249 / 282
ドラゴンと独立宣言の章
リットリオにて悪だくみ
しおりを挟む
魔術師であるセボを仲間に引き入れ、ティアジョーカーズを手中に収めた俺は街角のカフェーで一休みしていた。
時間的な余裕もあったが一番の理由は・・・。
「うぅぅぅ・・・気持ち悪い・・・」
「大丈夫?」
「は、吐きそう・・・」
外出慣れしていないセボが人混みに酔った。大して混んでも居ないと思ったがそれは一般的な反応だっただろうか。
「うう・・・やっぱりお家帰る・・・」
「リットリオを出るまでの辛抱ですから、頑張って!」
「仕方ないな、お前たちは近場の宿にでも行っといてくれ」
財布を彼女に預けると俺は一人、カフェーを出る。少しばかり平和過ぎて拍子抜けしていたところだ。此処は一つ俺が単身で乗り込んで好きに動いてみよう。
「さて、手ぶらだが・・・ま、なんとかなるか」
腰には愛刀が、そして俺の五体は満足に動く。それだけで準備は万端だ。やる気もそれなりにあるし。
さて、一人で気ままにとなればアンジェリーノ侯爵の邸宅を訪問するだけで事は足りる。そこで話が出来ればよし、できなければできるように動くだけの事。
と、そう思っていたのだが・・・。
「もし、そこの御仁・・・」
ざくざくと街を歩く俺を目ざとく見つけたのか馬車が停まった。その窓から狐目の男が俺を見下ろしている。
「誰だ?」
「申し遅れました、私クリストフ・アレンデル伯爵と申します。ヴォルカン伯爵」
サマルの訛りだ。それも王都に近い都訛りだな。馬車からせめて降りて話するだけの礼儀があれば俺も話しやすいんだがな。こういった連中は新参者を好かない。特に俺のような新しい事を始める奴は特に。
(どういった訳か関わってなくても分け前がもらえると思ってやがるからな)
今のサマルを作り出したのは自分だとか、そんな感じの気概を持っているならともかく今の自分の地位という奴が当たり前だから自分達にも分け前があるとそう考えているらしい。
「それはどうも、リットリオまで如何様なご用向きで?」
「ここでの立ち話は少しばかり場所が悪い、移動しても?」
「そうか、それなら今日は都合が悪い。後にしてくれると助かる」
ザ・日本人対応。後にする=てめえなんぞ知ったことか。俺的にはそうなる。必要な事なら呼ばれずとも俺から出向くからな。どうしても外せないときは代理を立てる。俺的には普通の対応である。
「そうおっしゃらず、悪い話ではありません」
どうだかな、俺の都合を考えてもくれないんじゃ評価は初っ端からマイナススタートだぜ?道すがら出会って商談なんて失礼にもほどがある。爵位は同格、将来は一応王族に名を連ねるんだけどね俺。
「内緒話がしたいならザンナルの跡地まで来るんだな。あそこなら俺も働いてる」
たまにだけど。それと、大体名前だけの感じになりつつある。アレクシアも似たようなものだが彼女は軍の統帥権があるからいざという時軍事行動を起こす権利がある以上ザンナルの跡地でいつ来るかもわからない争いに備えて軍務整理を行っている。お陰でハネムーンは婚約とザンナル復興のめどがついてからだ。
「そうまで仰るのでしたら・・・時に伯爵は婚約はお考えで?」
「ん?ああ、もう三人ばかりいるが?」
「えっ」
まさか俺に自分の娘とかを当てがいたかったのか?知らんがな。
「悪いが妻の人数は足りてるから」
貴族の淑女なんて言うと聞こえは良いが俺の思い描く淑女のイメージと結構かけ離れてるからなぁ。特に王都の淑女は浪費癖が恐ろしい。使う事ばかり覚えてやがるからな、茶会の度に新しいドレスとか、茶器とか。
生憎と俺は内需に回すので金は足りないんだ。家族を贅沢させるだけの蓄えはほとんどない。ほんとだぞ。
(ゆえにスキンシップとかで誤魔化しているところも否めない・・・)
温泉とか旅行に連れて行ったりすると喜んでくれるのでありがたいが彼女達がもしも駄々をこねたらどうしようか。
ああ怖い。
「えっと、しかし教育も行き届いていて・・・」
「内政に携われるだけの知識か、商売の才能があるのか?」
「えっ」
「ダンスとかそういうのは俺は求めない。辺境伯の息子がそんなものに興味あると思っていたのならとんだ見込み違いだな、そもそも王都を離れて辺境に行くだけの気概があるんだろうな?」
「・・・いや、その・・・」
「あと、支度金はいくら出せる?はした金なら娘つけて送り返すからな」
「しかし、我が家は古くからの・・・」
古いだけで何があるというんだ?長年辺境伯を務めて来たアダムスター家を上回るのか?祖父は王宮でも有数の実力者だったが。
「歴史がどうかは知らんが頼み事をするのに馬車から降りるだけの礼儀も知らないんじゃ話すだけ無駄だ。父親がこの有様じゃ高が知れる」
要らんよ、とそう言うと俺は返事を待たずに歩きだした。あー、無駄な時間だ。恐ろしく。
時間的な余裕もあったが一番の理由は・・・。
「うぅぅぅ・・・気持ち悪い・・・」
