21 / 37
「この距離感はもしかして恋人ですか?」
嵐の前の静けさ
しおりを挟む
あれから数日。
俺の周囲は、この数ヶ月と比べて驚くことに平穏になっていた。
朝起きて学校へ行き授業を受け、お昼を食べ、また授業を受けその後少し寄り道をして家に帰る。
ゆっくりと時間は流れていった。
そして、あっという間に三月。
二年生が、終わりを告げる。
「では皆さん。次は最高学年になるんですから、その自覚を持ってですね……」
HRでの先生のありがたーいお言葉を聞きながら、俺はうたた寝をしていた。
その時、ブルルルとスマホが揺れる。
差出人は、紬だった。
紬の方をチラッと見ると、スマホを見なさいとジェスチャーで伝えてくる。
あと少しで授業終わるんだし別に今すぐじゃなくても。
そんな急用なのか?
俺はLINEを開く。
「授業終わったら、買い物行くから一緒に来なさい」
うん、授業終わってからで良かったな。
「おい石川。スマホしまえ」
「あ、すみません」
……なんで最終日に怒られて終わらないといけないんだろうか。
◇
「さあ結人! 奈緒ちゃんお別れサプライズパーティーの買い物へ行くわよ!」
放課後。
すぐ紬と教室をでた俺は、ハイテンションな紬に連れられスーパーに来ていた。
「結人、なんかテンション低くない? 行くわよ!」
「ああ、わかってるよ」
「そこは、『おー!』でしょ」
「めんどくさ」
「良いから早く!」
「……おー」
「声が小さい、やり直し」
「おー!」
「それでよし」
店先でこんなことやらせんな恥ずかしい。周りに見られてクスクス笑われてるし……。
道中聞いた話によると、今日の夜に秋元のお別れ会を家で開くらしい。
「それで? 今日の夜は何にするんだ?」
「さあ? あ、でもお母さんに買ってきて欲しいもの教えてもらってるからそれ買っていきましょう。……どれどれ。これは、おそらく揚げ物はありそうなラインナップ」
「おー、揚げ物かぁ。良いね」
「後はお菓子とジュースも買っていきましょ。ジュース選んできて」
「りょうかい」
俺は紬と別れ、一人飲み物コーナーへ向かう。
さて。何を買っていくのが良いのだろうか。
お茶は家にあるのでそれ以外にジュースを数本、そのラインナップこそ腕の見せ所。
紬はリンゴジュースが好きなので、まずはリンゴジュースを選ぶ。
後は炭酸か……? でも、炭酸はたまに苦手な人もいるしなぁ。
「秋元は何が良いんだろうなぁ」
「私はジンジャーが好きですよ」
「そうなのか。じゃあ…………は?」
慌てて振り返る。
そこには、秋元がいた。
「あ、でもサイダーもシュワシュワしてて好きです」
「……なんでいるの?」
あれれ? おっかしいぞー?
紬は秋元には、家に呼んで夜ご飯を食べていけることだけ伝えたと言っていた。
「なんでって……私も買い物に来たんですよ」
「なんで」
「いや……人様の家に遊びにいくのに、お菓子を買わないのは失礼かなと思いまして」
「あー、なるほどな」
「結人さんは、夕飯の買い出しですか?」
「ああ、まあそんな所」
「紬ちゃんと一緒ですか?」
「そうだよ。紬は頼まれたものを買ってる」
「そうですか」
「うん」
「…………」
「…………」
沈黙。
いつも、秋元が会話をつなげてくれるので、それがないと微妙な間が空いてしまう。
俺は、その空気に耐えられずジュースを取ると「それじゃあ、また後で」と離れようとする。
が、秋元が「そういえば」と口を開いた。
「紬ちゃん、最近とても優しいでしょ」
「?」
秋元の発言の意図を掴めずハテナを浮かべる。
「元気で明るく、優しい幼馴染。その理想みたいな子よね」
「横暴で自分勝手の間違いじゃないか?」
「だとしても。……とても、良い子よね」
「そうだな」
「ほんと、理想的。……怪しいくらいにね」
「秋元は……何が言いたいんだ?」
話題の核がまだ見えない。
「彼女は……」
「あ、奈緒ちゃんがいる! なんで!?」
秋元が言い終わる前に、背後から声が聞こえた。
「あ、紬ちゃん」
カゴいっぱいに買うものを詰め込んだ紬が、驚いた様子でこちらを見ている。
「あれ!? もしかしてサプライズお別れ会のことバレてる!?」
「あっ」
こいつ自分でやりやがった。
「え? お別れ会……?」
「えっ……その反応」
自分の過ちに気付いたのか、紬は慌てて口を抑える。
時はもうすでに遅し。
別にお別れ会ということがバレていたわけではないのに、自ら漏らしてしまった。
秋元は全てを理解したのか、「へーお別れ会かぁ」と口角を上げた。
「紬ちゃん、おっちょこちょいだね」
「あー……やらかした」
「馬鹿じゃないのか」
「どれもこれも結人のせいだから」
「なんで!?」
結局、サプライズ要素の消えてしまった純粋なお別れ会となってしまった。
家へと帰ってる途中。
「別に、お別れ会なんてことしなくてもいいのに」
「私がしたいのー! 奈緒ちゃんと、当分会えなくなる前にね」
「そうだね。…………ありがと」
秋元の、隠しきれない喜びを見れば、サプライズ要素なんてどちらでも良かったと認識した。
それにしても。
秋元は、さっき何を言いたかったのだろうか。
「彼女は……」
あの言葉の続き。
秋元が感じた紬への違和感。
「ほんと理想的。……怪しいくらいにね」
もしかして……。
秋元は……。
「結人! ついたよ!」
「え? ……あ、ほんとだ」
気づけば、家の前だった。
「何ぼーっとしてるの?」
「ごめん」
「こっからはちゃんと集中してよ? 最高の会にするんだから」
「ささ、奈緒ちゃんどうぞどうぞ」
「うん、お邪魔します」
紬と秋元は家へと入っていく。
俺もまずは、お別れ会のことを考えよう。
……そしてその後。俺は、紬と一度向き合わないといけない。
俺の周囲は、この数ヶ月と比べて驚くことに平穏になっていた。
朝起きて学校へ行き授業を受け、お昼を食べ、また授業を受けその後少し寄り道をして家に帰る。
ゆっくりと時間は流れていった。
そして、あっという間に三月。
二年生が、終わりを告げる。
「では皆さん。次は最高学年になるんですから、その自覚を持ってですね……」
HRでの先生のありがたーいお言葉を聞きながら、俺はうたた寝をしていた。
その時、ブルルルとスマホが揺れる。
差出人は、紬だった。
紬の方をチラッと見ると、スマホを見なさいとジェスチャーで伝えてくる。
あと少しで授業終わるんだし別に今すぐじゃなくても。
そんな急用なのか?
俺はLINEを開く。
「授業終わったら、買い物行くから一緒に来なさい」
うん、授業終わってからで良かったな。
「おい石川。スマホしまえ」
「あ、すみません」
……なんで最終日に怒られて終わらないといけないんだろうか。
◇
「さあ結人! 奈緒ちゃんお別れサプライズパーティーの買い物へ行くわよ!」
放課後。
すぐ紬と教室をでた俺は、ハイテンションな紬に連れられスーパーに来ていた。
「結人、なんかテンション低くない? 行くわよ!」
「ああ、わかってるよ」
「そこは、『おー!』でしょ」
「めんどくさ」
「良いから早く!」
「……おー」
「声が小さい、やり直し」
「おー!」
「それでよし」
店先でこんなことやらせんな恥ずかしい。周りに見られてクスクス笑われてるし……。
道中聞いた話によると、今日の夜に秋元のお別れ会を家で開くらしい。
「それで? 今日の夜は何にするんだ?」
「さあ? あ、でもお母さんに買ってきて欲しいもの教えてもらってるからそれ買っていきましょう。……どれどれ。これは、おそらく揚げ物はありそうなラインナップ」
「おー、揚げ物かぁ。良いね」
「後はお菓子とジュースも買っていきましょ。ジュース選んできて」
「りょうかい」
俺は紬と別れ、一人飲み物コーナーへ向かう。
さて。何を買っていくのが良いのだろうか。
お茶は家にあるのでそれ以外にジュースを数本、そのラインナップこそ腕の見せ所。
紬はリンゴジュースが好きなので、まずはリンゴジュースを選ぶ。
後は炭酸か……? でも、炭酸はたまに苦手な人もいるしなぁ。
「秋元は何が良いんだろうなぁ」
「私はジンジャーが好きですよ」
「そうなのか。じゃあ…………は?」
慌てて振り返る。
そこには、秋元がいた。
「あ、でもサイダーもシュワシュワしてて好きです」
「……なんでいるの?」
あれれ? おっかしいぞー?
