなくて仕方なくということもある。しかし彼の粗暴な態度やジェロニアさんに対する扱いを考えるとどうしても良い方向には考え難い。
「とりあえずこのままではお二方はもちろんジェロニアさんの身も危ない・・・薬草探しは私一人で行きますので二人はいざというときの為に安全な場所に居てください」
「お一人で行かれるのですか?もし弟がはやまった真似をしたら・・・」
元よりクリックさんを疑っているラグドルさんはそう言うとアルトルさんをちらりと見てゴニョゴニョと言葉を小さくしていった。
「元より自分はよそ者ですからご心配なく、しかしながら私が今日の内に無事に戻れなければお二方にはあまり気分の良くない話になるかもしれませんね」
二人が無事ならこの村は大丈夫だろう。問題は自分のことだ。仮に相手がその気だったとして・・・。
「それでは・・・」
俺は不安げな三人を残し、一人山へと向かった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
11
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる