ドラゴンになったので世界を救う為に国と跡継ぎつくります!

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ドラゴンと独立宣言の章

ザンナル帝国のあれこれ

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演説により暴動そのものの数は減ったものの官僚と皇帝の直参である近衛兵団の中でも生え抜きの精鋭、皇帝直属の『ザンナル・ルッガナー騎士団』とオルムントの指揮する『国防国家騎士団』以外に対する反発は予想以上に強く、なにより皇帝の不興を買った事で政治家達の発言力はもはや底辺に近かった。また、小麦の不作に対する対策の遅れと暴動の際の不手際と近衛兵団に対する越権行為も相まって軍人達からも白い目で見られる始末であった。

「信じられねえよな・・・いくら暴動だからって俺達に民衆を撃たせたんだぜ」
「ああ・・・親戚がいるかもしれねえってのに・・・やっぱり皇帝陛下とルッガナー兵団とオルムント将軍以外に従うのは俺達も不服だ。俺達は市民とこの国を守る為に騎士になったんだからな」

騎士団ではこのような発言が公然と行われ、もはや公務の大半は軍が行っていた。

「将軍、ルタート騎士団が財務大臣の警護任務を拒否しました・・・」
「またか・・・仕方ない、警護は我が隊から選抜して送るのだ。不満かもしれんがこれも務め故我慢してくれ」

命令拒否も相次ぎ、孤立無援となった政治家もドンドンと軍閥にすげ代わって行く。オルムントがなんとか政治家達を引き留めるも命の危険と皇帝の不興を買う危険を避けるものばかりが増えていった。

「それでは本日の会議を開始します」
「うむ、着席せよ」

皇帝の言葉にザッ、と一糸乱れぬ敬礼と共に席についた一同は皆軍服を着ており、文官が一人も居なくなった事を示していた。

「今回の騒動における原因は何か、先ずはそこから始めよう」
「そうですな、奴らがアテにならぬとはいえ我等は門外漢。国民の為と謳っても結果が出せなければ今度は軍の信頼を失墜しかねない」
「そこで陛下がお受け取りになった五箇条の意見書が我々の貴重な情報源になるというわけですな」
「たしか参政権を要求するとか・・・乾民はともかく奴隷まで参政権を与えても良いのだろうか?彼らは無学だ、私も政治については毛の生えた程度だが彼らよりはマシだと考えている。しかしそんなものが役に立たないのは重々承知、勉学の時間を取れる様に奴隷達にはもう少し待ってもらうべきでは?」
「そもそも奴隷が権利を主張するという事がおこがましい、奴らには市民権すらないではないか」

とりあえずは民衆の声と知恵を借りようという所まではまとまったもののやはりネックは奴隷であった。軍人達の中にも少なからず貴族階級に近しい者がおり、彼らの中には市民権を持たない奴隷達に嫌悪の感情を抱くものも多かった。そのため奴隷の扱いに関して意見が割れる事となる。

一方は意見書の通り市民達に参政権を与え、民間の息の掛かった閣僚を採用して議会を開くことという積極派。もう一方は奴隷や一部の乾民、ならびに宗教家に対してはこれまでどおり参政権を与えないという慎重派だ。

「奴隷達に参政権が与えられないならば開拓団を組織して彼らを土地所有の乾民上位レベルまで上げ、税収の確保と農地拡大を同時進行で行ってはどうでしょうか?」

そんな中一人の将校がそういった。

「しかし北部は農地には適さないし・・・西部は街道、東部はリットリオとの緩衝地帯として開発や入植は禁じられているはずだろう」
「そうです、ですが最近にフィゼラー大森林に関する調査隊が編成されていたはずですが?」
「ああ、たしか逃亡民が異常に多くなっていたから調査したいと財務卿のクリムツカが言っていたか」
「わが国は製材に関する知識は乏しいですが隣国サマルは木工業の国、開拓で出た木材を売れば税収の補填にもなるかと」
「宙ぶらりんになっていた調査隊を派遣するいい機会かもしれないな。それでは陣頭指揮はだれが?」
「前回はオルムント将軍が任に当たる予定でしたが・・・」

「ならぬ、オルムントは王宮と都の防衛に当たってもらわねばならぬ」

突然の皇帝の発言に将軍達は視線を一点に集める。皇帝は民衆の不満を解消するべく奔走していたがそれには騎士団の中でも民衆受けの良いオルムントとルッガナー騎士団は外せない存在であった。

「では陛下、後任はいかが致しましょうか?」
「うむ、国外への出兵経験のある者を用いるのが良かろう」
「ではゲオルグ中将を司令官として推薦したいと思います」
「リットリオとの紛争で活躍したあのゲオルグか?」

クリンシル・パーシビキィ・ゲオルグ中将。過去にリットリオとの領土紛争に置いて歩兵を率いて戦い抜群の戦果を挙げた名将。その際に陣地構築と補給の管理に妙があるため長期戦においても兵士が飢える事はなかったという。

「あの御仁は少々人格に問題がありますが手腕と民衆の受けは悪くありません。彼のお陰で紛争でも緩衝地帯をリットリオ寄りにできましたからね」
「ただ彼は奴隷に対する感情がなあ・・・あと愛国心が強すぎるきらいがあるから他国と鉢合わせた時にどうなるかが問題だがフィゼラー大森林に関しては問題ないだろう」

ゲオルグ中将は激情家であり、特に祖国に対する情熱が強い余り対外的に強硬にでるきらいがあった。
戦時中は良かったがいざ和平となると途端に彼の業績は鈍り、結局政務官を派遣して事に当たることとなりゲオルグは勲章を貰い損ねたという。
しかし彼らは今回の進出先がフィゼラー大森林であることで対外交渉があってないようなものなので満場一致でゲオルグ中将を派遣することに決定した。
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