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第17話 VSドロシア①
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「こ、こうさんしますうううううっ!」
「え? 待ってよ!」
「ひいいいいいいっ! ごめんなさいいいいいいッ!」
ニ試合目、俺の対戦相手は試合を始める前に泣きながら逃げ出した。
「勝者、アラン・ディンロード!」
「えぇ……?」
審判にそう宣言され、消化不良のまま試合が終わる。
「やったーっ! おにーさまの勝ちだーっ!」
声援の少ない俺の試合場に、プリシラの声だけが響き渡った。
俺はまだ何もしていないのだぞ妹よ。本当にそれで喜んでいいのか。
「…………」
――それから、あっという間に三試合目が始まった。
「よろしく! 君は逃げたりしないでね!」
俺は対戦相手に向かって優しく声をかける。先程の戦いで怖がらせてはいけないと学んだからな。
「……ああ、逃げねぇよ。家族に別れは済ませてある」
「待ってコレただの試合だよ?」
予想外の返事をされて困惑する俺。
「お前にとってはそうなんだろうな化け物。……だが、生憎俺はただの人間なんだ。命までは取られなくても、二度と立ち上がれねえ体にされちまうかもしれねぇ」
「そ、そんなことしないよぉ……!」
何やら深刻な思い違いをしているようなので、俺は首をブンブンと横に振って否定した。
「でも、俺だって自分の家を背負ってここに立ってる! 泣きべそかいて逃げ出すわけにはいかねぇんだッ! だからお前も全力で来いっ!」
「…………」
どうやら彼は決意を固めてここに立っているらしい。まだ子供とはいえ、三試合目まで勝ち進むヤツにはそれなりの覚悟があるようだ。
化け物扱いされるのは心外だが、相手の覚悟を無碍に扱うのもよろしくないな。
「……分かった。魔力解放は怒られるから使えないけど、出せる限りの全力は出すよ」
「行くぞッ!」
双方が合意したとみなされ、審判が試合開始の合図をする。
「隙ありっ!」
「ゴフッ?!」
その瞬間、俺は一瞬で相手の懐へ踏み込み、木剣を打ち込んで場外へ弾き飛ばして勝利した。
「おにーさまかっこいーっ!」
「始まってすぐだぞ? 隙とかなかっただろ……」
「あの子には何が見えて居るんだ……? 恐ろしい……!」
プリシラは喜んでくれたが、他の観客からはより一層化け物扱いされるという悲しい結果で終わるのだった。
*
「準決勝で戦えるなんて嬉しいわ、アラン・ディンロードッ!」
「ドロシアちゃんも……無事に勝ち上がって来たみたいで嬉しいよ」
「黙りなさいッ!」
「………………はーい」
順調に勝ち進んだ結果、ついにドロシアと試合をすることになってしまった。
ちなみに、準決勝からは闘技場を区切らずに一試合ずつ行うらしい。四人が一斉に戦うと会場が消し飛びかねないので、賢明な判断だな。
「粉々に粉砕してあげるわッ! 覚悟しなさいッ!」
物凄い表情でこちらを睨みつけてくるドロシア。どうやらまだ怒っているようだ。
「お手柔らかに……」
俺は一歩だけ後ずさりながら言った。
今回は木剣を持ち込んでいないので構える必要はない。ドロシアとの試合は間違いなく魔法の撃ち合いになるので、両手は空いていた方がやりやすいと考えてのことである。
敢えて一方的な接近戦に持ち込むという作戦も考えたが、全方位を魔法で爆撃してくるドロシアに近づくのは難しそうだ。
従って、こちらも魔法で対抗することにした。割と何でも出来てしまうのがアランの強みなので、対戦相手に応じて臨機応変に戦い方を変えていきたいところである。
「じゃあさっさと始めましょう! ……審判の方、よろしくお願いしますわ!」
「僕の方も準備はできています」
ドロシアと俺が言うと、審判が「仕合開始!」と宣言した。
「爆撃ッ!」
ほぼ同時に、ドロシアが魔法による攻撃をしかけてくる。
「っ! 水盾《ウォーターシールド》!」
俺は咄嗟に水魔法で自分の身を守った。
直後に大きな爆発が起き、周囲に濃い煙が立ち込める。
おまけに、今ので魔力が会場全体に散らばってしまったみたいだし、ドロシアの立ち位置を探るのは難しそうだな。
「爆撃ッ! 爆撃ッ! 爆撃ッ!」
「おいおい、嘘だろ……!」
ひとまず相手の出方を探ろうと思っていたが、どうやらドロシアはこのまま爆破魔法を連続で撃ち続けて会場ごと俺を吹き飛ばすつもりらしい。
「泥盾! 氷壁ッ!」
やれやれ、作戦も何もあったもんじゃないな。完全に本人の火力だよりだ。
「爆撃ッ!」
「水盾!」
だからこそ強力なんだが……。
「な、なにも見えないよーっ! おにーさま負けないで―っ!」
どうしたものかと困っていると、背後からプリシラの声が聞こえてきた。
「ふん! いきなり攻撃されて冷や汗くらいはかいているかしら? あなたの間抜け面を見れないのが残念だわアラン!」
前方の少し離れた場所からは、勝ち誇ったドロシアの声。
このまま凌ぎ切って相手の魔力の枯渇を誘うのも手だが、正直あの威力を完全に防ぎきる自信はないな。一点特化型に弱いのが器用なアランの弱点だ。
「……あれ? 雨降ってきた……?」
「風邪を引いてしまうと大変ですよプリシラ様。一度お休みになられては……」
「で、でもおにーさまの試合がー!」
しかし、勝機は視えた。
俺の水盾やら氷壁やらを好き放題爆破してくれたおかげで、辺りは水浸しだ。
勝たせてもらうぞドロシア!