「大丈夫?」
「は、吐きそう・・・」
外出慣れしていないセボが人混みに酔った。大して混んでも居ないと思ったがそれは一般的な反応だっただろうか。
「うう・・・やっぱりお家帰る・・・」
「リットリオを出るまでの辛抱ですから、頑張って!」
「仕方ないな、お前たちは近場の宿にでも行っといてくれ」
財布を彼女に預けると俺は一人、カフェーを出る。少しばかり平和過ぎて拍子抜けしていたところだ。此処は一つ俺が単身で乗り込んで好きに動いてみよう。
「さて、手ぶらだが・・・ま、なんとかなるか」
腰には愛刀が、そして俺の五体は満足に動く。それだけで準備は万端だ。やる気もそれなりにあるし。
さて、一人で気ままにとなればアンジェリーノ侯爵の邸宅を訪問するだけで事は足りる。そこで話が出来ればよし、できなければできるように動くだけの事。
と、そう思っていたのだが・・・。
「もし、そこの御仁・・・」
ざくざくと街を歩く俺を目ざとく見つけたのか馬車が停まった。その窓から狐目の男が俺を見下ろしている。
「誰だ?」
「申し遅れました、私クリストフ・アレンデル伯爵と申します。ヴォルカン伯爵」
サマルの訛りだ。それも王都に近い都訛りだな。馬車からせめて降りて話するだけの礼儀があれば俺も話しやすいんだがな。こういった連中は新参者を好かない。特に俺のような新しい事を始める奴は特に。
(どういった訳か関わってなくても分け前がもらえると思ってやがるからな)
今のサマルを作り出したのは自分だとか、そんな感じの気概を持っているならともかく今の自分の地位という奴が当たり前だから自分達にも分け前があるとそう考えているらしい。
「それはどうも、リットリオまで如何様なご用向きで?」
「ここでの立ち話は少しばかり場所が悪い、移動しても?」
「そうか、それなら今日は都合が悪い。後にしてくれると助かる」
ザ・日本人対応。後にする=てめえなんぞ知ったことか。俺的にはそうなる。必要な事なら呼ばれずとも俺から出向くからな。どうしても外せないときは代理を立てる。俺的には普通の対応である。
「そうおっしゃらず、悪い話ではありません」
どうだかな、俺の都合を考えてもくれないんじゃ評価は初っ端からマイナススタートだぜ?道すがら出会って商談なんて失礼にもほどがある。爵位は同格、将来は一応王族に名を連ねるんだけどね俺。
「内緒話がしたいならザンナルの跡地まで来るんだな。あそこなら俺も働いてる」
たまにだけど。それと、大体名前だけの感じになりつつある。アレクシアも似たようなものだが彼女は軍の統帥権があるからいざという時軍事行動を起こす権利がある以上ザンナルの跡地でいつ来るかもわからない争いに備えて軍務整理を行っている。お陰でハネムーンは婚約とザンナル復興のめどがついてからだ。
「そうまで仰るのでしたら・・・時に伯爵は婚約はお考えで?」
「ん?ああ、もう三人ばかりいるが?」
「えっ」
まさか俺に自分の娘とかを当てがいたかったのか?知らんがな。
「悪いが妻の人数は足りてるから」
貴族の淑女なんて言うと聞こえは良いが俺の思い描く淑女のイメージと結構かけ離れてるからなぁ。特に王都の淑女は浪費癖が恐ろしい。使う事ばかり覚えてやがるからな、茶会の度に新しいドレスとか、茶器とか。
生憎と俺は内需に回すので金は足りないんだ。家族を贅沢させるだけの蓄えはほとんどない。ほんとだぞ。
(ゆえにスキンシップとかで誤魔化しているところも否めない・・・)
温泉とか旅行に連れて行ったりすると喜んでくれるのでありがたいが彼女達がもしも駄々をこねたらどうしようか。
ああ怖い。
「えっと、しかし教育も行き届いていて・・・」
「内政に携われるだけの知識か、商売の才能があるのか?」
「えっ」
「ダンスとかそういうのは俺は求めない。辺境伯の息子がそんなものに興味あると思っていたのならとんだ見込み違いだな、そもそも王都を離れて辺境に行くだけの気概があるんだろうな?」
「・・・いや、その・・・」
「あと、支度金はいくら出せる?はした金なら娘つけて送り返すからな」
「しかし、我が家は古くからの・・・」
古いだけで何があるというんだ?長年辺境伯を務めて来たアダムスター家を上回るのか?祖父は王宮でも有数の実力者だったが。
「歴史がどうかは知らんが頼み事をするのに馬車から降りるだけの礼儀も知らないんじゃ話すだけ無駄だ。父親がこの有様じゃ高が知れる」
要らんよ、とそう言うと俺は返事を待たずに歩きだした。あー、無駄な時間だ。恐ろしく。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!
くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作)
異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる