13 / 14
アルネ村
薬草探しと銘打って
しおりを挟む
村を歩く。頭に浮かぶのはクリックさんの射ぬくような視線。
「・・・」
もしかすると彼とその配下の誰かが俺の命を狙っているかもしれない。
「はぁ・・・はぁ・・・」
当たり前だが命を狙われた経験なんかない。狙ったことも。
しかし今、自分の考えが正しければ相手は自分を殺そうと罠を張っているかもしれないのだ。汗を拭い、表情の上では平静を装いながら村の様子を伺う。
(狩人らしき人は居ないな・・・)
村では農作業に勤しむ人々の姿が見える。それとは対照的に狩人の姿が見受けられない。そう思うのはクリックさんの衣服からの推測だが彼等は服装の肘や膝に革で補強された衣服を纏っていたからだ。
「おはようございます、今日は狩人さんはお出かけに?」
「あぁ、薬師様。そうでございますよ、なんだか早かった気がしますが・・・」
近場の適当な人に話しかけ、雑談しつつ人の流れを確認する。するとやはり狩人達は早朝に出発したようだ。こちらの様子を伺う人がいないのはどういうわけだろう?
「死人に口無しと考えているのだろうか・・・」
間者がいるのかはわからないがクリックさんの態度からみてそこまで彼の人望はないだろう。些細なことだが農夫たちの様子を見るに狩人と親しい人も少なそうだ。
(俺のことを監視してるかどうかは五分五分だな・・・とりあえず覚悟だけ決めるか)
杖を軽く握りしめて俺は村の門を潜る。番兵達が挨拶してくれ、何人かは見送りまでしてくれたのでこちらも頭を下げて山へと向かうことにした。
「ふーむ」
あれこれ探す素振りをしながら村から離れていく。人通りがあるからか山には細いながらも道ができており、そこを通りながら周囲を細かく観察する。
(罠らしきものはないな・・・)
薬草を探す素振りをしつつ杖で時折地面を探り、草が繁っている場所に不自然なところは無いかなど確認しながら山道を歩く。
完全におっかなびっくりと言った感じだが構うもんか。こちとら命がかかっているのだ。
「・・・?」
そうしながらこそこそと歩いていくと不意に誰かの声が聞こえてくる。やや道をそれて茂みに身を潜めるとやがてその声の主が姿を表した。
『若はジェロニアも本当に殺すつもりなのか?』
若い男の声だ。足音から察するに二人。元がスキルなんて得体の知れないものとは言え感覚として馴染んでいるようで不思議だ。茂みに隠れたままなのに今朝闇討ちを警戒していたときのように茂み越しに二人が歩いてくるのがわかる。
(ジェロニアを殺す・・・予想は悪い方向に的中か。俺もろとも消す作戦らしいな)
複数形だし当然抹殺対象の頭数に俺も含まれてるよな。畜生め。しかしなんでまたこんなはやまった真似をしたんだ・・・?
なんてことを考えつつ俺は二人が通り過ぎるのを待った。
『それにしてもあの優男遅いな・・・』
『こちとら朝飯もろくに食わないで待ってるのに・・・見つけたらただじゃおかん!』
スラッと男の一人が腰に提げていた鉈を抜いた。物騒なことこの上ない。
「やっと移動してくれましたか」
ぶつぶつ文句を言っていた男たちが来た道を引き返して行ったのを確認し、こっそり後をつけることにする。できることなら彼等がどこまでの人物を標的にしているのか突き止めてアルトルさんに警告をしなければならない。目的もできることなら突き止めたいしな。
(恨みにしろ打算にしろ詳しい理由が解れば対策も立てやすいしな)
二人の後をつけ、俺は再び山の奥深く進んでいく。
「おい!あの優男はまだ来ねえのか!」
苛立ちを隠せず、イライラを樹木にぶつけながらクリックは声を上げた。周囲の取り巻き達も口には出さないながらもやや待ちくたびれたと言った様子だ。
「見張りからもなんもありませんね」
「あの野郎親父や兄貴に告げ口でもしてるんじゃねえだろうな・・・」
クリックは後始末の為に自分の取り巻きをほとんど連れて来てしまったことを悔やんだがもう後の祭りである。この上は毒を識別できるあの優男だけでも始末しなければならない。
「誰か村に戻しやすか?」
「そうだな、流石に遅すぎるしな・・・おい、誰か一人様子を見てこい!」
クリックが大声で怒鳴ると退屈そうにしていた取り巻きから一人が走り出した。
「他は準備しとけよ!」
鉈を振って指示を飛ばすと残った男達は各々の道具や弓の弦を調べ始めるのだった。
「さて、一人減ったがまだ結構いるな・・・」
二人組を追いかけて進んだところ山の中腹に休憩にはちょうど良い感じの開けた場所に到着した。うー、足が怠い。
クリックさんが切り株に腰掛けて不機嫌そうにしており、周囲の男達も弓や鉈を手になにやら物々しい雰囲気だ。二人組の会話も含めるとこりゃ捕まったら生きて帰れそうにないな。
「見知らぬ地で他人の都合で死ぬなんて一番嫌な理由だな・・・」
鉈も矢もあまり手入れはされていないようにも見える。つまるところ最悪楽に死ぬこともできないということだ。嫌な要因ばかり増えるなぁ。
「・・・」
もしかすると彼とその配下の誰かが俺の命を狙っているかもしれない。
「はぁ・・・はぁ・・・」
当たり前だが命を狙われた経験なんかない。狙ったことも。
しかし今、自分の考えが正しければ相手は自分を殺そうと罠を張っているかもしれないのだ。汗を拭い、表情の上では平静を装いながら村の様子を伺う。
(狩人らしき人は居ないな・・・)
村では農作業に勤しむ人々の姿が見える。それとは対照的に狩人の姿が見受けられない。そう思うのはクリックさんの衣服からの推測だが彼等は服装の肘や膝に革で補強された衣服を纏っていたからだ。
「おはようございます、今日は狩人さんはお出かけに?」
「あぁ、薬師様。そうでございますよ、なんだか早かった気がしますが・・・」
近場の適当な人に話しかけ、雑談しつつ人の流れを確認する。するとやはり狩人達は早朝に出発したようだ。こちらの様子を伺う人がいないのはどういうわけだろう?
「死人に口無しと考えているのだろうか・・・」
間者がいるのかはわからないがクリックさんの態度からみてそこまで彼の人望はないだろう。些細なことだが農夫たちの様子を見るに狩人と親しい人も少なそうだ。
(俺のことを監視してるかどうかは五分五分だな・・・とりあえず覚悟だけ決めるか)
杖を軽く握りしめて俺は村の門を潜る。番兵達が挨拶してくれ、何人かは見送りまでしてくれたのでこちらも頭を下げて山へと向かうことにした。
「ふーむ」
あれこれ探す素振りをしながら村から離れていく。人通りがあるからか山には細いながらも道ができており、そこを通りながら周囲を細かく観察する。
(罠らしきものはないな・・・)
薬草を探す素振りをしつつ杖で時折地面を探り、草が繁っている場所に不自然なところは無いかなど確認しながら山道を歩く。
完全におっかなびっくりと言った感じだが構うもんか。こちとら命がかかっているのだ。
「・・・?」
そうしながらこそこそと歩いていくと不意に誰かの声が聞こえてくる。やや道をそれて茂みに身を潜めるとやがてその声の主が姿を表した。
『若はジェロニアも本当に殺すつもりなのか?』
若い男の声だ。足音から察するに二人。元がスキルなんて得体の知れないものとは言え感覚として馴染んでいるようで不思議だ。茂みに隠れたままなのに今朝闇討ちを警戒していたときのように茂み越しに二人が歩いてくるのがわかる。
(ジェロニアを殺す・・・予想は悪い方向に的中か。俺もろとも消す作戦らしいな)
複数形だし当然抹殺対象の頭数に俺も含まれてるよな。畜生め。しかしなんでまたこんなはやまった真似をしたんだ・・・?
なんてことを考えつつ俺は二人が通り過ぎるのを待った。
『それにしてもあの優男遅いな・・・』
『こちとら朝飯もろくに食わないで待ってるのに・・・見つけたらただじゃおかん!』
スラッと男の一人が腰に提げていた鉈を抜いた。物騒なことこの上ない。
「やっと移動してくれましたか」
ぶつぶつ文句を言っていた男たちが来た道を引き返して行ったのを確認し、こっそり後をつけることにする。できることなら彼等がどこまでの人物を標的にしているのか突き止めてアルトルさんに警告をしなければならない。目的もできることなら突き止めたいしな。
(恨みにしろ打算にしろ詳しい理由が解れば対策も立てやすいしな)
二人の後をつけ、俺は再び山の奥深く進んでいく。
「おい!あの優男はまだ来ねえのか!」
苛立ちを隠せず、イライラを樹木にぶつけながらクリックは声を上げた。周囲の取り巻き達も口には出さないながらもやや待ちくたびれたと言った様子だ。
「見張りからもなんもありませんね」
「あの野郎親父や兄貴に告げ口でもしてるんじゃねえだろうな・・・」
クリックは後始末の為に自分の取り巻きをほとんど連れて来てしまったことを悔やんだがもう後の祭りである。この上は毒を識別できるあの優男だけでも始末しなければならない。
「誰か村に戻しやすか?」
「そうだな、流石に遅すぎるしな・・・おい、誰か一人様子を見てこい!」
クリックが大声で怒鳴ると退屈そうにしていた取り巻きから一人が走り出した。
「他は準備しとけよ!」
鉈を振って指示を飛ばすと残った男達は各々の道具や弓の弦を調べ始めるのだった。
「さて、一人減ったがまだ結構いるな・・・」
二人組を追いかけて進んだところ山の中腹に休憩にはちょうど良い感じの開けた場所に到着した。うー、足が怠い。
クリックさんが切り株に腰掛けて不機嫌そうにしており、周囲の男達も弓や鉈を手になにやら物々しい雰囲気だ。二人組の会話も含めるとこりゃ捕まったら生きて帰れそうにないな。
「見知らぬ地で他人の都合で死ぬなんて一番嫌な理由だな・・・」
鉈も矢もあまり手入れはされていないようにも見える。つまるところ最悪楽に死ぬこともできないということだ。嫌な要因ばかり増えるなぁ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
11
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる