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第19話 盤外戦術
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「ふぅ……」
結果的にドロシアの心をへし折ってしまったことで決勝進出が決まり、何とも言い表せない気持ちで控室へと続く通路を歩く俺。
「あ……」
すると、向こうからギルバートが歩いてきた。次の準決勝では、こいつとレスターが戦うことになっている。レスターは大丈夫だろうか。
「……やはり決勝の相手は貴様か」
すれ違いざま、ギルバートは呟くように言った。
「おいおい。君はまだこれからレスターくんとの試合があるだろう? まずはそっちに集中しないとダメだよ?」
俺は即座に振り返って言う。
「そういう台詞はせめて決勝進出を決めてから言って欲しいな」
「――あんなひ弱な女、俺の敵ではない」
「ふぅん……?」
……女? 今こいつ、レスターのことを女だと言ったか? つまり未だにレスターは女の子だと思っているのか?
「ふーん……!」
「何をニヤニヤしているんだ。気色悪いぞ」
まあ、よく考えたら女装させられてるんだから勘違いするのも無理はないが。
「ねえねえ、レスターちゃんのことカワイイと思わない?」
「……ざっ、雑魚に興味はないっ! 貴様と一緒にするな! この軟弱者めっ!」
なるほど。満更でもなさそうな反応だな。まずいぞレスター。
「ふーーーーーん」
……だが正直言って、現時点でのレスターとギルバートの実力は拮抗しているように思える。雑魚と言い捨てられるような相手ではないんだがな。
もちろん、自信があって勝負に強そうなギルバートの方が試合において有利であることは否定しないが。
……あと、それに加えて性格も悪いからな。戦いとは相手が嫌がる手を押し付け合うものであるため、優しくて素直なレスターがギルバートに振り回される試合展開になることも想像に難くない。
ごく一部の例外として、俺のようにとても心優しくて勝負にも強い人間もいるが……レスターはどちらかといえば争いを好まないタイプだ。
ギルバートのような奴が本気で勝ちを取りに来た時、その気迫に押されて無意識に勝利を譲ってしまうことだって考えられる。
「うーん……」
「おい、さっきから何を唸っている?」
確かに、考えれば考えるほどレスターにとっては厳しい試合になりそうだな。個人的にはとことん不憫なレスターを応援してやりたいんだが。
「……まあ、決勝で戦うことになったらよろしく」
「魔力解放も使え。俺相手に手を抜いたら許さないぞ」
「えっと……それは君の強さ次第かな」
「――フン! だったら問題はない。すぐに使わせてやる」
「あはは……すごい自信だね」
もう使う訳ないだろ! メリア先生は怖いんだぞ! お前はメリア先生のことを何も知らないからそんなことが言えるんだ! いい加減にしろ!
「……じゃあ、僕はもう行くね。さっきの試合で疲れてるんだ……精神的に」
「ああ――あの生意気な女の無様な姿はなかなかの見ものだったぞ!」
そう言って不敵な笑みを浮かべるギルバート。カッコつけてはいるが、その言葉が意味するところは即ち……。
「女の子の粗相が好きなんだ……それはちょっと引くかも……」
「は? 待て、ちがっ、そういう意味じゃ――」
「でも人の好みは色々あるよね。……バイバイ、ギルバートくん」
「おいっ! 誤解だ話を聞け――」
「特に深い意味はないけど、僕の妹には近づかないでくれ」
レスターを応援している俺は、盤外戦術としてギルバートに軽い精神攻撃を仕掛けてから別れた。
「そもそもお前がやったんだろうがああああああッ!」
通路に響き渡るギルバートの声。
はて? 何のことを言っているのやら?
「――そうだ、ついでにレスターくんにも入れ知恵をしておこう」
戦いはもう始まっているのである!
*
そんなこんなで、とうとうレスターとギルバートの試合の時間になった。
「よ、よろしくお願いします……!」
「…………ああ。俺はいつでも構わない」
レスターには簡単な魔力制御のコツを教えてある。これで少しはギルバート相手に勝率を上げられると良いんだが……まあ、付け焼き刃ではそれほどの効果は見込めないだろう。
「あ、あと、それとっ……試合の前に……勘違いしているみたいなので言っておきますが……」
「何だ?」
「ボ、ボクは男の子ですっ!」
「――――は?」
それから、ついでにギルバートの勘違いについても話しておいた。
「意味が分からない。何の冗談だ?」
「だ、だから冗談じゃなくて、ボクは男の子なんですっ! 家の風習でこんな格好をさせられているだけで……」
「………………」
「ふー……。……えっと、それじゃあ始めましょうか。男の子同士、手加減はなしですっ!」
こうすることで相手の動揺を誘い、レスターの勝率をさらに引き上げようというのが俺の高度な作戦である。
自分の頭脳が恐ろしい。
「――仕合開始ッ!」
「はああああああああああっ!?」
頑張れレスター、負けるなレスター!
結果的にドロシアの心をへし折ってしまったことで決勝進出が決まり、何とも言い表せない気持ちで控室へと続く通路を歩く俺。
「あ……」
すると、向こうからギルバートが歩いてきた。次の準決勝では、こいつとレスターが戦うことになっている。レスターは大丈夫だろうか。
「……やはり決勝の相手は貴様か」
すれ違いざま、ギルバートは呟くように言った。
「おいおい。君はまだこれからレスターくんとの試合があるだろう? まずはそっちに集中しないとダメだよ?」
俺は即座に振り返って言う。
「そういう台詞はせめて決勝進出を決めてから言って欲しいな」
「――あんなひ弱な女、俺の敵ではない」
「ふぅん……?」
……女? 今こいつ、レスターのことを女だと言ったか? つまり未だにレスターは女の子だと思っているのか?
「ふーん……!」
「何をニヤニヤしているんだ。気色悪いぞ」
まあ、よく考えたら女装させられてるんだから勘違いするのも無理はないが。
「ねえねえ、レスターちゃんのことカワイイと思わない?」
「……ざっ、雑魚に興味はないっ! 貴様と一緒にするな! この軟弱者めっ!」
なるほど。満更でもなさそうな反応だな。まずいぞレスター。
「ふーーーーーん」
……だが正直言って、現時点でのレスターとギルバートの実力は拮抗しているように思える。雑魚と言い捨てられるような相手ではないんだがな。
もちろん、自信があって勝負に強そうなギルバートの方が試合において有利であることは否定しないが。
……あと、それに加えて性格も悪いからな。戦いとは相手が嫌がる手を押し付け合うものであるため、優しくて素直なレスターがギルバートに振り回される試合展開になることも想像に難くない。
ごく一部の例外として、俺のようにとても心優しくて勝負にも強い人間もいるが……レスターはどちらかといえば争いを好まないタイプだ。
ギルバートのような奴が本気で勝ちを取りに来た時、その気迫に押されて無意識に勝利を譲ってしまうことだって考えられる。
「うーん……」
「おい、さっきから何を唸っている?」
確かに、考えれば考えるほどレスターにとっては厳しい試合になりそうだな。個人的にはとことん不憫なレスターを応援してやりたいんだが。
「……まあ、決勝で戦うことになったらよろしく」
「魔力解放も使え。俺相手に手を抜いたら許さないぞ」
「えっと……それは君の強さ次第かな」
「――フン! だったら問題はない。すぐに使わせてやる」
「あはは……すごい自信だね」
もう使う訳ないだろ! メリア先生は怖いんだぞ! お前はメリア先生のことを何も知らないからそんなことが言えるんだ! いい加減にしろ!
「……じゃあ、僕はもう行くね。さっきの試合で疲れてるんだ……精神的に」
「ああ――あの生意気な女の無様な姿はなかなかの見ものだったぞ!」
そう言って不敵な笑みを浮かべるギルバート。カッコつけてはいるが、その言葉が意味するところは即ち……。
「女の子の粗相が好きなんだ……それはちょっと引くかも……」
「は? 待て、ちがっ、そういう意味じゃ――」
「でも人の好みは色々あるよね。……バイバイ、ギルバートくん」
「おいっ! 誤解だ話を聞け――」
「特に深い意味はないけど、僕の妹には近づかないでくれ」
レスターを応援している俺は、盤外戦術としてギルバートに軽い精神攻撃を仕掛けてから別れた。
「そもそもお前がやったんだろうがああああああッ!」
通路に響き渡るギルバートの声。
はて? 何のことを言っているのやら?
「――そうだ、ついでにレスターくんにも入れ知恵をしておこう」
戦いはもう始まっているのである!
*
そんなこんなで、とうとうレスターとギルバートの試合の時間になった。
「よ、よろしくお願いします……!」
「…………ああ。俺はいつでも構わない」
レスターには簡単な魔力制御のコツを教えてある。これで少しはギルバート相手に勝率を上げられると良いんだが……まあ、付け焼き刃ではそれほどの効果は見込めないだろう。
「あ、あと、それとっ……試合の前に……勘違いしているみたいなので言っておきますが……」
「何だ?」
「ボ、ボクは男の子ですっ!」
「――――は?」
それから、ついでにギルバートの勘違いについても話しておいた。
「意味が分からない。何の冗談だ?」
「だ、だから冗談じゃなくて、ボクは男の子なんですっ! 家の風習でこんな格好をさせられているだけで……」
「………………」
「ふー……。……えっと、それじゃあ始めましょうか。男の子同士、手加減はなしですっ!」
こうすることで相手の動揺を誘い、レスターの勝率をさらに引き上げようというのが俺の高度な作戦である。
自分の頭脳が恐ろしい。
「――仕合開始ッ!」
「はああああああああああっ!?」
頑張れレスター、負けるなレスター!
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