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第9話 暴力の化身
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魔力解放をしたメリア先生とダリア先生にド派手にぶっとばされ、やや調子に乗っていた心をへし折られてから六日が経ち、いよいよ精霊祭の前日となった。
一応、怪我は治っている。年下のニナから「少しは加減してくださいっ!」と説教される先生達の姿は見ていて忍びなかったがな。
「さてと。出かける準備も済ませたことだし、早速馬車に――」
「失礼しますアラン様。……お父様がお呼びです。どうぞ書斎へ」
「……ふえぇ?」
気合を入れて屋敷を出発しようとした俺は、突然の呼び出しによって出鼻を挫かれる。
まったく、お父さまは一体俺に何の用があるんだ?
俺は首を傾げつつ、渋々書斎へと向かうのだった。
*
「おはようございます、お父さま。僕はもう出かける準備を済ませましたよ」
書斎へとやって来た俺は、まず適当にお父さまへ挨拶をする。
「…………そうか」
すると、お父さまは書類を書く手を止めて返事をしてくださった。実に感動的である。
「……はい」
「………………」
「………………」
それにしても無口だな。儀式に参加する俺への激励の言葉はないのか? まったく、やれやれだ!
「……で、話とは一体なんですか?」
俺は気を取り直して、お父さまに問いかける。
「………………エルヴァールにはプリシラも連れて行く」
ぼそりと答えるお父さま。
「えぇっ!?」
プリシラとは俺の妹の名だ。亡き母と同じく病弱な身に生まれてしまったため、今は静かな別荘で療養しているのである。
……改めて思うに、性格最悪な暴君であるアランから遠ざけるという意図もあったのかもしれない。
記憶によると、妹に対しても高圧的な接し方をしていたからな。あのまま一緒に過ごしていたらプリシラに数多くのトラウマが残ること間違いなしである。
しかし、なぜ今さら……。
「良いな」
「あの、僕とプリシラを会わせても良いのですか?」
「何一つとして問題はない」
「さ、さようで……」
よく分からないが、今の俺なら大丈夫だということだろうか。コミュニケーション能力が壊滅的なお父さまと対話する際は、頑張ってその発言の意図を正確に読み取らないといけないから困る。
本当に面倒くさいぞ! クールキャラぶるのも大概にしろ!
「……ということだ。隠れていないで出てきなさい、プリシラ」
俺が億劫な気分になっていると、お父さまは突然そんなことを言い始めた。
「え……?」
まさか、もうこの場にプリシラが潜んでいるというのか?
「い、一体どこに……!」
俺は慌てて周囲を見回す。
刹那。
「おーーーーーっ!」
背後から元気な叫び声がした。俺はとっさに振り返る。
「ふんっ!」
するとそこには、長い白髪の見かけだけは儚げな美少女であるプリシラが立っていた。
それにしても、今の奇声は一体何なんだ。
「ひ、久しぶり……」
「うおーーーーーーっ!」
プリシラは俺の挨拶を無視して突進してくる。
「うぐっ!」
「えいっ! えいっ! えいっ! おりゃーーーーっ!」
俺の腹部に頭から突っ込み、何度も正拳突きをしてくるプリシラ。
しかし、この程度の攻撃など通用しな……痛い!
「ごふっ!」
「くらえーーーっ!」
「あ、相変わらずだね……プリシラ……」
「………………とうっ!」
嫌な予感はしていたが、過去の記憶にあった通りのお転婆である。
……いや、もはやお転婆という域を超えて蛮族と化している。病弱だからといって大人しいとは限らないということだな。
「ぜぇっ、ぜぇっ、はぁっ、はぁっ……」
体力は全然ないみたいだが。
「ふーっ、ふーっ…………」
それからしばらくのあいだ息を切らしていたプリシラだったが、やがて顔を上げて言った。
「……おとうさま! この人はお兄さまではありません! なんか違うからニセモノです!」
「…………!?」
まさか、俺が前世の記憶を思い出したと見抜かれたのか? なかなか侮れない奴だな。……見抜いた理由は意味不明だが。
――それで、肝心のお父さまの反応は……。
「そうだな。お前と離れている間に、アランも成長したということだ。良い顔つきになった」
「ふ~ん、そっか~!」
嘘だろ……! まさかお父さまが俺のことをそんな風に思ってくれていただなんて……!
「ありがとうございます。そう言っていただけて嬉しいです」
俺は素直に感謝の言葉を述べた。
「理解しただろうプリシラ。今のアランを怖がる必要はない」
「……うん!」
お父さまの問いかけに対し、元気よく笑って返事をするプリシラ。
「気がすむまでたくさん殴ったから、今までお兄さまが殴ってきた分は許してあげる!」
……なるほど、そういうことか。どうやらさっきまでの行為はプリシラなりに歩み寄ろうとしてくれた結果らしい。
「プリシラ……今まで、ごめん」
「ううん。いつも私が先に殴りかかってたから、あやまらなくてもいいよ! ごめんね!」
「プリシラ……!」
まったく。こんなに健気な妹を怖がらせていただなんて、アランとかいう奴は許せないな! 死刑に値する!
――原作だと本当に死んだから洒落にならん!
「あとその代わり、これからはいっぱい遊んでね!」
「……うん。分かったよ」
でもよく考えたらいきなり殴ってくるのはおかしいだろ。
やはりプリシラは怖い。アランとの確かな血の繋がりを感じる。
笑いながら敵をいたぶるタイプ……暴力の化身だ!
「やった~! お兄さま大好きっ!」
そう言ってぎゅっと抱きついてくるプリシラ。ふわりと甘い香りがした。
「……ふひひっ」
「変な笑いかた~!」
うん。可愛いからいっか!
