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第三章『二年後のリィ&リリーと領地問題の解決』

やっと始まる領地問題(1)

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さて、これからはギシュからの報告(前話参照)を下にして動いていこう。
まずは国王に会いに行かないとな。
「さて…今日はニコが休みだし転移でいいか。」
そう言って僕は荷物を異次元に放り込み、転移した。
「おっと、近づきすぎた…」
まさか国王の部屋の前だとは思わなかった…
「まぁいいか。
魔力的に多分いるし。
でも少し殺気を感じる…
怒ってるのか?」
僕は国王がいるであろう部屋のドアをノックし、入った。
「お邪魔します。
リィです…が…?」
あれ、さっきまで魔力感知で見えてたんだけどな…
「あれぇ?」
でも瞬間移動系統の魔法を国王は持っていないしなぁ…
そんなことを思った。
「【武器召喚】、【ブースト】。」
僕は異次元に入れていた刀を手に取り、身体能力を上げ、ある場所へと突っ込んだ。
「バレバレなんだよ。」
入る直前に感じた殺気と全く同じ気配だった。
「国王を殺そうとか考えてるならやめとけ。
さもなくばお前を殺す。」
ソファの裏に見事に隠れていたその男を前に僕はそう言い放った。
「くそっ!」
そう言いながら魔法を唱えようとする男。
「無駄な抵抗はやめろ。
というかそんな雑魚魔法で僕を殺せると思うなよ…?」
さらに圧をかける。
「ぐっ…」
「というかお仲間さん達もさっさと出てきなよ。
遺言ぐらい残したいだろ?」
後ろを振り向きながら言った。
するとさらに男が二人現れた。
「勝てると思うなよ。」
僕はそう言いながら最近覚えた炎の精霊、イフリートを召喚した。
すると男たちの膝は折れ、両の手を挙げた。
「降参…だ。」
「分かった。
じゃあ逮捕だな。」
僕は雷魔法で作った枷を付けた。
『国王様。』
僕は念話(テレパシー)を使って国王に話しかけた。
『リィではないか。
どうかしたか?』
『先程国王様の場所へ向かった際、部屋に強盗が入っておりましたので捕まえました。
今は枷を付けて三人をまとめている状態です。』
『そうか!
また迷惑をかけてすまないな!』
『いえいえ。
それでは、なるべく速く来ていただけると幸いです。』
『了解した。
合格祝いもそのとき話そう。』
『承知しました。』
ふぅ…
とりあえず…待ちか。

二十分程経った頃、国王が部屋に戻ってきた。
「遅くなってすまないな。
強盗とはこいつらのことか?」
国王はさっきの男三人衆を指差した。
「そうです。
事前に捕まえられて安心しました。」
「ご苦労だった。
後で褒美を渡そう。」
「いえ、これぐらいで褒美などいりませんよ。
まずは本題の領地について話して頂けますか?」
「もちろんだ。」
そう言って今日の本題が始まった。
「まずは合格おめでとう。
そしてリリーの合格を手伝ってくれたことに感謝する。」
口を挟もうか迷ったが、面倒そうなのでやめておこう。
「貴殿にはダンジョン近くの都市である【ベルタリア】とその周辺の統治を任せたい。」
「なるほど。」
ベルタリア…聞かない都市だが…
「最近作られた都市でな。
なんでも、ギルドで揉め事が多数起きているらしい。
できれば今すぐに向かってほしい。」
今すぐか…
まぁ冒険の方は今は全員休暇を取っているから正直暇だ。
「了解しました。
今すぐ向かいます。」
「本当か!
ではすぐに馬車を出そう!」
「いえ、転移するので馬車はいりませんよ。
どの周辺でしょう?」
とりあえず場所を聞いてみた。
「この都市から北東に八十キロ程の場所にある都市だ。
鉱山であるフルア山の麓にあり、巨大なダンジョンが一キロ圏内にある場所だ。」
「詳しい説明感謝します。」
「それと…これを持っていけ。」
国王はテーブルの上に置いていた紙を一枚取り、僕に渡した。
「ギルドでこれを渡せ。
そうすれば現時点の最高権力者に会える。」
なるほど。
依頼書みたいなものか。
「了解しました。
これから参ります。
リリーによろしくと伝えておいて下さい。」
僕はそれだけ言い残して転移した。
「ここらへんか…」
北東八キロの場所へ転移した。
近くに商人がいたので話しかけてみることにした。
「すいません。
ベルタリアってここらへんですかね?」
「お、あんちゃんもベルタリアに向かってるのか。
俺もなんだ。
着いてきなよ。」
「感謝します。」
なんと心優しい人間だろうか。
「ここからなら十分程度で着く。」
十分…本気で走ったら十秒もかからない距離だな。
「そういやあんちゃん、名前は?」
「リィです。
グラシアル家四男、リィ・グラシアル。」
「グラシアル!?
すいませんタメ口など叩いてしまって!
貴族の方でしたか!」
と言って頭を下げる商人。
「頭を上げて下さい。
かしこまらなくても大丈夫ですよ。」
今は貴族でも元は一般人だからな…
「ありがとうございます…!」
ほぼ泣いてるじゃん…
「道を教えて下さってありがとうございます。」
「これぐらい当然のことです。」
僕が貴族と分かっていなくても優しくしてくれた。
久々にこんな優しい人に会った気がする。
「上からで申し訳ないですが、お礼に荷物を押させて下さい。」
そう言うと少し沈黙が起き、ようやく商人が声をあげた。
「いやいやいや!!!
貴族様に手伝ってもらうなど失礼です!」
僕は少しムッと来たので、言い返した。
「ではその貴族の願いを断る方が失礼なのでは?」
「うっ…
そう言われたらそうですが…」
「では、貸して下さい。
これは貴族として、ではなく1人の子供としてのお礼です。
本当にありがとうございました。」
「は、はい…こちらこそ。」
商人の困った顔を見れたので、少し満足した僕であった。
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