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ドラゴンと動力機関の章
ドワーフたちとブンロクと
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俺はエルビンに首都にある孤児院を尋ねる様に言うと商会の建物を抜け出し、そそくさとドワーフ達の鍛冶場街へと戻る。孫のアルカが元気になった以上もはやエルビンが道を踏み外す事はあるまい。
そしてこれからは商業のノウハウを活かして孤児院の子供達に読み書きと計算を教える先生になってもらおう。後はアルカの後見人にでもなって爺さんの老後を安心させてやる事くらいか。
ジーさんは後から自力で首都へ向かうと言っていたので俺は彼らを待たずに首都へと向かう事にする。
「おはようさん、早速で悪いが仕事だブンロク」
朝の食堂は二日酔いなど何処吹く風のドワーフ達が朝から一杯ひっかけて飯を食い、そして存外早い時間に仕事を始めているようだ。ドワーフは頑丈だな、人間だったらあんな生活20代の体力気力が溢れた状態でようやくできるかどうかって所だろうが・・・。それとは対照的にブンロクことターニャは眠そうに何度もあくびをしながら机に上半身を預けている。
タンクトップ一枚で出てきたこといいこいつまだ寝ぼけてんじゃないのか。けしからんのは年齢の割りに大ぶりな胸が机に乗るほど大きい事だ、小麦色に焼けた肌が眩しい。アウロラより大きく、シロナよりは小さいくらいか。そう考えると彼女達が恋しくなる。
「ん・・・?」
「まだ寝ぼけてんのか?」
「うー・・・」
「起きろ、『泣き虫ターニャ』」
昨日酒の席で聞いたドワーフ達が言う彼女の過去のあだ名を掘り起こすと彼女は途端に真っ赤な顔で起き上がった。
「な、ななななんでお前がそれ!」
「さー、どうだかねー」
「く、くそっ!鍛冶場のおっさん達だな・・・!」
恐らく幼い頃はブンロクやドワーフ達にべたべたの甘えん坊だったのだろうか。勝気な口ぶりと活発な見た目とは裏腹にずいぶんと可愛らしい。涙目で怒っているが完全にあれだ、可愛い。リックスも見る目あるじゃねえか。こんな可愛い顔で怒ってたら怒られても役得だぜ。
「そんな事より仕事の話だ、お前さんが過去にやらかした事は黙っててやるから」
「納得いかねえ・・・」
明らかに機嫌が悪くなってしまったが此処で俺の秘密兵器がある。
「お前、甘いもの好きか?」
「え?・・・好きだけど」
「ならコレやるよ」
取り出したるは甘薯を茹でて磨り潰し、ミルクと砂糖で練った芋餡の団子。ゲイズバー商会にレシピ譲渡し、首都で密かな人気を呼んでいる品だ。甘薯は狼人族の若衆が育てていたのを見つけたので甘薯を輸出製品として量産する計画を立てている。甘薯もおそらく外から来た人間が持ち込んだものだろう。
「これ・・・?甘い!」
おそるおそるといった表情のターニャも一口かじると花が咲いたような笑顔になり一つずつ口に入れていく。がっつくと思ったが存外行儀のイイヤツだ。
「これ美味しいな、こんなの食ったことなかったよ。後は他の奴が食うだろ」
全部で十個くらいあったが彼女が食べたのは三個ほど。ん?と思ったが彼女の顔にはチビッ子達の顔が浮かんでいるのだろう。素直に誰がとは言わない辺りがなんともいえないが。
「それで仕事ってなんだよ?」
「馬車にカラクリの技術を活かして色々と細工をしたいと思っている」
俺はそう言うとあれこれと馬車に搭載したい機能を提案する。一つはサスペンション。二つはアクセルとブレーキ機能。これをできれば運転手が一手に行えるようにしたい。
「なるほど、たしかに師匠の技術が活きてきそうな内容だけど・・・新しい事が多いからできるかはわかんないぜ?」
「いいさいいさ、どうせ内の集落にいるドワーフは手一杯でな。研究とかができる奴が欲しかったから問題ない」
「そうなのか?」
タイヤがないからそれに代わる物も欲しいが・・・。とりあえず今はサスペンションとかエンジンを組める人材がほしいのだ。できればドワーフ達も何人か来て欲しいが贅沢は言わないつもりだ。
先代ブンロクは多芸に通じる御仁だったようだが新しい分野に挑戦できるかは怪しいところだったし亡くなってしまったので仕方ない。むしろ弟子とは言え若い人材を揃えられるならそれに越した事はない。
「折角此処ではドワーフ達がいるんだ、俺達のこれからの計画の手伝いをしてもらおうじゃないか」
「というわけで、ちょいと頼みたい事があるんだが」
「というわけじゃねえわ、なんだよやぶから棒に」
仕事中のドワーフ達の中で休憩中の連中を選んで声をかける。交代で製鉄を行っているようだったが作るペースを考えるに余り忙しそうには見えないな。声をかけるなら今がそのときか。
「特注の馬車を作りたいんだが付き合える奴がいるかと思ってな」
「仕事か」
「ああ、予算は要相談だ」
そう言うとドワーフ達は少し考える素振りを見せると何人かが立ち上がった。
「俺達が話を聞こうじゃねえか、馬車の事なら多少心得がある」
「よし、なら早速話しを進めよう。参加できる奴は皆集まってくれ」
手を叩いてドワーフ達を集める。そして製鉄所から工房へと馬車を移動する。言動はぶっきらぼうだが彼らは何処と無く特注の品を作るという響きを楽しんでいる様子だ。
そしてこれからは商業のノウハウを活かして孤児院の子供達に読み書きと計算を教える先生になってもらおう。後はアルカの後見人にでもなって爺さんの老後を安心させてやる事くらいか。
ジーさんは後から自力で首都へ向かうと言っていたので俺は彼らを待たずに首都へと向かう事にする。
「おはようさん、早速で悪いが仕事だブンロク」
朝の食堂は二日酔いなど何処吹く風のドワーフ達が朝から一杯ひっかけて飯を食い、そして存外早い時間に仕事を始めているようだ。ドワーフは頑丈だな、人間だったらあんな生活20代の体力気力が溢れた状態でようやくできるかどうかって所だろうが・・・。それとは対照的にブンロクことターニャは眠そうに何度もあくびをしながら机に上半身を預けている。
タンクトップ一枚で出てきたこといいこいつまだ寝ぼけてんじゃないのか。けしからんのは年齢の割りに大ぶりな胸が机に乗るほど大きい事だ、小麦色に焼けた肌が眩しい。アウロラより大きく、シロナよりは小さいくらいか。そう考えると彼女達が恋しくなる。
「ん・・・?」
「まだ寝ぼけてんのか?」
「うー・・・」
「起きろ、『泣き虫ターニャ』」
昨日酒の席で聞いたドワーフ達が言う彼女の過去のあだ名を掘り起こすと彼女は途端に真っ赤な顔で起き上がった。
「な、ななななんでお前がそれ!」
「さー、どうだかねー」
「く、くそっ!鍛冶場のおっさん達だな・・・!」
恐らく幼い頃はブンロクやドワーフ達にべたべたの甘えん坊だったのだろうか。勝気な口ぶりと活発な見た目とは裏腹にずいぶんと可愛らしい。涙目で怒っているが完全にあれだ、可愛い。リックスも見る目あるじゃねえか。こんな可愛い顔で怒ってたら怒られても役得だぜ。
「そんな事より仕事の話だ、お前さんが過去にやらかした事は黙っててやるから」
「納得いかねえ・・・」
明らかに機嫌が悪くなってしまったが此処で俺の秘密兵器がある。
「お前、甘いもの好きか?」
「え?・・・好きだけど」
「ならコレやるよ」
取り出したるは甘薯を茹でて磨り潰し、ミルクと砂糖で練った芋餡の団子。ゲイズバー商会にレシピ譲渡し、首都で密かな人気を呼んでいる品だ。甘薯は狼人族の若衆が育てていたのを見つけたので甘薯を輸出製品として量産する計画を立てている。甘薯もおそらく外から来た人間が持ち込んだものだろう。
「これ・・・?甘い!」
おそるおそるといった表情のターニャも一口かじると花が咲いたような笑顔になり一つずつ口に入れていく。がっつくと思ったが存外行儀のイイヤツだ。
「これ美味しいな、こんなの食ったことなかったよ。後は他の奴が食うだろ」
全部で十個くらいあったが彼女が食べたのは三個ほど。ん?と思ったが彼女の顔にはチビッ子達の顔が浮かんでいるのだろう。素直に誰がとは言わない辺りがなんともいえないが。
「それで仕事ってなんだよ?」
「馬車にカラクリの技術を活かして色々と細工をしたいと思っている」
俺はそう言うとあれこれと馬車に搭載したい機能を提案する。一つはサスペンション。二つはアクセルとブレーキ機能。これをできれば運転手が一手に行えるようにしたい。
「なるほど、たしかに師匠の技術が活きてきそうな内容だけど・・・新しい事が多いからできるかはわかんないぜ?」
「いいさいいさ、どうせ内の集落にいるドワーフは手一杯でな。研究とかができる奴が欲しかったから問題ない」
「そうなのか?」
タイヤがないからそれに代わる物も欲しいが・・・。とりあえず今はサスペンションとかエンジンを組める人材がほしいのだ。できればドワーフ達も何人か来て欲しいが贅沢は言わないつもりだ。
先代ブンロクは多芸に通じる御仁だったようだが新しい分野に挑戦できるかは怪しいところだったし亡くなってしまったので仕方ない。むしろ弟子とは言え若い人材を揃えられるならそれに越した事はない。
「折角此処ではドワーフ達がいるんだ、俺達のこれからの計画の手伝いをしてもらおうじゃないか」
「というわけで、ちょいと頼みたい事があるんだが」
「というわけじゃねえわ、なんだよやぶから棒に」
仕事中のドワーフ達の中で休憩中の連中を選んで声をかける。交代で製鉄を行っているようだったが作るペースを考えるに余り忙しそうには見えないな。声をかけるなら今がそのときか。
「特注の馬車を作りたいんだが付き合える奴がいるかと思ってな」
「仕事か」
「ああ、予算は要相談だ」
そう言うとドワーフ達は少し考える素振りを見せると何人かが立ち上がった。
「俺達が話を聞こうじゃねえか、馬車の事なら多少心得がある」
「よし、なら早速話しを進めよう。参加できる奴は皆集まってくれ」
手を叩いてドワーフ達を集める。そして製鉄所から工房へと馬車を移動する。言動はぶっきらぼうだが彼らは何処と無く特注の品を作るという響きを楽しんでいる様子だ。
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