一応、怪我は治っている。年下のニナから「少しは加減してくださいっ!」と説教される先生達の姿は見ていて忍びなかったがな。
「さてと。出かける準備も済ませたことだし、早速馬車に――」
「失礼しますアラン様。……お父様がお呼びです。どうぞ書斎へ」
「……ふえぇ?」
気合を入れて屋敷を出発しようとした俺は、突然の呼び出しによって出鼻を挫かれる。
まったく、お父さまは一体俺に何の用があるんだ?
俺は首を傾げつつ、渋々書斎へと向かうのだった。
*
「おはようございます、お父さま。僕はもう出かける準備を済ませましたよ」
書斎へとやって来た俺は、まず適当にお父さまへ挨拶をする。
「…………そうか」
すると、お父さまは書類を書く手を止めて返事をしてくださった。実に感動的である。
「……はい」
「………………」
「………………」
それにしても無口だな。儀式に参加する俺への激励の言葉はないのか? まったく、やれやれだ!
「……で、話とは一体なんですか?」
俺は気を取り直して、お父さまに問いかける。
「………………エルヴァールにはプリシラも連れて行く」
ぼそりと答えるお父さま。
「えぇっ!?」
プリシラとは俺の妹の名だ。亡き母と同じく病弱な身に生まれてしまったため、今は静かな別荘で療養しているのである。
……改めて思うに、性格最悪な暴君であるアランから遠ざけるという意図もあったのかもしれない。
記憶によると、妹に対しても高圧的な接し方をしていたからな。あのまま一緒に過ごしていたらプリシラに数多くのトラウマが残ること間違いなしである。
しかし、なぜ今さら……。
「良いな」
「あの、僕とプリシラを会わせても良いのですか?」
「何一つとして問題はない」
「さ、さようで……」
よく分からないが、今の俺なら大丈夫だということだろうか。コミュニケーション能力が壊滅的なお父さまと対話する際は、頑張ってその発言の意図を正確に読み取らないといけないから困る。
本当に面倒くさいぞ! クールキャラぶるのも大概にしろ!
「……ということだ。隠れていないで出てきなさい、プリシラ」
俺が億劫な気分になっていると、お父さまは突然そんなことを言い始めた。
「え……?」
まさか、もうこの場にプリシラが潜んでいるというのか?
「い、一体どこに……!」
俺は慌てて周囲を見回す。
刹那。
「おーーーーーっ!」
背後から元気な叫び声がした。俺はとっさに振り返る。
「ふんっ!」
するとそこには、長い白髪の見かけだけは儚げな美少女であるプリシラが立っていた。
それにしても、今の奇声は一体何なんだ。
「ひ、久しぶり……」
「うおーーーーーーっ!」
プリシラは俺の挨拶を無視して突進してくる。
「うぐっ!」
「えいっ! えいっ! えいっ! おりゃーーーーっ!」
俺の腹部に頭から突っ込み、何度も正拳突きをしてくるプリシラ。
しかし、この程度の攻撃など通用しな……痛い!
「ごふっ!」
「くらえーーーっ!」
「あ、相変わらずだね……プリシラ……」
「………………とうっ!」
嫌な予感はしていたが、過去の記憶にあった通りのお転婆である。
……いや、もはやお転婆という域を超えて蛮族と化している。病弱だからといって大人しいとは限らないということだな。
「ぜぇっ、ぜぇっ、はぁっ、はぁっ……」
体力は全然ないみたいだが。
「ふーっ、ふーっ…………」
それからしばらくのあいだ息を切らしていたプリシラだったが、やがて顔を上げて言った。
「……おとうさま! この人はお兄さまではありません! なんか違うからニセモノです!」
「…………!?」
まさか、俺が前世の記憶を思い出したと見抜かれたのか? なかなか侮れない奴だな。……見抜いた理由は意味不明だが。
――それで、肝心のお父さまの反応は……。
「そうだな。お前と離れている間に、アランも成長したということだ。良い顔つきになった」
「ふ~ん、そっか~!」
嘘だろ……! まさかお父さまが俺のことをそんな風に思ってくれていただなんて……!
「ありがとうございます。そう言っていただけて嬉しいです」
俺は素直に感謝の言葉を述べた。
「理解しただろうプリシラ。今のアランを怖がる必要はない」
「……うん!」
お父さまの問いかけに対し、元気よく笑って返事をするプリシラ。
「気がすむまでたくさん殴ったから、今までお兄さまが殴ってきた分は許してあげる!」
……なるほど、そういうことか。どうやらさっきまでの行為はプリシラなりに歩み寄ろうとしてくれた結果らしい。
「プリシラ……今まで、ごめん」
「ううん。いつも私が先に殴りかかってたから、あやまらなくてもいいよ! ごめんね!」
「プリシラ……!」
まったく。こんなに健気な妹を怖がらせていただなんて、アランとかいう奴は許せないな! 死刑に値する!
――原作だと本当に死んだから洒落にならん!
「あとその代わり、これからはいっぱい遊んでね!」
「……うん。分かったよ」
でもよく考えたらいきなり殴ってくるのはおかしいだろ。
やはりプリシラは怖い。アランとの確かな血の繋がりを感じる。
笑いながら敵をいたぶるタイプ……暴力の化身だ!
「やった~! お兄さま大好きっ!」
そう言ってぎゅっと抱きついてくるプリシラ。ふわりと甘い香りがした。
「……ふひひっ」
「変な笑いかた~!」
うん。可愛いからいっか!
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