転生したら主人公を裏切ってパーティを離脱する味方ヅラ悪役貴族だった~破滅回避のために強くなりすぎた結果、シナリオが完全崩壊しました~

おさない

文字の大きさ
5 / 43

第5話 先生の優しい手ほどき

しおりを挟む
 最初に授業をしてくれることになったのは、剣術担当のダリア先生だ。ニナが有無を言わさずにそう決めた。ちょっと怖かった。

 どうやら俺の教育に関して、ニナには大きな権限が与えられているらしい。原作では詳しく描写されることが無かったので知らなかったが、ただのメイドさんではないようだ。

 ニナからはちょっと病んだ雰囲気を感じることが時々あるし、なるべく怒らせないようにした方がいいだろう。アランより少し年上なだけで、どちらかと言えばまだ子供なのに……恐ろしい存在だ。

 ……ともかく、そんなこんなで俺は今、屋敷の庭でダリア先生から剣術の手ほどきを受けている。

「どうした、緊張しているのか? こんなにかたくなって……」
「あっ……せ、先生……」
「ふふっ、そんなに情けない声を出すな。……大丈夫、私に身を任せろ」

 剣術の手ほどきを受けている!

「剣は軽く握るんだ。りきみすぎてはいけないぞ」
「はい……」
「そう、包み込むように……」
「………………」

 なにこれ。

「さあ、私の真似して」

 背後からそっと腕を回し、木剣を握っている俺の手に優しく両手を添えてくるダリア先生。

 ちなみに、先生は胸に巻いたさらしとハーフパンツ以外何も身につけていない。動きやすい格好になると言って、俺に前で鎧とドレスを脱いだのである。

 腹筋がすごい割れていて、さらしからはみ出た下乳がすごくて、すごかった。

 それはそれとして、簡単に女騎士が自身のトレードマークを脱ぎ捨てて良いのだろうか。

 鎧とドレスを脱いでしまった今のダリア先生は、年頃の少年の前で破廉恥な格好をするただの痴女である。

 まったく……剣術の鍛錬に集中させる気があるのだろうか? 小生には疑問しかないでござるよ。

「ほら、肩の力も抜くんだ」

 俺が湧き起こる邪念と戦っていると、ダリア先生が突然両手で肩をがっしりと掴んできた。

「………………」
「そうだ。それでいい」

 身長差的に、俺の頭はダリア先生の胸の少し下あたりにくる。そして現在、ダリア先生は俺の背後に密着して熱心に指導してくださっている。すると何が起こるのかは言うまでもない。

「……大丈夫か?」

 先生、ぜんぜん集中できません!

「くッ…………!」

 この淫魔め……!

「……いいかアラン。剣は両側で斬ることができる。――即ち、敵に刃を向けた時は常に己にも刃が突きつけられているということだ。内側の刃は己を律する為に使え」
「………………!」

 ――そうか。

 何も考えるな。心を無にしろアラン・ディンロード。

「……それじゃあ、まずは軽く素振りをしてみよう」

 ダリア先生が俺から離れたその瞬間、世界が停止する。

 脱力しきっていた全身の筋肉と、乱れていた精神が、ただの一振りのために一瞬だけ緊張した。

「うおおおおおおおおおおおッ!」

 俺の放った鋭い一撃が風を切り裂く。

「天才だ…………!」

 ダリア先生が、歓喜に満ちた声で言った。

 ――己の欲に打ち勝ち、雑念を全て捨て去ることで、極限まで無駄を削ぎ落とした斬撃になる。

 分かりましたよ、先生。あなたはこの感覚を教えるために、わざわざ身体を張って僕をたぶらかしたのですね。

 ただの痴女だと思ってすみませんでした。

「すごいぞアラン君! どうやら、私はとんでもない才能と巡り合ってしまったみたいだな……!」
「いえいえ、ダリア先生のおかげですよ。ありがとうございます」
「そう謙遜するな! 私はまだ、君に剣の握り方しか教えていないだろう?」

 え?

「えっ?」

 うん?

「ん? どうかしたのか?」
「い、いえ。内側の刃は己を律する為に使えと……」
「ああ、あれはこの前酒場で酔い潰れてた剣士聞いた話の受け売りだ。カッコよかったからついキミにも話してしまったが、所詮は与太話だから真剣に受け止めなくていいぞ! はっはっは!」
「………………」

 前言撤回。やっぱりダリア先生はただの痴女だった。
 
 *

 午後は魔術の授業だ。

 俺は今、自室でメリア先生と二人きりになっている。

「メ、メリア先生……っ、僕、もう……っ!」
「落ち着いて、深呼吸しましょう」
「はぁ、はぁ……!」
「まだまだ、いっぱい出してもらうわよ。大丈夫よね?」
「そ、そんな…………!」

 授業といっても、ひたすら魔力を放出する訓練をさせられているだけだが。

「あなたの中には、無尽蔵の魔力が眠っているの。とってもすごい素質よ……!」

 興奮した表情で舌なめずりをするメリア先生。そういえばこの人、魔術のことになると周りが見えなくなるんだったな。

「普通の子だったら、とっくに魔力切れで気を失っているわ。でもあなたは違う。……だから、まずは限界を知りたいの」
「………………っ!」
「頑張ってアランちゃん。終わったら、何でもご褒美をあげるわ」
「な、なんでも!?」
「はい集中。魔力の流れが乱れているわよ」
「………………」

 部屋の中心で背もたれのない椅子に座り、ひたすら魔力を外へ放出するイメージを続ける。

 それだけのことなのに、時間が経つにつれてどんどんと疲労感が蓄積していき、身体がだるくなってくる。

 どうやら、魔力を扱うのはかなり精神的に疲れる行為らしい。

「あまり肩に力を入れすぎないで。大切なのは精神を安定させることなの。リラックスよリラックス」

 メリア先生は俺の後ろに立つと、そっと両肩に触れてきた。剣術も魔術も脱力することが大切らしい。へんなの。

「もみもみ」
「あの、先生……肩を揉むのはやめてください」

 ちなみに、メリア先生の身長はダリア先生と大体同じだ。

 俺が座ると頭上にメリア先生の胸がくる。そして現在、先生は俺の背後に密着して熱心に指導してくださっている。すると何が起こるのかは言うまでもない。

 まったく……メリア先生といいダリア先生といい、健全な少年を誑かしている自覚はないのでござるか!? 転生してからはまだ目覚めてなかったのに……!

「ほうら、集中して」

 耳元でそっと囁いてくるメリア先生。

「はい……っ!」

 俺はぎゅっと目をつむり、雑念を振り払おうとする。

「目を閉じてはダメよ。開けたままイメージできるようにするの。そうしないと、実戦でまともに魔術を扱えなくなってしまうでしょう?」

 すると今度は、メリア先生が俺の顔を両手でおさえながら言った。

「たまにいるのよね、目を閉じないと魔術を発動させられない魔術師。一度癖になってしまうと、直すのはとても難しいわ」
「………………」

 それは困るな。

「くっ…………!」

 仕方なく目を開けると、屈み込んだメリア先生の谷間が目に飛び込んでくる。

 すごくすごいです。

「…………」
「そう、良い子ね。……でも、また魔力の流れが乱れているわ。集中集中」
「………………」

 集中させる気ないだろ!

 なんだその教師としてあるまじき破廉恥な格好は! 胸元が開いたドレスを着用するんじゃない! 年頃の少年に教えてるんだぞ! 配慮しろ! 魔力じゃなくて別の何かが目覚めたらどうするつもりだ! この淫魔め!

「どんな状況でも、常に冷静でいること。それが魔術師にとって一番大切なことなの」
「…………」
「アラン、あなたならできるわ」
「………………!」

 なるほど。

 耳元で囁いてきたり、ベタベタと触ってきたり、胸元を見せつけてきたりしたのは、全て意図的な妨害だったのだ。

 ――ようやく分かりました、先生。あなたはずっと、冷静さを保つ為の訓練をしてくれていたのですね。

 ただの痴女だと思ってすみませんでした。

「…………ふぅ」

 全てを理解した俺は、気絶することもなく、最後まで魔力を出し切ることに成功した。

「すごいわ……初めてなのにやり遂げてしまったのね……!」
「メリア先生の特訓のおかげです。ありがとうございました」
「うふふ、そう言ってくれると嬉しいわ。――そういえば、最初の方は魔力の流れが乱れていたけれど、途中から別人みたいに安定し始めたわよね。何かコツを掴んだのかしら?」
「はい、どうにか妨害に慣れることができました」
「うん? 妨害……?」

 首を傾げるメリア先生。

「えっ」
「ここはあなたの部屋よ? 一番リラックスできるし、邪魔が入ることなんてないでしょう? アタシも、なるべくアランちゃんが集中できるように協力していたし……」
「…………」
「ど、どういうこと?」
「なんでもありません。全て気のせいだったみたいです」
「そ、そう……なの……?」
  
 前言撤回。やっぱりメリア先生もただの痴女だった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

処理中です...