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第二章 ルッタ・アルルー冒険の日々
第32話 くせものと遭遇しました!
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「僕はくせものではありません!」
言いながら、ルッタは自身に攻撃を仕掛けてきた相手の正体を探る。
「隙ありっ!」
――その瞬間、今度は正面の茂みからルッタの足元目掛けて苦無が飛んできた。
「風撃!」
ルッタは茂みに向かって反撃の風魔法を放つ。
「ぐえ」
中から小さな悲鳴。どうやら見事に命中したらしい。
「大当たりです!」
言いながら真っすぐに茂みへ近づき、躊躇なく手を突っ込んだ。すると、何やらモフモフしたものを掴む。
「この感じ……獣型のモンスターでしょうか?」
そんなことを呟きながら曲者を引きずり出してみると、姿を現したのは忍者と思しき恰好をした小柄な少女であった。
「む、むねん……」
茶色の髪を後ろでまとめ、黒を基調とする装束に身を包んだその姿は、まさに絵に描いたような女忍者――くのいちである。
彼女の最も特徴的な点は、狸のような尻尾と耳が生えているところであった。ルッタが掴んでいたのは彼女の尻尾だったのである。
「……あれ? モンスターかと思ったら……これは忍者キャラのオボロですね。一体なぜオボロがここに?」
ルッタは引きずり出した少女をまじまじと眺めながら、不思議そうに呟く。
「なっ、なぜ拙者の名前をっ?!」
名前を言い当てられた少女――オボロは、驚き目を見開く。素早く身を起こし、距離を取って懐から二本の短刀を抜いた。
「さてはお主……敵方の忍びでござるなっ! 生かしてはおけぬっ! かくごーーーーっ!」
「風撃!」
「ぐえ」
ルッタが再び風魔法を放つと、彼女は吹き飛ばされて地面に転がった。
「つ……つよい……っ!」
とんだ茶番である。
「それで、どうしてこんなところに居るのですか?」
倒れている彼女の顔を覗き込みながら、何事もなかったかのように問いかけるルッタ。
「拙者はっ、何をされようと……絶対に口を割らないでござる……っ!」
くのいち少女は唇を噛みしめ、恐怖でぷるぷると震えながらも毅然とした態度を崩さない。
その様子は、戦乱の世に生きる忍びとしての矜持と覚悟を感じさせるものであった。
――相手が同い年くらいの少年でなければ。
「……なるほど。では仕方ありませんね」
「へっ?」
きょとんとする少女。
「僕はもう行きます! なぜなら、このお屋敷にある分身の術の秘伝書を手に入れなければいけないので!」
「ひでんしょ……?」
情報を得ることを諦めたルッタは、彼女の元から離れて再び屋敷の入口の扉へ近づく。
「ま、待つでござるぅっ!」
その背中に、思わずオボロは叫んだ。
「拙者が忍び込むのに……お主に騒ぎを起こされては困るのでござるよっ!」
彼女は大慌てで茂みへとルッタを連れ込み、事情を話すことにするのであった。
*
原作において、オボロは木乃花ユキマルという若き大名に仕える忍びだ。
ヒサギリ編では序盤の導入となるストーリーが終わると、どの勢力に攻め込むか自由に選択できるようになるのだが、田貫《たぬき》の国を治めるユキマルという大名は最も攻略の難易度が低いキャラなのである。
その家臣である狸忍者のオボロも性能としては微妙であるため、余程の物好きでなければ木乃花家は滅ぼすという選択を取られがちだ。
戦国乱世の中で真っ先に滅ぼされることが多い不憫な国の主に仕える忍びがオボロなのである。
そんな彼女が妖怪屋敷型のダンジョンである『鬼幻楼』にやって来た理由は、ここに住まう妖怪たちによって攫われてしまった主君のユキマルを救い出すためだ。
「きっと、ユキマル様は今も心細い思いをしているでござる。拙者が早く助けに行かねば……っ!」
涙ながらにそう語るオボロ。
(ユキマルはこの時点からすでに不憫なのですね。さすがは弱小の一族です!)
一方ルッタは、口に出したら処刑されかねないようなことを考えていた。
「……お主、名はなんというでござるか?」
「ルッタです」
「……るっ太? それはまた……珍妙な名でござるな……」
オボロはやや引き気味な様子で呟く。尻尾がくるりと丸まっていた。
「もしやお主……異国の民ではござらんか?」
「うーん。おそらく……そういうことになるのでしょうか?」
首をひねりながら、曖昧な返事をするルッタ。
「なぜお主が聞き返すのでござるっ!」
どっちつかずな彼の受け答えに対し、オボロは思わず突っ込みを入れた。
「ヒサギリは和風な国なので、前世で日本生まれだった僕にとっては、一周回って故郷といえるような気もするのですが……」
「うむ。会話が成立していない気がするでござる。……お主、やはり妖が化けているのでは?」
怪しむような視線を投げかけるオボロだったが、この件に関しては単純にルッタが異常な境遇であるだけだ。
「……まあ、よいでござる。とにかく――拙者がユキマル様を助け出すまで、お主はじっとしているでござるよっ!」
オボロが強く忠告したその時。
「オイ、外で騒いでるガキはどこだぁ? オレが食ってやるぞッ!」
突如として屋敷の扉が開き、入り口から赤い瞳と土気色の肌をした異形の鬼が姿を現す。
(――見つかるっ!)
(――経験値っ!)