紬は秋元には、家に呼んで夜ご飯を食べていけることだけ伝えたと言っていた。
「なんでって……私も買い物に来たんですよ」
「なんで」
「いや……人様の家に遊びにいくのに、お菓子を買わないのは失礼かなと思いまして」
「あー、なるほどな」
「結人さんは、夕飯の買い出しですか?」
「ああ、まあそんな所」
「紬ちゃんと一緒ですか?」
「そうだよ。紬は頼まれたものを買ってる」
「そうですか」
「うん」
「…………」
「…………」
沈黙。
いつも、秋元が会話をつなげてくれるので、それがないと微妙な間が空いてしまう。
俺は、その空気に耐えられずジュースを取ると「それじゃあ、また後で」と離れようとする。
が、秋元が「そういえば」と口を開いた。
「紬ちゃん、最近とても優しいでしょ」
「?」
秋元の発言の意図を掴めずハテナを浮かべる。
「元気で明るく、優しい幼馴染。その理想みたいな子よね」
「横暴で自分勝手の間違いじゃないか?」
「だとしても。……とても、良い子よね」
「そうだな」
「ほんと、理想的。……怪しいくらいにね」
「秋元は……何が言いたいんだ?」
話題の核がまだ見えない。
「彼女は……」
「あ、奈緒ちゃんがいる! なんで!?」
秋元が言い終わる前に、背後から声が聞こえた。
「あ、紬ちゃん」
カゴいっぱいに買うものを詰め込んだ紬が、驚いた様子でこちらを見ている。
「あれ!? もしかしてサプライズお別れ会のことバレてる!?」
「あっ」
こいつ自分でやりやがった。
「え? お別れ会……?」
「えっ……その反応」
自分の過ちに気付いたのか、紬は慌てて口を抑える。
時はもうすでに遅し。
別にお別れ会ということがバレていたわけではないのに、自ら漏らしてしまった。
秋元は全てを理解したのか、「へーお別れ会かぁ」と口角を上げた。
「紬ちゃん、おっちょこちょいだね」
「あー……やらかした」
「馬鹿じゃないのか」
「どれもこれも結人のせいだから」
「なんで!?」
結局、サプライズ要素の消えてしまった純粋なお別れ会となってしまった。
家へと帰ってる途中。
「別に、お別れ会なんてことしなくてもいいのに」
「私がしたいのー! 奈緒ちゃんと、当分会えなくなる前にね」
「そうだね。…………ありがと」
秋元の、隠しきれない喜びを見れば、サプライズ要素なんてどちらでも良かったと認識した。
それにしても。
秋元は、さっき何を言いたかったのだろうか。
「彼女は……」
あの言葉の続き。
秋元が感じた紬への違和感。
「ほんと理想的。……怪しいくらいにね」
もしかして……。
秋元は……。
「結人! ついたよ!」
「え? ……あ、ほんとだ」
気づけば、家の前だった。
「何ぼーっとしてるの?」
「ごめん」
「こっからはちゃんと集中してよ? 最高の会にするんだから」
「ささ、奈緒ちゃんどうぞどうぞ」
「うん、お邪魔します」
紬と秋元は家へと入っていく。
俺もまずは、お別れ会のことを考えよう。
……そしてその後。俺は、紬と一度向き合わないといけない。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
両隣の幼馴染が交代で家に来る
みらいつりびと
恋愛
両親がタイへ行く。
父親が3月上旬に上司から命じられた。4月1日からバンコクで勤務する。
うちの父と母はいわゆるおしどり夫婦というやつで、離れては生きていけない……。
ひとり暮らしの高校2年生森川冬樹の世話をするため、両隣の美しい幼馴染浅香空と天乃灯が1日交代で通ってくる。
冬樹は夢のような春休み期間を過ごし、空と灯は火花を散らす。
幼馴染三角関係ラブストーリー。全47回。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
繰り返す夜と嘘 〜【実録】既婚の僕と後輩の彼女、あの夜のキスから始まった13年の秘密〜
まさき
恋愛
結婚して半年の僕と、同じ職場の彼女。
出会った頃は、ただの先輩と新入社員だった。
互いに意識しながらも、
数年間、距離を保ち続けた。
ただ見つめるだけの関係。
けれど――
ある夏の夜。
納涼会の帰り道。
僕が彼女の手を握った瞬間、
すべてが変わった。
これは恋でも、友情でもない。
けれど理性では止められない、
名前のない関係。
13年続いた秘密。
誓約書。
そして、5年の沈黙。
これは――
実際にあった「夜」の記録。
学年一可愛いS級の美少女の令嬢三姉妹が、何故かやたらと俺の部屋に入り浸ってくる件について
沢田美
恋愛
名門・雄幸高校で目立たず生きる一年生、神谷悠真。
クラスでは影が薄く、青春とは無縁の平凡な日々を送っていた。だがある放課後、街で不良に絡まれていた女子生徒を助けたことで、その日常は一変する。救った相手は、学年一の美少女三姉妹として知られる西園寺家の次女・優里だった。さらに家に帰れば、三姉妹の長女・龍華がなぜか当然のように悠真の部屋に入り浸っている。名門令嬢三姉妹に振り回されながら、静かだったはずの悠真の青春は少しずつ騒がしく揺れ始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる