ドラゴンになったので世界を救う為に国と跡継ぎつくります!

ファウスト

文字の大きさ
136 / 282
ドラゴンと動力機関の章

テルミットとおやすみなさい その2

しおりを挟む
「・・・朝か」

翌朝、俺は日が昇ると同時に目を覚ました。田舎暮らしが板についてきたのもあるが理由は他にある。便所に行ってから再びテルミットの寝室へと戻ると・・・。

「しょ・・・しょるい・・・」

寝室から這い出してきたテルミットが仕事机へとのそのそ動いているのが見えたからだ。

「はーい、回れ右なー」
「んぅ・・・しょるい・・・」

進行方向を入れ替えて寝室へと逆戻りさせる。今日は盛大に遅刻してもらおう。できる事ならあの膨大な書類の山がはけるまでストップして欲しいがな。
ぼそぼそと今日の予定を喋りながらよろよろ進みテルミットをベッドに寝かせ、再び抱き寄せて眠らせる。テルミットはオンオフが激しいので疲れている時にベッドで横になっていたら眠るというのが体に染み付いているようだ。時折ペンを走らせているようなしぐさをしているので本人は夢の中でも仕事をしているのだろうか。悔しいので首筋にキスするとテルミットは瞬く間に真っ赤になり、寝たまま身をよじり出した。

「ひぅ・・・し、しごと・・・しごとちゅう・・・」
「やめちまえやめちまえ、寝ろ寝ろ」

耳元でささやきながら頭をなでると唇を尖らせて彼女ようやく宙に文字を描く動作をやめた。

「きょうだけ・・・きょうだけ・・・」
「そんなこと言うと明日も休ませるぞ」
「あうあう・・・わかりましたぁ・・・」

もう休んでるけどな。しかし口にだすと飛び起きそうだ。俺はテルミットにもう一度治癒魔法をブレスに乗せて吹きかけておくと一足先に寝室を抜け出す。

「あ、おはようございます!」

寝室の扉を開けると目にクマを作った職員がテルミットが作った書類の山を台車に乗せている所だった。

「おう、おはようさん」
「あの、オーナーは?」
「寝かしつけてきた、もう何時間かは起きないだろうよ、今日は雑務は最低限にして闘技場以外の急ぎでない書類はストップして交代で休暇を取らせろ。テルミットが起きたら書類業務じゃなくて視察とかをさせて時間を稼げ、あと孤児院で子供達に読み書き算盤を覚えさせるつもりだからその協議をさせて此方でも時間を稼ぐから」
「あ、ありがとうございます・・・」

そう言うと職員は台車に寄りかかってため息を吐くと台車を杖にしてきた道を引き返していった。
まるで腰の曲がった老人みたいな状態だった。

「さて、こりゃテルミットをしばらく闘技場から引き離す必要が本格的に出てきちまったな」

そう呟きつつ俺は恐らく首都に向かっているであろうエルビン達が頭に浮かんだ。

「教育の指導要録とか作らせてみるか・・・」

おそらくエルビンがいれば一般教養は大丈夫だし、テルミットがいれば政治とかの関係も大丈夫だろうか。その後はテルミットには今度こそ週休二日を達成してもらい、二日の休みの内に半数ずつに一日ずつ休みを取らせ、テルミットの一日の仕事量をセーブしてもらわねばならない。
俺はテルミットがまた夢遊病のように起きだして仕事を始めようとするのを寝かしつけ直しながらこれからの事についてまたあれこれ考えて見る。

「いかん、めんどくさくなってきた・・・」

とりあえず難しく考えていると頭が痛くなってきたので二度寝することにした。テルミットが起き出してこない様に覆いかぶさるようにして抱きしめながら眠ることにする。

「・・・よっと」

体重が掛かり過ぎないように注意しながら覆いかぶさると柔かくて女性特有の甘い香りが鼻に広がる。
アウロラやシロナはやや野生的な体つきをしているがテルミットは二人に比べデスクワーカーの期間が長かったためか体も柔かい。太っているわけでは決して無いが丸い体つきだ。

「抱きしめて寝るには一番かな・・・」

二人は頑丈なので獣になる際には二人の方がいいが疲れて眠る時に抱きしめて寝るにはテルミットも中々素晴らしい。

「う・・・ん?」

身を捩ったお陰でテルミットの体が俺の体に密着する。うーん、辛抱たまらん。俺は体を入れ替えてテルミットが俺の上に乗る格好に入れ替えてがっちり抱きしめる。

「もしも俺が寝るまでに起きたら・・・抱いてしまおう」

うん、そうしよう。心なしかテルミットの体が震えた気がしたが気にしない。どの道彼女を今日仕事に行かせるワケには行かないからな。
それから幸か不幸かテルミットが起きる事はなく。俺の淡い期待は意識と共に儚く溶けていった。
しおりを挟む
感想 84

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!

くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作) 異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...