忍びの少女とゲーマー少年が反応したのは、ほぼ同時のことであった。
言いながら、ルッタは自身に攻撃を仕掛けてきた相手の正体を探る。
「隙ありっ!」
――その瞬間、今度は正面の茂みからルッタの足元目掛けて苦無が飛んできた。
「風撃!」
ルッタは茂みに向かって反撃の風魔法を放つ。
「ぐえ」
中から小さな悲鳴。どうやら見事に命中したらしい。
「大当たりです!」
言いながら真っすぐに茂みへ近づき、躊躇なく手を突っ込んだ。すると、何やらモフモフしたものを掴む。
「この感じ……獣型のモンスターでしょうか?」
そんなことを呟きながら曲者を引きずり出してみると、姿を現したのは忍者と思しき恰好をした小柄な少女であった。
「む、むねん……」
茶色の髪を後ろでまとめ、黒を基調とする装束に身を包んだその姿は、まさに絵に描いたような女忍者――くのいちである。
彼女の最も特徴的な点は、狸のような尻尾と耳が生えているところであった。ルッタが掴んでいたのは彼女の尻尾だったのである。
「……あれ? モンスターかと思ったら……これは忍者キャラのオボロですね。一体なぜオボロがここに?」
ルッタは引きずり出した少女をまじまじと眺めながら、不思議そうに呟く。
「なっ、なぜ拙者の名前をっ?!」
名前を言い当てられた少女――オボロは、驚き目を見開く。素早く身を起こし、距離を取って懐から二本の短刀を抜いた。
「さてはお主……敵方の忍びでござるなっ! 生かしてはおけぬっ! かくごーーーーっ!」
「風撃!」
「ぐえ」
ルッタが再び風魔法を放つと、彼女は吹き飛ばされて地面に転がった。
「つ……つよい……っ!」
とんだ茶番である。
「それで、どうしてこんなところに居るのですか?」
倒れている彼女の顔を覗き込みながら、何事もなかったかのように問いかけるルッタ。
「拙者はっ、何をされようと……絶対に口を割らないでござる……っ!」
くのいち少女は唇を噛みしめ、恐怖でぷるぷると震えながらも毅然とした態度を崩さない。
その様子は、戦乱の世に生きる忍びとしての矜持と覚悟を感じさせるものであった。
――相手が同い年くらいの少年でなければ。
「……なるほど。では仕方ありませんね」
「へっ?」
きょとんとする少女。
「僕はもう行きます! なぜなら、このお屋敷にある分身の術の秘伝書を手に入れなければいけないので!」
「ひでんしょ……?」
情報を得ることを諦めたルッタは、彼女の元から離れて再び屋敷の入口の扉へ近づく。
「ま、待つでござるぅっ!」
その背中に、思わずオボロは叫んだ。
「拙者が忍び込むのに……お主に騒ぎを起こされては困るのでござるよっ!」
彼女は大慌てで茂みへとルッタを連れ込み、事情を話すことにするのであった。
*
原作において、オボロは木乃花ユキマルという若き大名に仕える忍びだ。
ヒサギリ編では序盤の導入となるストーリーが終わると、どの勢力に攻め込むか自由に選択できるようになるのだが、田貫《たぬき》の国を治めるユキマルという大名は最も攻略の難易度が低いキャラなのである。
その家臣である狸忍者のオボロも性能としては微妙であるため、余程の物好きでなければ木乃花家は滅ぼすという選択を取られがちだ。
戦国乱世の中で真っ先に滅ぼされることが多い不憫な国の主に仕える忍びがオボロなのである。
そんな彼女が妖怪屋敷型のダンジョンである『鬼幻楼』にやって来た理由は、ここに住まう妖怪たちによって攫われてしまった主君のユキマルを救い出すためだ。
「きっと、ユキマル様は今も心細い思いをしているでござる。拙者が早く助けに行かねば……っ!」
涙ながらにそう語るオボロ。
(ユキマルはこの時点からすでに不憫なのですね。さすがは弱小の一族です!)
一方ルッタは、口に出したら処刑されかねないようなことを考えていた。
「……お主、名はなんというでござるか?」
「ルッタです」
「……るっ太? それはまた……珍妙な名でござるな……」
オボロはやや引き気味な様子で呟く。尻尾がくるりと丸まっていた。
「もしやお主……異国の民ではござらんか?」
「うーん。おそらく……そういうことになるのでしょうか?」
首をひねりながら、曖昧な返事をするルッタ。
「なぜお主が聞き返すのでござるっ!」
どっちつかずな彼の受け答えに対し、オボロは思わず突っ込みを入れた。
「ヒサギリは和風な国なので、前世で日本生まれだった僕にとっては、一周回って故郷といえるような気もするのですが……」
「うむ。会話が成立していない気がするでござる。……お主、やはり妖が化けているのでは?」
怪しむような視線を投げかけるオボロだったが、この件に関しては単純にルッタが異常な境遇であるだけだ。
「……まあ、よいでござる。とにかく――拙者がユキマル様を助け出すまで、お主はじっとしているでござるよっ!」
オボロが強く忠告したその時。
「オイ、外で騒いでるガキはどこだぁ? オレが食ってやるぞッ!」
突如として屋敷の扉が開き、入り口から赤い瞳と土気色の肌をした異形の鬼が姿を現す。
(――見つかるっ!)
(――経験値っ!)
忍びの少女とゲーマー少年が反応したのは、ほぼ同時のことであった。
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