「え? 待ってよ!」
「ひいいいいいいっ! ごめんなさいいいいいいッ!」
ニ試合目、俺の対戦相手は試合を始める前に泣きながら逃げ出した。
「勝者、アラン・ディンロード!」
「えぇ……?」
審判にそう宣言され、消化不良のまま試合が終わる。
「やったーっ! おにーさまの勝ちだーっ!」
声援の少ない俺の試合場に、プリシラの声だけが響き渡った。
俺はまだ何もしていないのだぞ妹よ。本当にそれで喜んでいいのか。
「…………」
――それから、あっという間に三試合目が始まった。
「よろしく! 君は逃げたりしないでね!」
俺は対戦相手に向かって優しく声をかける。先程の戦いで怖がらせてはいけないと学んだからな。
「……ああ、逃げねぇよ。家族に別れは済ませてある」
「待ってコレただの試合だよ?」
予想外の返事をされて困惑する俺。
「お前にとってはそうなんだろうな化け物。……だが、生憎俺はただの人間なんだ。命までは取られなくても、二度と立ち上がれねえ体にされちまうかもしれねぇ」
「そ、そんなことしないよぉ……!」
何やら深刻な思い違いをしているようなので、俺は首をブンブンと横に振って否定した。
「でも、俺だって自分の家を背負ってここに立ってる! 泣きべそかいて逃げ出すわけにはいかねぇんだッ! だからお前も全力で来いっ!」
「…………」
どうやら彼は決意を固めてここに立っているらしい。まだ子供とはいえ、三試合目まで勝ち進むヤツにはそれなりの覚悟があるようだ。
化け物扱いされるのは心外だが、相手の覚悟を無碍に扱うのもよろしくないな。
「……分かった。魔力解放は怒られるから使えないけど、出せる限りの全力は出すよ」
「行くぞッ!」
双方が合意したとみなされ、審判が試合開始の合図をする。
「隙ありっ!」
「ゴフッ?!」
その瞬間、俺は一瞬で相手の懐へ踏み込み、木剣を打ち込んで場外へ弾き飛ばして勝利した。
「おにーさまかっこいーっ!」
「始まってすぐだぞ? 隙とかなかっただろ……」
「あの子には何が見えて居るんだ……? 恐ろしい……!」
プリシラは喜んでくれたが、他の観客からはより一層化け物扱いされるという悲しい結果で終わるのだった。
*
「準決勝で戦えるなんて嬉しいわ、アラン・ディンロードッ!」
「ドロシアちゃんも……無事に勝ち上がって来たみたいで嬉しいよ」
「黙りなさいッ!」
「………………はーい」
順調に勝ち進んだ結果、ついにドロシアと試合をすることになってしまった。
ちなみに、準決勝からは闘技場を区切らずに一試合ずつ行うらしい。四人が一斉に戦うと会場が消し飛びかねないので、賢明な判断だな。
「粉々に粉砕してあげるわッ! 覚悟しなさいッ!」
物凄い表情でこちらを睨みつけてくるドロシア。どうやらまだ怒っているようだ。
「お手柔らかに……」
俺は一歩だけ後ずさりながら言った。
今回は木剣を持ち込んでいないので構える必要はない。ドロシアとの試合は間違いなく魔法の撃ち合いになるので、両手は空いていた方がやりやすいと考えてのことである。
敢えて一方的な接近戦に持ち込むという作戦も考えたが、全方位を魔法で爆撃してくるドロシアに近づくのは難しそうだ。
従って、こちらも魔法で対抗することにした。割と何でも出来てしまうのがアランの強みなので、対戦相手に応じて臨機応変に戦い方を変えていきたいところである。
「じゃあさっさと始めましょう! ……審判の方、よろしくお願いしますわ!」
「僕の方も準備はできています」
ドロシアと俺が言うと、審判が「仕合開始!」と宣言した。
「爆撃ッ!」
ほぼ同時に、ドロシアが魔法による攻撃をしかけてくる。
「っ! 水盾《ウォーターシールド》!」
俺は咄嗟に水魔法で自分の身を守った。
直後に大きな爆発が起き、周囲に濃い煙が立ち込める。
おまけに、今ので魔力が会場全体に散らばってしまったみたいだし、ドロシアの立ち位置を探るのは難しそうだな。
「爆撃ッ! 爆撃ッ! 爆撃ッ!」
「おいおい、嘘だろ……!」
ひとまず相手の出方を探ろうと思っていたが、どうやらドロシアはこのまま爆破魔法を連続で撃ち続けて会場ごと俺を吹き飛ばすつもりらしい。
「泥盾! 氷壁ッ!」
やれやれ、作戦も何もあったもんじゃないな。完全に本人の火力だよりだ。
「爆撃ッ!」
「水盾!」
だからこそ強力なんだが……。
「な、なにも見えないよーっ! おにーさま負けないで―っ!」
どうしたものかと困っていると、背後からプリシラの声が聞こえてきた。
「ふん! いきなり攻撃されて冷や汗くらいはかいているかしら? あなたの間抜け面を見れないのが残念だわアラン!」
前方の少し離れた場所からは、勝ち誇ったドロシアの声。
このまま凌ぎ切って相手の魔力の枯渇を誘うのも手だが、正直あの威力を完全に防ぎきる自信はないな。一点特化型に弱いのが器用なアランの弱点だ。
「……あれ? 雨降ってきた……?」
「風邪を引いてしまうと大変ですよプリシラ様。一度お休みになられては……」
「で、でもおにーさまの試合がー!」
しかし、勝機は視えた。
俺の水盾やら氷壁やらを好き放題爆破してくれたおかげで、辺りは水浸しだ。
勝たせてもらうぞドロシア!
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