恋人以上の幼馴染と、特別な関係を築くまで

永戸望

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幼馴染は譲れない

幼馴染は一人じゃない

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『ユート、ワタシ……アナタ……スキ』

『うん、僕も』

『ツギハ、ケッコンスル!』

    ◇

 高校三年、春。
 プルルルル、プルルルル。
 目覚まし時計が、鳴っている。

「結人くーん? 早く起きなさーい」

「あと数分」

「ほーらー! 紬はもう家を出たわよ?」

「……はーい」

 俺はのっそりと起き上がる。

「あ、おはようございます美雪さん」

「うん、おはよう結人くん。ご飯はもう準備してあるから」

「ありがとうございます」

 俺は、ゆっくりと部屋から出てリビングへと向かった。
 リビングの机の上には俺の朝ごはんが用意されていたので、それを食べる。

 ひとりで朝ご飯を食べるようになってから、数週間が経った。
 紬に振られてから、俺たちの距離感は変わってしまった。

 あれから数日間は、俺は耐え難い悲しみの中、部屋を動けずにいた。
 そして少しずつ日常生活へと戻り、紬も普通に接してくれてはいるものの、中々俺の気持ちが整理できず自然と距離を取ってしまっている。

 同じ家にいて、不自然な状態。
 美雪さんも気を遣ってくれて深く聞かないでくれてはいるが、俺と紬の溝は深いものになってしまった。

「そりゃあそうだよなぁ」

 俺は1人呟く。
 何年も一緒に住んでいた幼馴染が、実は好意を抱いてきて告白してきた。そして自分にはそんなつもりはない。
 そして相手の好意を自覚しながら、日常生活を送る。気まずいったらありゃしない。

 新学期が始まってから数日、少しは普通にしようと思っていたのだが、紬は早くに学校へ行ってるようで、やっぱり距離を取られている感じがする。

 想像より、それはキツかった。好きだと認識し、しかも告白した相手に距離を取られる。
 片想いとか、こんなに辛いものなのか。
 ……あとで、紬としっかり話そう。
 俺はスマホを取り出すと、紬に「放課後少し時間が欲しい」と送る。
 家でも良いんだが、美雪さんがいると中々難しいし、部屋に篭られるとどうしようもない。

「……あ、時間やべ」

 俺は、慌てて家を飛び出した。

    ◇

 今年度から、紬とは別クラスの配属になってしまった。過去一度もそんなことがなかったのだが、どうもタイミングというものが悪い。
 教室へつくと、異様な空気が流れていた。
 いつもより騒がしくて、多くの人がひとつの場所に集中して集まっている。
 
「何してるんだ?」

 俺が不思議に思っていると、その集団の中から颯爽と1人の男が俺の方へとやってきた。

「おお結人。今日もギリギリだな」

 友人の永倉。最近久しく見ていない気がするが、ちゃんと元気にしていたようだ。

「睡眠時間を沢山取ってるんでね」

「そうだな、お前には休息が必要だ」

 憐れむように、永倉は俺の肩をポンポンと叩く。
 こいつは俺と紬の現状を知っている。俺が教えた。

「女の子なら、俺の彼女の友達からいい子を会わせてあげるけど?」

「いや遠慮しとくよ。別に、振られただけで、諦めたわけじゃない」

「それでこそ漢だ。よく言った!」

 10年以上の片想いだ。簡単に忘れて次に行けるわけがないだろう。

「そういや、この騒がしい感じはなんだ? もしかしてテストあったりする?」

「おおよくぞ聞いてくれた。それを説明してあげようと思ったんだ」

 ほんと友人ってこういう時都合が良いな。
 永倉は、少し興奮気味に答えた。

「実はこのクラスに転校生が来たんだ」

「転校生? 学校始まって数日だぞ?」

「あー、なんか飛行機とかが遅れたらしい」

「へー、ってことは本州から来たのか」

「いや海外だよ」

「海外!?」

「アメリカ人だってさ。小さい頃この辺に住んでて、戻ってきたんだと」

「へー」

 そりゃあ注目を浴びるわけだ。
 その方向を見るが、人が多くてその人を確認することはできない。
 まあ、俺はどうせ関係ないからな。と思ったが、転校生の席はどうも俺の隣らしかった。
 確かに、数日隣には誰もいなかった気がする。

 そんな事を思いながらぼーっと群衆を遠目で見てると、先生が教室へとやってきた。

「ほらー、お前ら座れー」

 その声に反応し集団は散らばりやっと座れるようになる。
 そして、転校生の姿も初めてお目にする。

 とても綺麗な金髪ツインテール。欧州人的なすっと高い鼻に長い眉。
 そして、赤い瞳。
 その転校生は、チラッと俺の方を確認すると、目を見開いた。

「……ユート?」

 転校生はポツリと呟く。

「うん?」

「もしかして、ユートですか!?」

 転校生はガタンと立ち上がり、驚きの声をあげる。
 ユート……? 誰のことだ?
 しかし、俺の方を向いて言っている。後ろを確認するが、誰もいない。
 つまり、俺のことを言ってる?

「アナタ、ユートですよね!?」

「俺は結人(ゆいと)だけど」

「やっぱり、ユートです! お久しぶりです!」

「……えっと、何処かでお会いしましたっけ?」

 なにか、記憶の片隅にあるような気がするのだが、なぜか思い出せない。
 俺の言葉に、転校生は悲しそうな顔を見せる。

「忘れてしまったのです? 幼馴染のことを」

「は? …………幼馴染?」

 俺の幼馴染は、紬だけなはずだが。

「ワタシはリリアナ」

「リリアナ……? あっ」

 リリアナ、思い出した!
 昔、本当に小さい頃。紬が引っ越してくる前まで俺の隣に住んでいた女の子。

「思い出して、くれたんですね」

「うん、思い出した。久しぶりだな」

「ハイ! ……会いたかったです」

「ちょ」

 リリアナは、俺に勢いよく抱きついてきた。
 その拍子にバランスを崩し地面へと倒れ込む。
 それでも、リリアナはお構いなしで。

 それだけでも驚気の声をあげるクラスだったが、リリアナはもう一つ爆弾を投下する。

「ワタシは、アナタだけのフィアンセです!」

「…………え?」

「「「はぁ!?」」」

 フィアンセって、婚約者って意味だよな?
 ……俺、いつの間に婚約者ができたんだよ。
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