ドラゴンになったので世界を救う為に国と跡継ぎつくります!

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獣人と建国の章

狐人族の国 その3

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「さてと・・・そろそろいいかしら、戻りましょう。旦那様が待ってるわ」

 立ち上がり膝についた土を落として立ち上がったアウロラが一歩踏み出すと不意にバランスを崩した。
シロナが慌てて駆け寄るのを手で制してアウロラは地面に目をやった。

 「この土だけやけに柔らかいわ、最近誰か埋めたの?」
 「いえ、そんなはずは・・・それに獣に掘り起こされないようにちゃんと固めるのに・・・」
 「なら理由は簡単ね」

そう言うとアウロラは振り上げた手をそのまま振り下ろした。

 「ちょ・・・ちょっと!」

 手に魔力をまとわせて振り抜いた手に風の魔法を纏わせると地面の土を吹き飛ばしていく。シロナの言う通りほかの地面は固められているのか風の魔法を受けても飛ぶ事はなく残っていた。

 「これ・・・誰かが掘り起こしたのね」

 魔法を解除して掘り起こされた地面の底を見つめるアウロラ。その先には埋められてそう経っていないはずの遺骸が納められた棺が残っている。

 「うっ・・・」
 「見たくないなら見なくていいわよ。けどこれは・・・」
 「大丈夫です・・・それで何があったんですか?」
 「耳がなくなってるわ、両方とも。それに尻尾もない」

 棺はどういうわけか打ち壊された跡が残っておりそこから覗く遺骸には耳が残っていなかった。蓋を引っぺがすと本来綺麗に整えられているはずの遺骸が無残な姿にされている。

 「金品も埋めてたの?」
 「一応装飾品も一緒に埋めます・・・埋めますけど・・・、酷い・・・」

ペンダントなどがついていたのか首筋に引きちぎった際にできたであろう傷ができている。

 「まさか墓荒らしがいるなんてね・・・」

 人間ならいざ知らず獣人相手に墓荒らしをするなど自殺行為である。なぜなら彼らには文字通り獣並みの嗅覚があり、遺体や故人が身につけていた際についた臭いはごまかせないのである。

 「此処を偶然訪れて行きがけの駄賃に奪うにはリスクが高すぎるし、証拠を消すにも貴女やここの管理者に見つかる可能性もある。どういうことかしらね」

 穴の深さもそう深くは無いため一時間もあれば掘り出して埋める事は可能だろうが人目を避けてとなるとこの一時間もリスクが高い。忌避される仕事とはいえちゃんと管理者がいるのだ。

 「此処の管理者は?ここら辺にいるの?」
 「ええ、都市部との中間くらいの場所に小屋を建ててそこに住んでいるはずです」

くる途中に通り過ぎましたよ?と言うシロナの言葉にアウロラは首をかしげる。

 「物置が建ってた気がしたけどもしかしてあれ?」
 「も、物置・・・」
 「それくらい粗末だったじゃない」

 農具なんか放りこんで置くのには最適なんじゃないの?とアウロラ。呆れ顔のシロナだったが悲しいかな墓守を任される人々は残念ながら立場の低い『耳なし』か『尾無し』の人達なのだ。これに忌避される死体を扱う仕事ともなれば携わる人を卑下するのも珍しくなかった。

 「その人に話しを聞く事にしましょう」

アウロラの言葉に従い二人は来た道を引き返して墓守の家へと向かう。あぜ道を黙々と歩くとアウロラが物置と形容するにふさわしい粗末な小屋があった。服などが干してあったりと生活している様子があることにアウロラは今更気づいた様で少なからず驚いていた。

 「ごめんください、カンラ・クリューさんいますか!」
 「だれだ?またぞろ誰か死んだか?」

シロナがガタつく戸板を叩くと中からくぐもった声が返ってくる。

 「私です、シロナです!」
 「おーシロナか、鍵なんかありゃしないから入ってきない」

 許可を受けてシロナが戸に手をかけた。見た目通りガタガタでたてつけが悪いのか引っかかりまくりながら嫌なを音を立ててなんとか戸を開ける。

 「お邪魔します、カンラさん」
 「さんは要らないって、所詮俺は耳なしだ」

 小屋の中に居たのは壮年の筋肉質の狐人族には珍しい戦士といった風貌の女性だった。服装も粗末だが眼光は鋭く、手足は節くれ立っており踏んできた場数の多さを物語っている。

 「耳なしって言い方嫌いだわ」
 「おっと、客人がいたのか」
 「その傷って闘いでついたんでしょ?」
 「まあね、だが無くしちまったらそれまでさ。未熟さが出ちまった以上どう言われても仕方ないだろう」

 天を突くようにピンと伸びた耳は左側が途中で千切れており、耳を奪ったついでにつけたであろう獣の爪痕が額にも走っている。

 「そう、まぁ、貴女が自分でそういうなら強いて言い直させるつもりも無いけど・・・」

 狩りや戦いでついた傷は獣人にはもちろんエルフ達にとってもマイナスイメージにはならないが誇りとも言える部位を失った以上叱責は免れないのである。

 「ま、俺のヘマをどうこう言ったって仕方ねえだろ?それより用件はなんだい?」

 無理矢理話題を変えてこちらに尋ねるカンラ。それ以上追求する理由もないと二人は本題に入る事にした。

 「墓地に最近入った人って居ますか?」
 「墓地にか?そういや珍しく俺と同業の奴らが偉いさんを連れて歩いてたな・・・そうそう、俺たちの同類になった女が世を儚んで死んじまった事があったっけか、そのお参りかねえ」
 「そんな事があったんですか・・・」

 男はともかく嫁入り前の女性が耳や尻尾を失うというのは致命的で、良家の娘であっても結婚は難しくなる。その上最悪家を出なければならなくなり縁を切られることもある。
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